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偶然見たもの
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「ここが俺ん家だ」
公園からしばらく歩き、俺たちはようやく俺の家へとたどり着いた。
ごく普通の一軒家なのだが、なぜか寝子は
俺が玄関の前でそう言うと、目を輝かせていた。
「ここが健のお家⋯⋯。早く中に入りたい」
「お、おう」
というわけで、早速俺たちは家へ入る。
いつも見る当たり前な光景。だが、寝子には新鮮だっただろう。そのせいか寝子は玄関へと入るなり、靴を履いたまま上がっていってしまった。俺は靴を脱ぎ慌てて止める。
「寝子、わるいけど俺ん家では靴は脱いでくれ。いや他の人の家でもちゃんと脱ぐんだぞ?」
俺が言うと、こくりと頷いた。
寝子に靴を脱がせ、リビングへと入る。
「ここがリビングだ。どうだ? 俺が言った通り普通だろ?」
「うん、普通」
寝子は平然と言う。しかし、寝子は顔を晴れさせながら続けた。
「でも、私はこれが好き。普通が好きなの」
「そうか。寝子は普通が好きなんだな」
「うん!」
寝子が気に入ってくれたならそれでいい。 俺も普通が好きだからな。一緒だ。
そして寝子はしばらくリビングを散策していた。バーニャ王国にはないであろう家具や物に子供のように目を輝かせていた。しばらくして寝子はあるものを手に取り、言った。
「健、これって⋯⋯」
「ああ、これな」
そのあるものとは、写真立てだった。
家族で旅行に行ったときの記念写真だ。寝子は俺の亡くなった妹――紬を指で優しくなぞり、ぽつりと呟いた。
「⋯⋯私に、そっくり」
そう。俺も薄々は気づいていた。紬は、他人が見たらどっちがどっちだか分からないくらいに寝子にそっくりだった。俺が紬の顔を忘れるわけがない。だが、気づくのに少し時間を要した。紬にそっくりだから寝子に妙に親近感を感じるんだろうな。
だが、似てるからこそ過去を思い出してしまい、胸を締め付けられる。
あの時、俺が紬を連れていかなければ⋯⋯。
「健?」
「あ、ああ。わるい、少し考え事してた」
寝子が心配そうな顔で俺の顔を覗き込んできたので、俺は我に返る。
「健の妹さん、とてもかわいい。良い妹を持ってたんだね」
寝子は少し俯き気味に微笑みながらそう言った。
一瞬戸惑ったが、俺は特に気にせず返事をした。
「ああ⋯⋯紬はいいやつだったよ」
⋯⋯ダメだな。これ以上紬の話をしているとまた自分を責める悪い癖が出ちまいそうだ。話を逸らそう。
俺は別の話題を考え寝子に話した。
「そうだ寝子、お前風呂とかはどうしてたんだ?」
俺が言うと、寝子はしれっとした様子で言った。
「お風呂? 入ってないよ」
「お前まじかよ。女の子なんだから毎日入んないとダメだろ?」
「だって学校にはお風呂ないし」
「あかりちゃんに頼めばよかったじゃないか」
俺はため息をついてから言った。
「俺ん家の風呂、着替え用意するから入ってこい」
着替えは紬が着ていたやつが何着かある。それを着ればちょうどいいはずだ。
「うん、わかった。入ってくるね」
「あ、風呂の場所教える」
そう言って俺は寝子を風呂へと案内した。
寝子が風呂に入っている間、俺はリビングのソファで寝転がりながら、漫画を読んでいた。
時間は6時を回っていたが、まだ外は明るく、セミの鳴き声がうるさい。
「そういや寝子のやつ、やけに遅いな⋯⋯」
寝子が風呂に入ってから既に一時間が経とうとしている。
女子の風呂が長いことは理解しているつもりだが、一時間近く入っているとなると、さすがに女子といえど長すぎやしないかとツッコミを入れたくなる。
「まぁそんくらい入る人もいるか」
俺は特に気にせずまた漫画を読み始めた。
「まだ上がってこないのか?」
漫画を1冊読み終え、30分が経過していた。
さすがに遅すぎるだろ。一時間半も風呂に入るなんて、何かあったに違いない。
漫画をソファに置き、俺はおそるおそる脱衣場へと向かった。
シャワーの音が聞こえる。まだ洗ってるのか?
俺は脱衣場のドアを開ける。そして俺は焦った。
モヤのかかったドア越しに寝子の姿がない!
「寝子! いるのか! 開けるぞ!」
俺はモヤのかかったドアを勢いよく開けた。幸い鍵はかかっていなかったため、すんなりと開く。
「寝子! 大丈夫か!⋯⋯って」
俺はドアを開けたまま立ち尽くす。それもそのはず。
寝子はシャワーを出しっぱなしにして、脱衣場からは見えない位置にある浴槽に浸かりながら、気持ち良さそうに寝ていたのだ。 俺の心配を返せ!
