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第二章
十二話
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花火の最後には火や水、光の魔法を終結させて、一際大きなナツゥーレの国の紋章を空に描き、フィナーレを迎えた。盛大な拍手の中、ベルたちは手を振りながら王城の中へと戻っていく。
王城の中ではエドアルドを筆頭に大きな拍手をして出迎えてくれた。
「ベル様、このような素敵な演出……とても感激致しました!」
「国王であるエド殿に気に入っていただけて、よかったです。ラシード殿も……その様子では聞く間でもないようですね」
エドアルドの隣にいるラシードにも感想を尋ねようとしたが、その表情を見て止めてしまった。今まで見たことのない輝いた表情をしているのだ。聞く方が無粋というものだろう。
ラシードは数歩歩いてベルに近づくと、その頭をゆっくりと下げた。
「ベル様、あの時は本当に申し訳ございませんでした」
感動をしたからこその、この言葉なのだろう。
初めて会ったときのラシードを思い出し、苦笑する。
「もう気にしていないので大丈夫です。それよりも今後は互いに力を合わせて、国を盛り上げていきましょう」
「はい」
下げていた頭をゆっくりと上げ、ベルと視線を合わせたラシードは、初めて会った頃よりもずっといい顔をしていた。
「ベル様、この後のご予定などは?」
ラシードとの会話が終わったのを見計らい、エドアルドが声をかけてきた。
「特には決めてないです。ただ、ここに来るまでの道のりで気になったお店が幾つかあったので、せっかくだから皆で回れたら回りたいなあとは思っていたのですが……」
そこで言葉を区切り、後ろに目を向ける。
先程までベルたちがショーをしていた場所だ。ベルたちのショーが終わったにも関わらず、その熱は未だに残り、興奮が冷めるどころかさらに盛り上がっているように見えた。色んな人の声が入り混じり、何を発しているのか正確に聞き取ることはできない。それでも誰もが目を輝かせているので、どんな言葉を口にしているのかくらいは想像することができる。
そんな中、平然とベルたちが街を歩けば、必然と人は集まってくる。人が集まれば歩きにくくなるし、ベルたちを一目見ようとした人たちの中に怪我人が出てくるかもしれない。そこまで想像できるのに、無理をしてでも王都を歩き回ろうとは思えなかった。
だからこのまま住んでいる街に一度戻ろうと思っていることをエドアルドに伝えようと口を開けかけたとき、エドアルドから一つの提案をされた。
「ベル様、私は国民の皆にこの建国祭を楽しんでもらいたいのです。そしてベル様、貴方様にもです。ベル様は我がナツゥーレ国の輝人なのですから」
「でも……」
「ですのでベル様方が建国祭を楽しめるよう、僭越ながら護衛騎士を用意させて頂きました。周囲を固められるのは煩わしいかもしれませんが、彼らはベル様方が安心して回れるよう、この日のために作戦を練り、訓練を積んでおります。どうか彼らが傍にいることをお許し頂けないでしょうか?」
エドアルドが二度手を叩くと、十五人の騎士がベルたちの前に現れた。
十五人のうち、リーダー格である騎士の一人が、他の騎士たちより一歩前へ出て、ベルたちの前で跪く。他十四人の騎士もその場で跪いた。
他の騎士よりも一歩前で跪いた騎士の飾緒は、他の騎士たちとは全く異なる立派な飾緒だった。それに、醸し出す雰囲気も一般の騎士ではない気がする。
「本日護衛騎士を務めさせていただく、ノーバン・ディウドと申します。微力ではございますが、精一杯務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします」
「ノーバンはナツゥーレ国騎士団団長を務めております。安心して建国祭をお楽しみください」
(騎士団団長!? それってこの国で一番強い人ってことだよね? そんな人が護衛って大丈夫なの……?)
エドアルドの計らいは正直言って嬉しい。
しかし国の一大イベントにそんな人を護衛にしてしまって大丈夫なのだろうか。そう頭を悩ませるが、視界にエリオットとラヴィックが映り込んで、ああそうかと自己完結してしまった。すっかり忘れていたが、エリオットとラヴィックは他国の輝人だ。ベルにとって二人が気安い友人のような相手でも、それはナツゥーレの国王であるエドアルドからしてみれば違う。自分を守れるほどに二人が強くとも、他国の要人。そこらの一般の騎士を護衛としてつけるわけにはいかないのが現実だ。
「ありがとうございます。あ、でも皆が行くならってことになるけど……」
まだ誰の意見も聞いていない。行くにしても全員の意見を聞いてからだ。
「もちろん行くに決まってるだろ? 俺、祭り好きだし」
「僕も! こうやって大勢で集まることも中々ないからね。あ、でもラヴィック。あんまりはめをはずし過ぎちゃだめだよ?」
「分かってるって」
一番に賛成してくれたのはラヴィックとトトーだ。声音を聞く限り、ベルよりも楽しみにしているようだ。
「せっかくの建国祭だしな。お言葉に甘えるとしよう」
「そうね。ベルとこうして回れることも中々ないもの」
次いで同意を示してくれたのはエリオットとコーディリアだった。ラヴィックたちのようにはしゃいでこそいないものの、楽しみにはしていたらしい。
「お嬢が行きたがってのは見てればわかるよ」
「そうそう。だから護衛云々って話が出なくても誘うつもりだったんだ」
いつの間にかベルの左右に陣取っていたアーテルとアルブスは、元よりそのつもりだったようだ。
「だからね、ベル。遠慮などせず楽しめばいい」
