ボクはうさぎのぬいぐるみ

白井しのの

文字の大きさ
29 / 40
ルートF(フェアリー)

二十三話 復讐開始

しおりを挟む
「謝れッ!! かれんに謝れッ!!」

 僕は力の限り拳を振るう。
 だが僕の大振りの拳はただ空を切るのみ。

「このクソガキ!」
「ごっほぁっ!!」

 僕の鳩尾に蹴りが入る。
 体に力が入らない。
 その場に蹲って僕は嘔吐した。

「あらあらあら汚いわねぇ……コピーの友達も失敗作ってとこかしら」
「親とかもう知ったことか……テメェぶっ殺す!!」

 かれんが培養器を破壊して中から出てきた。

「が、れ゛ん……動いちゃ……だめだ」
「んなこた知らねえよ!! このクソアマをぶっ殺すんだよ!! こんなやつもう母親でも何でもねえ!! 死に晒せええぇ!!」

 裸で血塗れという格好で母親に殴りかかるかれんは見ていて心が痛くなる。

「あんたも子供とは思ってないわよ!」
「気が合うじゃねぇかあ!!!」

 かれんは母親の顔面を殴り、ふっ飛ばした。

「いっだ……! クソガキがぁ……!!」

 かれんの母親は両方の鼻の穴から鼻血を垂らしながら鉄の筒をかれんへと向ける。

「やめろおおおっ!!」

 僕は力を振り絞ってかれんの前に立ち塞がろうとする。
 だが、間に合わなかった。

 パァン

 大きな音は一つの音源を消した。

 ドサッと言う音と共にかれんは仰向けに倒れた。
 かれんの額には穴が空いていた。

「かれん! かれん、かれん……?」

 僕はかれんの体を抱える。

 嫌だ。こんな事。
 こんな事ってないよ。

 かれんは目を見開いたまま何も言わない。
 手も足も動かさない。

「なんて、無力なんだ……僕は何も守れない……アニメや漫画の主人公みたいには行かないよ……! 現実は……どこまでも、残酷だっ……!」
「はっ、当たり前のことを。幸せな世界なんてあるわけないじゃない。あんたも夢から覚める事ができてよかったじゃない。おめでとう、クソガキからクソ大人に昇格よ」
「ああ、そうかよ。クソだろうが大人になったんだから、責任は自分で取らなきゃだよね」
「あ……ら?」

 僕の中に燃えたぎる一つの炎。
 それは……果てしない怒り。

「かれんが死んだのも僕のせい。だからせめてこいつは消してあげないと」
「あらあらあらあら? 随分と調子に乗ってくれるじゃない。出来ると思ってるのかしら?」
「遅い。死ねクソババア」
「は?」

 僕の体は真っ黒に染まり、黒い触手が伸び、かれんの母親の胸を貫く。

「っがあっっ……!」
「爆ぜろ」

 バン

 黒い触手が膨張し、かれんの母親は破裂した。
 そこら中に血や内蔵、糞尿に至るまでが飛び散る。

「汚いな。クソババアというだけはある」

 僕はかれんに僕の制服を着せると、かれんを抱きかかえ、下着姿でその場を後にした。


「嘘……かれんちゃん! うあああああ
ああああああああああーーん!!」

 かれんの亡骸を見たしずくは酷く泣き叫んだ。
 その姿を見て、僕は本当にかれんが死んだのだと実感する。

「ごめんねしずく。僕を信じてなんて言っておいて……」
「わけわかんないよ……仲直りもしてないのに……! こんな別れ方……酷いよ!! どうしてかれんちゃんを助けてあげなかったの!?」

「勿論助けようとしたよ!! でも間に合わなかったんだ……」
「嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき!! 代わりにつきみちゃんが死ねばよかったのに!!」

「っ……!! 勝手な事をっ……だったら自分で追いかければよかっただろ!! 僕なんかに頼らず、自分の力で!!」
「うるさいうるさいうるさい!! 今すぐ私の前から消えてよ!!」
「っ……ああ消えてやるよ!!」

 僕は下着姿のままで街を駆け抜けた。

 僕としずくの絆ってその程度だったのか。
 かれんがいなきゃ全てが終わり。
 かれんはもう、いない。

「チクショオオオオオオオォーーーーッ!!!」

 夜の街に僕の声が響いた。

「クソ……世界を終わらせてやる。僕が必ず!」

 僕の誓い。
 そしてその誓いに答えるように、彼は声をかけてくる。

「ククク……よいぞその覚悟。我が力を貸してやろう」

 僕の体から黒い触手が飛び出し、形を成す。

「貴様にはこの世界を脱出し、我と共に世界を滅ぼしてもらおう。我こそはアナザードラゴン。亜空間を司る龍である」
「そうか……あれは僕の力じゃなくて……」
「そうだ。我の力だ。自分が強くなったとでも勘違いしたか?」
「少しだけ……そうだと嬉しかったけど、人生そんなに甘くないよな……物事には必ず理由があるわけで。怒りだけで強くなったりはしないよね。よし……僕はお前と共に世界を滅ぼそう」

 そして僕の復讐が始まった。

 世界の真理を突き止めた。
 この世界が仮想世界である事。
 僕がコピーされた存在である事。
 外の世界では本物のボクがのうのうと生きている事。
 それらの事実から僕の恨みは「ボク」へと向けられた。

 仮想世界から抜け出す方法を見つけ、僕は脱出し、ボクの後を追うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

処理中です...