名無しのイケメン

盥みだり

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素敵?な出会い

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私は、名代 涼未。
日暮南高校2年生。
所属部は、調理部。
どこにでもいるただの女子高校生。
2年生になり、だいぶ経ち、落ち着いてきたある日の放課後。
部活の活動場所に向かっていたら…私は…

イケメンと出会った。

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『初めまして。俺はタツ。』
驚いて立ち尽くしている私に、タツは優しく微笑んだ。
「えっと…あの…ぇえっと…」
どうしよう。頭がついていかない。さっき聞こえた声は確かにタツと名乗る人の声だった。…人?
「あの、タツ…さんは人ですか?」
『俺は幽霊だよ』
あーついに頭おかしくなった。
幽霊?なんで私幽霊と話してんの?
『あ、あとタツでいいよ。人間の時の年齢でいうと涼未と同い年なはずだから』
私と同い年か。高校2年生で死ぬなんて…何があったんだろう…しかもどうして私の名前知ってるんだろう…
『涼未の事色々調べさせてもらった。名前、年齢、性格…』
「あ、だから名前知ってたんだ」
『それで、俺がこれからやろうとしている事に協力してもらうためにさっきは少しイタズラした。怖かっただろ?…すまん』
「あれタツがやったことだったの…助けてくれたんじゃなかったのね…」
私が、安堵と苛立ちでその場にしゃがみ込んだ瞬間に、校舎に明かりが戻った。
「それで、タツが私に協力してほしいことって何?」
『…俺の記憶を取り戻す事だ。』
「…?」
『俺は死んだ後、生きていた頃の記憶を失った。その記憶を取り戻すまで、俺は成仏出来ない。成仏の仕組みは俺にもよくわからない。どうして記憶が消えたのかも謎だ。だけど記憶を取り戻す手掛かりはこの学校にある。その証拠にほら、この学校の制服を着ている』
「…あ、ホントだ」
『涼未には、俺の記憶を取り戻すことの手伝いをしてほしい。今この旧校舎に出入りしているのは涼未だけだ。涼未にしか頼めないんだ…頼む。手伝ってくれないか…?』
タツは涙目で私の手を握ってきた。感覚はあるけど…とっても冷たい。
よく見ると指先が少し透けていた。
「…わかった。こんな私でも誰かのために何かが出来るなら、私協力するよ。タツの記憶探し」
『涼未…!』
「 っ!?」
タツが急に抱きついてきた。
とても冷たいのに、熱かった。
きっと私の体温だろう。
幽霊でもこんなイケメンに抱きつかれたら…誰だって照れると思う。
『ありがとう涼未…じゃあ早速、手掛かりがありそうなところ探そうぜ!』
タツは爽やかな笑顔を私にくれた。
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