雨男と晴女

いちごみるく

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晴男と雪女

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僕は酢漿。これでカタバミと読む。勿論花のカタバミである。カタバミは海外では「ハレルヤ」と呼ばれたりする。まあ晴男の僕には相応しいのだと思う。姉も晴女で、向日葵というそれらしい名前だ。
僕は今、姉の教室に向かっている。姉が朝、家に忘れたお弁当を届けに行くのだ。
ちょうどその時僕を一人の女の子が抜いて行った。こげ茶の髪を肩で切りそろえていて、肌の白い綺麗な女の子。すれ違った時少しだけ周りの空気が涼しくなった。
多分僕は見とれていた。
窓から見える空が晴れていく。
あの子は姉のクラスに入っていった。姉のクラスメイトなのだろうか。
そう考え、姉の教室に入るとあの子は窓側の席にポツンと座って本を読んでいた。
流石雨男と晴女のクラス。窓の外は曇っていた。
ひとまず姉の席に行くと、幼馴染の紫陽が姉に絡んでいて、僕に気が付くと手を振った。
姉に弁当袋を渡す途中もついあの子に目が向いてしまう。
まあ、姉も紫陽もそれに気が付かない訳がない。
姉は「どうしたの?」、馬鹿な幼馴染は「お。一目惚れか。」とそれぞれらしい言葉をかける。
一目惚れ……そうなのだろうか?誰かを好きになったこともないので分からない。
流石に鈍感な姉も気が付いたようで「……あの子椿というのよ。」と紹介する。
その時、読んでいた本が面白かったのだろうか、あの子がクスッと笑った。ひんやりとした空気がこちらにも伝わってくる。
一目惚れの初恋。今は勇気が無い自分だけどいつかあの子と話をしてみたい。
窓から見える空はいつの間にか快晴だった。
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