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5章
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しおりを挟む野崎は険しい顔をして事務机にあるシフト表を眺める。
ローカルスーパーよだ・明王寺店は全部で8部門ある。惣菜や農産など各部門ごとにリーダーがいて、シフトの管理をして、最終チェックに野崎が行う。
毎月20日までに休みの希望を出せばだいたい通る。
他の部門は2、3人ぐらいだが、農産だけだ。こんなに多いのは。
今日も主戦力である高校生スタッフが「もう無理」と疲労の顔を見せて書類を出してきた。
特に多いのが農産スタッフ。
相川和輝、太刀川裕美、福島乃々香、塩浦亜純、春日鈴、細田あやね……6人退職または異動したいの申し出があった。
口をそろえて言うのは「依田さんのわがままに疲れた。指示しても反発されるだけ。男性スタッフといたがる」「彼女の独演会に全肯定しないとだめで、嫌がらせをされる」「社長にチクると脅される」と。
まだ彼女は自分の立場を理解していないようだ。
いやいや来ているのは分かるし、覚える気がないのか、メモを全然取らない。
男性スタッフがいる日は"非力な自分"アピールをして、力仕事や手間のかかる業務を一緒にやってぇとねだる。
女性スタッフのみだと押しつけてのんきに菓子パンを食べている。家で食べてこなかったからと。
いつもギリギリの時間でやってくるので、野崎や他のスタッフが注意している。
『可愛さキープのために1時間以上かかるんだから仕方ないでしょ。女性のみんななら分かるでしょ』
『これでも急いでた方なんですぅ』
急いでたという割には、髪はゆるふわパーマ、派手な化粧と服装。歩きにくいヒールでやってくる。
今から仕事しますではなく、遊びに行きますな格好だ。通勤スタイルとはいえ、露出が激しいので周りはかなり気を遣っている。
朝礼も人の話を聞かずにのんきにお気に入りの男性の方へ視線を向けている。ひどい時はスマホを触っている。
それもメモ帳代わりなんですと言いながら私用でSNSの投稿をしている。
店長である野崎はじめ、同僚達である相川や春日やおばちゃん三人衆も、厳しく言っても反抗的なので、最近は諦めているところがある。
結花の勤務態度は他の部門にも当然広まっており、休憩時は距離を取られている。
彼らも結花のマウントのターゲットとなっているからだ。
必要以外話しかけないスタンスを取っているものの、結花は男性スタッフに絡むので、それを止めるのが女性陣だ。
とはいえ、結花の可愛さに負けて取り巻きが出来ている。
今まで明王寺店はハキハキ、テキパキと機敏な動きと、爽やかな雰囲気でお客から人気あったが、最近は結花が搬入口でスタッフともめているところや、店内でトイレ休憩と称して、他部門の男性スタッフにちょっかいかけているところを、お客様に度々見られている。それをお客様の声として書かれているので、改善しなければならない。
「さて、どっすかなー。人事部長召喚かなー」
野崎は人事部長である依田陽貴に電話した。
シフトの相談と称して陽貴に来てもらいたいとお願いしたら、すぐに行くと返事が来た。
ほっと安堵を笑みを浮かべて陽貴が来るのを待つ。
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