「寝子! 起きろ!」
「ん⋯⋯? なぁに健?」
「なぁにじゃない! 風呂で寝るな!そ、それに少しは隠せ!」
俺はそう言った時、ある事に気付き、そこに目がいってしまった。
「·····寝子、その身体の痕は――」
俺がそこまで言った時だった。
「見ないでっ!!」
突然、寝子が出したとは思えないほどの迫力のある声で、寝子が自分の身体を隠しながら叫んだ。
俺はそう叫ばれ、驚愕と同時に瞬時に後ろを向く。寝子の目には多少の涙も浮かんでたように見えた。
俺は鼓動を抑え、なんとか言葉を絞り出した。
「わ、悪かった!俺、あっち行くから!」
俺はそう言うと脱衣所から逃げるようにしてその場を去った。
公園からしばらく歩き、俺たちはようやく俺の家へとたどり着いた。
ごく普通の一軒家なのだが、なぜか寝子は
俺が玄関の前でそう言うと、目を輝かせていた。
「ここが健のお家⋯⋯。早く中に入りたい」
「お、おう」
というわけで、早速俺たちは家へ入る。
いつも見る当たり前な光景。だが、寝子には新鮮だっただろう。そのせいか寝子は玄関へと入るなり、靴を履いたまま上がっていってしまった。俺は靴を脱ぎ慌てて止める。
「寝子、わるいけど俺ん家では靴は脱いでくれ。いや他の人の家でもちゃんと脱ぐんだぞ?」
俺が言うと、こくりと頷いた。
寝子に靴を脱がせ、リビングへと入る。
「ここがリビングだ。どうだ? 俺が言った通り普通だろ?」
「うん、普通」
寝子は平然と言う。しかし、寝子は顔を晴れさせながら続けた。
「でも、私はこれが好き。普通が好きなの」
「そうか。寝子は普通が好きなんだな」
「うん!」
寝子が気に入ってくれたならそれでいい。 俺も普通が好きだからな。一緒だ。
そして寝子はしばらくリビングを散策していた。バーニャ王国にはないであろう家具や物に子供のように目を輝かせていた。しばらくして寝子はあるものを手に取り、言った。
「健、これって⋯⋯」
「ああ、これな」
そのあるものとは、写真立てだった。
家族で旅行に行ったときの記念写真だ。寝子は俺の亡くなった妹――紬を指で優しくなぞり、ぽつりと呟いた。
「⋯⋯私に、そっくり」
そう。俺も薄々は気づいていた。紬は、他人が見たらどっちがどっちだか分からないくらいに寝子にそっくりだった。俺が紬の顔を忘れるわけがない。だが、気づくのに少し時間を要した。紬にそっくりだから寝子に妙に親近感を感じるんだろうな。
だが、似てるからこそ過去を思い出してしまい、胸を締め付けられる。
あの時、俺が紬を連れていかなければ⋯⋯。
「健?」
「あ、ああ。わるい、少し考え事してた」
寝子が心配そうな顔で俺の顔を覗き込んできたので、俺は我に返る。
「健の妹さん、とてもかわいい。良い妹を持ってたんだね」
寝子は少し俯き気味に微笑みながらそう言った。
一瞬戸惑ったが、俺は特に気にせず返事をした。
「ああ⋯⋯紬はいいやつだったよ」
⋯⋯ダメだな。これ以上紬の話をしているとまた自分を責める悪い癖が出ちまいそうだ。話を逸らそう。
俺は別の話題を考え寝子に話した。
「そうだ寝子、お前風呂とかはどうしてたんだ?」
俺が言うと、寝子はしれっとした様子で言った。
「お風呂? 入ってないよ」
「お前まじかよ。女の子なんだから毎日入んないとダメだろ?」
「だって学校にはお風呂ないし」
「あかりちゃんに頼めばよかったじゃないか」
俺はため息をついてから言った。
「俺ん家の風呂、着替え用意するから入ってこい」
着替えは紬が着ていたやつが何着かある。それを着ればちょうどいいはずだ。
「うん、わかった。入ってくるね」
「あ、風呂の場所教える」
そう言って俺は寝子を風呂へと案内した。
寝子が風呂に入っている間、俺はリビングのソファで寝転がりながら、漫画を読んでいた。
時間は6時を回っていたが、まだ外は明るく、セミの鳴き声がうるさい。
「そういや寝子のやつ、やけに遅いな⋯⋯」
寝子が風呂に入ってから既に一時間が経とうとしている。
女子の風呂が長いことは理解しているつもりだが、一時間近く入っているとなると、さすがに女子といえど長すぎやしないかとツッコミを入れたくなる。
「まぁそんくらい入る人もいるか」
俺は特に気にせずまた漫画を読み始めた。
「まだ上がってこないのか?」
漫画を1冊読み終え、30分が経過していた。
さすがに遅すぎるだろ。一時間半も風呂に入るなんて、何かあったに違いない。
漫画をソファに置き、俺はおそるおそる脱衣場へと向かった。
シャワーの音が聞こえる。まだ洗ってるのか?
俺は脱衣場のドアを開ける。そして俺は焦った。
モヤのかかったドア越しに寝子の姿がない!
「寝子! いるのか! 開けるぞ!」
俺はモヤのかかったドアを勢いよく開けた。幸い鍵はかかっていなかったため、すんなりと開く。
「寝子! 大丈夫か!⋯⋯って」
俺はドアを開けたまま立ち尽くす。それもそのはず。
寝子はシャワーを出しっぱなしにして、脱衣場からは見えない位置にある浴槽に浸かりながら、気持ち良さそうに寝ていたのだ。 俺の心配を返せ!
「寝子! 起きろ!」
「ん⋯⋯? なぁに健?」
「なぁにじゃない! 風呂で寝るな!そ、それに少しは隠せ!」
俺はそう言った時、ある事に気付き、そこに目がいってしまった。
「·····寝子、その身体の痕は――」
俺がそこまで言った時だった。
「見ないでっ!!」
突然、寝子が出したとは思えないほどの迫力のある声で、寝子が自分の身体を隠しながら叫んだ。
俺はそう叫ばれ、驚愕と同時に瞬時に後ろを向く。寝子の目には多少の涙も浮かんでたように見えた。
俺は鼓動を抑え、なんとか言葉を絞り出した。
「わ、悪かった!俺、あっち行くから!」
俺はそう言うと脱衣所から逃げるようにしてその場を去った。
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