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終章
28
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「こんなしょぼいのより、このタイプが欲しいの」
周子はつたないながらも、スマホを操作して、欲しいタイプのパジャマの商品を見せる。
都会にあるパジャマ専門店でしか売ってないもので、シルク生地のピンク色のパジャマだ。
「あれー、かわいーじゃん! 6万するじゃん? りょうにい買ってあげて。安いっしょ?」
結花の安いっしょの言葉に「お前何言ってんだ?」と、驚嘆の声を上げる。
そうだ、こいつはこの母親に甘やかされて、働いても、すぐクビになるような女だ。
楽して稼ごうと他所の男性とパパ活するような人間だ。
金銭感覚がおかしくなってるんだ。
諸悪の根源が平気で高額なパジャマを欲しがる人間だから。
そもそも買ってくれるだけでましだろ。
他所の利用者の家族なんて、身の回りのもの替えを一切買ってこないとこもあるというのに。
ある意味親孝行な息子だと思うけど?
目の前で今着ているのが気にくわねえなんて遠回しに言われたら、買い足すのが馬鹿馬鹿しくなる。
怒りを静めようと深呼吸して「そんないうのなら、結花に買って貰えば?」と尋ねる。
「えー、ゆいちゃん、お金ないんだもん。ねぇ、お母さん、お金ちょうだいよ! ゆいちゃん、借金払えって言われちゃった。だからさ、お母さん代わりに支払ってよ?」
お得意の上目使いで結花は周子におねだりする。
「まぁ? かわいそーに。そういえば、いつもより見窄らしいねー。どうしたの?」
結花はいつもの派手で露出の激しい服ではなく、ねずみ色のスエットで、靴もスニーカーだった。
鞄もブランド物ではなく、地味なトートバックだった。
結花の衣類や宝飾品は、田先家への借金のかたとして、良輔によって問答無用で売られた。これは実家にあったものも含まれる。
罰として売ったのは、かつて結花の元夫だった悠真がやられたことをそのまましているのである。
周子のその穏やかな口調は結花の心をえぐるのに十分な威力だった。
「んっぐっ、り、りょうにいが……」
大声で泣き出しそうな勢いな結花に対して、良輔が冷めた口調で「こいつ、人様のもの転売疑惑あり、再婚相手の家の家族のお金を着服していた」と教える。
「まぁ? そんなことしてたの? あー、それは返さなきゃ。いくら?」
「田先俊美さんと登美子さんがそれぞれ100万、田先周平さんが300万、葵依さんと光河くんでそれぞれ、15万だから、全部で530万。プラス、転売の件で警察や運営に通報されてるから、場合によっては警察のお世話になるかもしれん」
良輔の口から淡々と告げられる事実に、周子は目を丸くする。
「ゆいちゃんお金ないんだ。だから30万ちょーだいい!」
必殺泣き落としで周子に訴える。
ちらっとと上目使いしながら。
「そーねー。なんとかならないかしら? さすがにゆいちゃんを警察なんて……一体誰がそんなの言ってきたのかしら?」
良輔はこの親子の似たものぶりに軽蔑の視線を向ける。
「ま、まさか、代わりに支払うってしないだろうな? それはやめろ。こいつのためにならない。通報はおそらく見つけた人間だろ。証拠もSNSにあがっているし、こいつのアカウントは停止になっている」
良輔としては、田先家のお金の使い込み含めて、転売の疑惑も自分で償ってほしいと思っている。
何でもかんでも他人に丸投げしておいしいとこ取りして生きていく。楽して利益を得たがる。
それは今まで見た目や家の名前で通用していた部分や、面倒ごとになるのを避けたいからだ。
全て解決したかのように見せかけて、裏では沢山の人が泣き寝入りしている。理不尽な扱いをされている。
「呉松さんとこの結花ちゃんと周子さんは関わるとトラブルになる」
起きたら起きたで、たとえ結花に悪いところがあっても、周子の圧力と脅しで、解決したことになる。自分たちが不利になる。
だから表面上の付き合いしかしない。必要最低限しか関わらない。
悠真との離婚やマッチングアプリで出会った男性を騙してた件も、一応自力でやったということになっているが、最初だけ。実際はパパ活やってた。結局田先家が代わりに支払って終了だった。
結花は根本的に自力で自分の困難に立ち向かっていなかった。
本気で自分の悪行に向き合っていなかった。
田先家が借金返してくれてラッキーぐらいしか思ってなかった。
真っ白になったと思って、田先家でやりたい放題していた。
かつての悠真との生活のように。
良輔としては、今度こそ本気で困難に立ち向かって欲しいと思っている。
それが後ろ指さされようが、批判されようが、因果応報の1つに過ぎない。
ある意味良輔にとって今結花が実家にいることは、温情である。
周子はつたないながらも、スマホを操作して、欲しいタイプのパジャマの商品を見せる。
都会にあるパジャマ専門店でしか売ってないもので、シルク生地のピンク色のパジャマだ。
「あれー、かわいーじゃん! 6万するじゃん? りょうにい買ってあげて。安いっしょ?」
結花の安いっしょの言葉に「お前何言ってんだ?」と、驚嘆の声を上げる。
そうだ、こいつはこの母親に甘やかされて、働いても、すぐクビになるような女だ。
楽して稼ごうと他所の男性とパパ活するような人間だ。
金銭感覚がおかしくなってるんだ。
諸悪の根源が平気で高額なパジャマを欲しがる人間だから。
そもそも買ってくれるだけでましだろ。
他所の利用者の家族なんて、身の回りのもの替えを一切買ってこないとこもあるというのに。
ある意味親孝行な息子だと思うけど?
