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国王からの依頼
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「うわあ……」
王都に到着すると、クーはその人の多さに圧倒される。ジーニアスの商業地区ネテアに来た時も似たような光景だったが、そこよりも整然とした雰囲気があるのは、店や住宅といった建物に統一感があるからだろう。
「早速、王城に向かおうか。えっと、行き方は……」
マイがこの都の入り口である門のところでもらった案内図を開く。鉄道を利用した方が良いようだった。
「まずは駅ね。近くに東門前って駅があるみたいだし、そこから乗ろうか」
マイが地図を閉じて歩き出すと、クーもその後に続く。その時、クーの背後に何かがのしかかられる感覚に襲われた。
「わわっ⁉ な、なに⁉」
驚いたクーの声に、マイも振り返る。
「なにその女!」
クーの背後には女性がいた。髪をハーフアップにした女性は、クーの首に腕を絡ませており、肩にあごを乗せ、気持ちよさそうな顔を浮かべていた。
「離れろ! この変態!」
クーに絡んだ腕を解こうと、マイが腕を伸ばす。眠っているにもかかわらず、腕は強固に絡んでおり、解くのは困難だった。
「ちょ、ちょっと、く、苦しい……」
クー自身も解く為にもがく。やはり腕はほどけず、むしろどんどん強くなっていった。
「クー! そのまま後ろに倒れちゃえ!」
「え⁉ でもそんなことしたら……」
「急に抱きついてきた奴が悪い! やっちゃえ!」
どのみち、このままでは窒息してしまう。クーは意を決して思い切り後ろへと倒れこむ。
「んにゅ?」
背後の女性は突如目を覚まして、足を延ばして地面を支える。
「うにゃあ。危ないにゃあ~」
「危ないのはそっちでしょ! 急に人に抱き着いて、首を絞めるとか!」
「首絞め?」
女性は自分が抱きついてたクーのことを見つめる。クーは苦しそうに腕を叩いている。目をパチパチとさせると、女性はにへっと笑った。
「あはは。ごめんね~。ちょっとうとうとしちゃって~」
「い、いえ。あの、は、早く離れてもらってもいいですか?」
「うん~。あ~でも~、いい匂いだから~、出来れば離れたくないかも~」
「いいからとにかく離れろ!」
マイが女性の体を引っ張ると、彼女は名残惜しそうにクーから離れていく。
「まったくもう、乱暴なお子様だにゃ~」
「子ども扱いすんな!」
「にゃは。ごめんごめん」
あまり反省している様子のない女性に、マイは苛立ちを隠せなかった。むしゃくしゃしたように後ろ髪を乱暴にいじると、クーの腕を引いた。
「ほらクー。もう行くよ」
「う、うん」
「あ、ちょっと待ってよ~」
女がクーに近づいて来る。距離を取ろうとマイが強く腕を引くが、女性はすぐに目の前まで接近していた。
「さっきは本当にごめんね~。お詫びになんかごちそうするよ~」
「え、えと。だ、大丈夫です。その、私たちお城に用があって……」
「クー。余計な事は言わなくていいの」
マイが窘めると、クーは「ごめん」と謝罪する。
「にゃはは。君たちなんかちぐはぐだね~。おチビちゃんの方がしっかり者なんだ」
「ちび言うな。蹴るよ」
「おお怖い怖い。ま、それは置いといて。本当にいいの? せっかくの奢りなんだよ~?」
「は、はい」
「そっか~。しつこく誘うのもよくないよね~」
女性は最後に「ほんとにごめんね~」というと、そのまま雑踏に紛れてどこかへ行ってしまった。
「なんなの。今の女」
「うん。あの人、同じ馬車に乗っていた人、だよね」
「ああ。そういえば」
馬車の中で言葉を交わさなかったからか、マイの頭の中にはうっすらとした記憶しかなかった。馬車が大きく揺れたにも関わらず、ずっと居眠りをしていた女性だった。
「ま、もう会う事もないでしょ。というか会いたくない」
「なんかマイ。ずいぶんご機嫌斜めだね」
「当たり前でしょ。あんたこそ、首を絞められたわりには、ずいぶんのんきじゃん」
「う、う~ん。だって事故みたいなものだったし、なんかあの人と話しているとどうでもよくなっちゃったっていうか……」
「……とにかく。もう二度と会わない事を願うわ」