真後ろにいるロセウスにもそう言われ、最初からお見通しだったことを知る。なんだか恥ずかしく思いつつも、皆で回れることに嬉しさを隠しきれず頬が緩む。
「……では短い間ですが、よろしくお願いします」
「お任せください」
王城の中ではエドアルドを筆頭に大きな拍手をして出迎えてくれた。
「ベル様、このような素敵な演出……とても感激致しました!」
「国王であるエド殿に気に入っていただけて、よかったです。ラシード殿も……その様子では聞く間でもないようですね」
エドアルドの隣にいるラシードにも感想を尋ねようとしたが、その表情を見て止めてしまった。今まで見たことのない輝いた表情をしているのだ。聞く方が無粋というものだろう。
ラシードは数歩歩いてベルに近づくと、その頭をゆっくりと下げた。
「ベル様、あの時は本当に申し訳ございませんでした」
感動をしたからこその、この言葉なのだろう。
初めて会ったときのラシードを思い出し、苦笑する。
「もう気にしていないので大丈夫です。それよりも今後は互いに力を合わせて、国を盛り上げていきましょう」
「はい」
下げていた頭をゆっくりと上げ、ベルと視線を合わせたラシードは、初めて会った頃よりもずっといい顔をしていた。
「ベル様、この後のご予定などは?」
ラシードとの会話が終わったのを見計らい、エドアルドが声をかけてきた。
「特には決めてないです。ただ、ここに来るまでの道のりで気になったお店が幾つかあったので、せっかくだから皆で回れたら回りたいなあとは思っていたのですが……」
そこで言葉を区切り、後ろに目を向ける。
先程までベルたちがショーをしていた場所だ。ベルたちのショーが終わったにも関わらず、その熱は未だに残り、興奮が冷めるどころかさらに盛り上がっているように見えた。色んな人の声が入り混じり、何を発しているのか正確に聞き取ることはできない。それでも誰もが目を輝かせているので、どんな言葉を口にしているのかくらいは想像することができる。
そんな中、平然とベルたちが街を歩けば、必然と人は集まってくる。人が集まれば歩きにくくなるし、ベルたちを一目見ようとした人たちの中に怪我人が出てくるかもしれない。そこまで想像できるのに、無理をしてでも王都を歩き回ろうとは思えなかった。
だからこのまま住んでいる街に一度戻ろうと思っていることをエドアルドに伝えようと口を開けかけたとき、エドアルドから一つの提案をされた。
「ベル様、私は国民の皆にこの建国祭を楽しんでもらいたいのです。そしてベル様、貴方様にもです。ベル様は我がナツゥーレ国の輝人なのですから」
「でも……」
「ですのでベル様方が建国祭を楽しめるよう、僭越ながら護衛騎士を用意させて頂きました。周囲を固められるのは煩わしいかもしれませんが、彼らはベル様方が安心して回れるよう、この日のために作戦を練り、訓練を積んでおります。どうか彼らが傍にいることをお許し頂けないでしょうか?」
エドアルドが二度手を叩くと、十五人の騎士がベルたちの前に現れた。
十五人のうち、リーダー格である騎士の一人が、他の騎士たちより一歩前へ出て、ベルたちの前で跪く。他十四人の騎士もその場で跪いた。
他の騎士よりも一歩前で跪いた騎士の飾緒は、他の騎士たちとは全く異なる立派な飾緒だった。それに、醸し出す雰囲気も一般の騎士ではない気がする。
「本日護衛騎士を務めさせていただく、ノーバン・ディウドと申します。微力ではございますが、精一杯務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします」
「ノーバンはナツゥーレ国騎士団団長を務めております。安心して建国祭をお楽しみください」
(騎士団団長!? それってこの国で一番強い人ってことだよね? そんな人が護衛って大丈夫なの……?)
エドアルドの計らいは正直言って嬉しい。
しかし国の一大イベントにそんな人を護衛にしてしまって大丈夫なのだろうか。そう頭を悩ませるが、視界にエリオットとラヴィックが映り込んで、ああそうかと自己完結してしまった。すっかり忘れていたが、エリオットとラヴィックは他国の輝人だ。ベルにとって二人が気安い友人のような相手でも、それはナツゥーレの国王であるエドアルドからしてみれば違う。自分を守れるほどに二人が強くとも、他国の要人。そこらの一般の騎士を護衛としてつけるわけにはいかないのが現実だ。
「ありがとうございます。あ、でも皆が行くならってことになるけど……」
まだ誰の意見も聞いていない。行くにしても全員の意見を聞いてからだ。
「もちろん行くに決まってるだろ? 俺、祭り好きだし」
「僕も! こうやって大勢で集まることも中々ないからね。あ、でもラヴィック。あんまりはめをはずし過ぎちゃだめだよ?」
「分かってるって」
一番に賛成してくれたのはラヴィックとトトーだ。声音を聞く限り、ベルよりも楽しみにしているようだ。
「せっかくの建国祭だしな。お言葉に甘えるとしよう」
「そうね。ベルとこうして回れることも中々ないもの」
次いで同意を示してくれたのはエリオットとコーディリアだった。ラヴィックたちのようにはしゃいでこそいないものの、楽しみにはしていたらしい。
「お嬢が行きたがってのは見てればわかるよ」
「そうそう。だから護衛云々って話が出なくても誘うつもりだったんだ」
いつの間にかベルの左右に陣取っていたアーテルとアルブスは、元よりそのつもりだったようだ。
「だからね、ベル。遠慮などせず楽しめばいい」
真後ろにいるロセウスにもそう言われ、最初からお見通しだったことを知る。なんだか恥ずかしく思いつつも、皆で回れることに嬉しさを隠しきれず頬が緩む。
「……では短い間ですが、よろしくお願いします」
「お任せください」
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