目の前で今着ているのが気にくわねえなんて遠回しに言われたら、買い足すのが馬鹿馬鹿しくなる。
怒りを静めようと深呼吸して「そんないうのなら、結花に買って貰えば?」と尋ねる。
「えー、ゆいちゃん、お金ないんだもん。ねぇ、お母さん、お金ちょうだいよ! ゆいちゃん、借金払えって言われちゃった。だからさ、お母さん代わりに支払ってよ?」
お得意の上目使いで結花は周子におねだりする。
「まぁ? かわいそーに。そういえば、いつもより見窄らしいねー。どうしたの?」
結花はいつもの派手で露出の激しい服ではなく、ねずみ色のスエットで、靴もスニーカーだった。
鞄もブランド物ではなく、地味なトートバックだった。
結花の衣類や宝飾品は、田先家への借金のかたとして、良輔によって問答無用で売られた。これは実家にあったものも含まれる。
罰として売ったのは、かつて結花の元夫だった悠真がやられたことをそのまましているのである。
周子のその穏やかな口調は結花の心をえぐるのに十分な威力だった。
「んっぐっ、り、りょうにいが……」
大声で泣き出しそうな勢いな結花に対して、良輔が冷めた口調で「こいつ、人様のもの転売疑惑あり、再婚相手の家の家族のお金を着服していた」と教える。
「まぁ? そんなことしてたの? あー、それは返さなきゃ。いくら?」
「田先俊美さんと登美子さんがそれぞれ100万、田先周平さんが300万、葵依さんと光河くんでそれぞれ、15万だから、全部で530万。プラス、転売の件で警察や運営に通報されてるから、場合によっては警察のお世話になるかもしれん」
良輔の口から淡々と告げられる事実に、周子は目を丸くする。
「ゆいちゃんお金ないんだ。だから30万ちょーだいい!」
必殺泣き落としで周子に訴える。
ちらっとと上目使いしながら。
「そーねー。なんとかならないかしら? さすがにゆいちゃんを警察なんて……一体誰がそんなの言ってきたのかしら?」
良輔はこの親子の似たものぶりに軽蔑の視線を向ける。
「ま、まさか、代わりに支払うってしないだろうな? それはやめろ。こいつのためにならない。通報はおそらく見つけた人間だろ。証拠もSNSにあがっているし、こいつのアカウントは停止になっている」
良輔としては、田先家のお金の使い込み含めて、転売の疑惑も自分で償ってほしいと思っている。
何でもかんでも他人に丸投げしておいしいとこ取りして生きていく。楽して利益を得たがる。
それは今まで見た目や家の名前で通用していた部分や、面倒ごとになるのを避けたいからだ。
全て解決したかのように見せかけて、裏では沢山の人が泣き寝入りしている。理不尽な扱いをされている。
「呉松さんとこの結花ちゃんと周子さんは関わるとトラブルになる」
起きたら起きたで、たとえ結花に悪いところがあっても、周子の圧力と脅しで、解決したことになる。自分たちが不利になる。
だから表面上の付き合いしかしない。必要最低限しか関わらない。
悠真との離婚やマッチングアプリで出会った男性を騙してた件も、一応自力でやったということになっているが、最初だけ。実際はパパ活やってた。結局田先家が代わりに支払って終了だった。
結花は根本的に自力で自分の困難に立ち向かっていなかった。
本気で自分の悪行に向き合っていなかった。
田先家が借金返してくれてラッキーぐらいしか思ってなかった。
真っ白になったと思って、田先家でやりたい放題していた。
かつての悠真との生活のように。
良輔としては、今度こそ本気で困難に立ち向かって欲しいと思っている。
それが後ろ指さされようが、批判されようが、因果応報の1つに過ぎない。
ある意味良輔にとって今結花が実家にいることは、温情である。
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