早速疲れたような顔を浮かべたマイは、クーと一緒に改めて最寄り駅を目指した。
王都に到着すると、クーはその人の多さに圧倒される。ジーニアスの商業地区ネテアに来た時も似たような光景だったが、そこよりも整然とした雰囲気があるのは、店や住宅といった建物に統一感があるからだろう。
「早速、王城に向かおうか。えっと、行き方は……」
マイがこの都の入り口である門のところでもらった案内図を開く。鉄道を利用した方が良いようだった。
「まずは駅ね。近くに東門前って駅があるみたいだし、そこから乗ろうか」
マイが地図を閉じて歩き出すと、クーもその後に続く。その時、クーの背後に何かがのしかかられる感覚に襲われた。
「わわっ⁉ な、なに⁉」
驚いたクーの声に、マイも振り返る。
「なにその女!」
クーの背後には女性がいた。髪をハーフアップにした女性は、クーの首に腕を絡ませており、肩にあごを乗せ、気持ちよさそうな顔を浮かべていた。
「離れろ! この変態!」
クーに絡んだ腕を解こうと、マイが腕を伸ばす。眠っているにもかかわらず、腕は強固に絡んでおり、解くのは困難だった。
「ちょ、ちょっと、く、苦しい……」
クー自身も解く為にもがく。やはり腕はほどけず、むしろどんどん強くなっていった。
「クー! そのまま後ろに倒れちゃえ!」
「え⁉ でもそんなことしたら……」
「急に抱きついてきた奴が悪い! やっちゃえ!」
どのみち、このままでは窒息してしまう。クーは意を決して思い切り後ろへと倒れこむ。
「んにゅ?」
背後の女性は突如目を覚まして、足を延ばして地面を支える。
「うにゃあ。危ないにゃあ~」
「危ないのはそっちでしょ! 急に人に抱き着いて、首を絞めるとか!」
「首絞め?」
女性は自分が抱きついてたクーのことを見つめる。クーは苦しそうに腕を叩いている。目をパチパチとさせると、女性はにへっと笑った。
「あはは。ごめんね~。ちょっとうとうとしちゃって~」
「い、いえ。あの、は、早く離れてもらってもいいですか?」
「うん~。あ~でも~、いい匂いだから~、出来れば離れたくないかも~」
「いいからとにかく離れろ!」
マイが女性の体を引っ張ると、彼女は名残惜しそうにクーから離れていく。
「まったくもう、乱暴なお子様だにゃ~」
「子ども扱いすんな!」
「にゃは。ごめんごめん」
あまり反省している様子のない女性に、マイは苛立ちを隠せなかった。むしゃくしゃしたように後ろ髪を乱暴にいじると、クーの腕を引いた。
「ほらクー。もう行くよ」
「う、うん」
「あ、ちょっと待ってよ~」
女がクーに近づいて来る。距離を取ろうとマイが強く腕を引くが、女性はすぐに目の前まで接近していた。
「さっきは本当にごめんね~。お詫びになんかごちそうするよ~」
「え、えと。だ、大丈夫です。その、私たちお城に用があって……」
「クー。余計な事は言わなくていいの」
マイが窘めると、クーは「ごめん」と謝罪する。
「にゃはは。君たちなんかちぐはぐだね~。おチビちゃんの方がしっかり者なんだ」
「ちび言うな。蹴るよ」
「おお怖い怖い。ま、それは置いといて。本当にいいの? せっかくの奢りなんだよ~?」
「は、はい」
「そっか~。しつこく誘うのもよくないよね~」
女性は最後に「ほんとにごめんね~」というと、そのまま雑踏に紛れてどこかへ行ってしまった。
「なんなの。今の女」
「うん。あの人、同じ馬車に乗っていた人、だよね」
「ああ。そういえば」
馬車の中で言葉を交わさなかったからか、マイの頭の中にはうっすらとした記憶しかなかった。馬車が大きく揺れたにも関わらず、ずっと居眠りをしていた女性だった。
「ま、もう会う事もないでしょ。というか会いたくない」
「なんかマイ。ずいぶんご機嫌斜めだね」
「当たり前でしょ。あんたこそ、首を絞められたわりには、ずいぶんのんきじゃん」
「う、う~ん。だって事故みたいなものだったし、なんかあの人と話しているとどうでもよくなっちゃったっていうか……」
「……とにかく。もう二度と会わない事を願うわ」
早速疲れたような顔を浮かべたマイは、クーと一緒に改めて最寄り駅を目指した。
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