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第1章ヨシヒコ編
第6話
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ウンディーネ地下水路
発光するキノコをむしり取ってランタンがわりにするゼリーマン。
「もう少し行けばホーン平原の下ですが・・・
やめといたほうがいいっすよ・・・ここら一帯はもはやガリア帝国の縄張りだ・・・
ガリア兵はイナゴみたいな連中でね・・・何もかも奪って食いつぶしちまう・・・」
ヨシヒコ「まいったな・・・一度会社に帰って戦略を立て直したかったが・・・」
ゼリーマン「その会社が邪魔者の旦那を殺すために戦場のど真ん中に送ったんじゃないんですか?
俺が思うに・・・コマキ社は本気で奥様を救出する気はないと思いますよ。
そういう連中がやることは責任逃れの言い訳を考えることだけだ。」
ヨシヒコ「妻の救出に本気なのは出資したGASEだけか・・・」
ゼリーマン「ホーン平原の他にゲートはあるんですか?」
ヨシヒコ「ああ・・・来場者用が6ヶ所と従業員用が2ヶ所・・・」
ゼリーマン「その中で、戦火に巻き込まれていないところを探すとしますか・・・」
ヨシヒコ「・・・お前はずっとついてくるのか・・・??」
ゼリーマン「世話になった旦那が異世界で一人ぼっちなんですよ!力を貸すのはスライムとして当たり前じゃないですか・・・!」
ヨシヒコ「・・・仲間と根城がなくなったから心細いのか?」
ゼリーマン「ばっ・・・冗談じゃない!オレはこれでも雑魚モンスターの王っすよ!
手下はまだまだたくさん・・・」
ヨシヒコ「悪かった・・・私も大切なガイドを失ってね・・・
君のように、人間の言葉もモンスターの言葉もわかる味方は心強い・・・
ついてきてくれると助かる・・・」
ゼリーマン「へへ・・・」
ヨシヒコ「・・・で、どうせ目的は私の世界のゼリーなんだろ?
謝礼はハウス食品ゼリエース1年分でいいのか?」
ゼリーマン「で・・・できればマンナンライフの方も・・・」
ヨシヒコ「わかったよ・・・ウィダーインゼリーも箱で付けてやる・・・」
ゼリーマン「おっしゃあ!これでオレは一生遊んで暮らせる!
ゼリー界の神にオレはなる・・・!」
ヨシヒコ「よ・・・よかったな・・・」
ゼリーマン「旦那、オレに考えがあります・・・」
ヨシヒコ「聞こう。」
ゼリーマン「旦那の会社には味方はいない・・・なら、戻るのは奥様を救出してからだ。
この世界で味方を見つけるんです。」
ヨシヒコ「・・・まあ一理あるな・・・」
ゼリーマン「しかし、凄腕の味方をパーティに加えるには金が必要だ・・・
旦那・・・何ゴールド持ってます?」
ヨシヒコ「・・・現地の通貨は・・・12ゴールド・・・」
ゼリーマン「それ・・・俺によこしてください・・・100倍にしてみせますよ・・・」
ヨシヒコ「どうやって・・・?」
地下水路の隠し通路を開けるゼリーマン「ここです・・・」
・
通路の奥には、恐ろしいモンスターたちが集まる賭博場がある。
ゼリーマンが賭博場に入ろうとすると、ボディガードのミノタウロスとサイクロプスが入場を阻む。
ゼリーマン「メドの友人のゼリーが来たと伝えろ。」
ミノタウロス「あんた・・・また来たのか・・・」
サイクロプス「帰んな。お前は出禁だ・・・」
ゼリーマン「この俺にそんな口の利き方ができるとは・・・いやはや驚いたぜ。」
ミノタウロス「塩をかけられたくなかったら、とっとと失せろ・・・」
ゼリーマンにヨシヒコ「モンスターの王じゃなかったのか・・・?」
ヨシヒコを見てミノタウロス「あ・・・あんた・・・コマキの人間か!??」
ヨシヒコ「そうだが・・・」
サイクロプス「ひ・・・ひい・・・!この店は見逃してくだせえ・・・!
人間様に虐げられた哀れな魔物が細々とやっているつまらねえ遊戯施設です・・・」
ゼリーマン「ふうん・・・おめえらコマキが怖いのか・・・
この俺はこの方の第一の舎弟だがな。
お前らの態度次第では、コマキを説得してやってもいいが・・・」
ミノタウロス「本当か?」
サイクロプス「どうする兄弟・・・」
ミノタウロス「オーナーに相談だな・・・
コマキの方・・・ど、どうぞこちらへ・・・」
ヨシヒコ「コマキ社を相当恐れているじゃないか・・・」
ゼリーマン「それはそうですよ・・・半年前に完膚無きまでにやられちまったんだから。
地上のモンスターは来場者が怖がるということで、この地下に強制退去ですよ。
ハルみたいな飛行系はここには住めませんでしたがね。」
ヨシヒコ「コマキのせいで難民か・・・」
用心棒の魔物2人に案内されて賭博場を歩いて行くヨシヒコとゼリーマン。
スケルトンの博徒「もう賭けられる骨がねえ・・・!」
ゼリーマン「骨になるまで飲まれるとかバカだろあいつ・・・」
支配人室
メガネをかけたショートカットの美女が大きなデスクで帳簿をつけている。
美女は下半身がガラガラヘビのそれで、しっぽの先っちょはデスクの陰に隠れている。
ヘビ女「ようこそ、裏カジノ「ハリーハウゼン」へ!ここのオーナーをさせてもらっているメド・ゴルゴーンです。
コマキさんへの上納金は先月送金したはずですが?」
ヨシヒコ「・・・うちの会社はモンスターになんてことさせてるんだ・・・」
ゼリーマン「相変わらず美人だなメドちゃん。海神が入れ込んだのも分かるぜ。」
メド「・・・あんたとは口もききたくないわ。」
ゼリーマン「無視は愛の裏返しってね・・・」
メド「キモイ・・・うちのカジノでゴト行為をやって黒服にボコボコにされたのに、よく懲りずに来れたものね・・・店が汚(けが)れるから出ていってちょうだい。」
ヨシヒコ「おたく・・・めちゃくちゃ嫌われてないか?」
ヨシヒコの方を向いて微笑むメド「もちろん泉様はVIP待遇で遊戯を楽しんでいただけますわ・・・
ルーレット、バカラ、ポーカーなんでもござれ。
差し支えなければ、このわたくしがディーラーを・・・」
ひそひそ声でゼリーマン「ここのルーレットには電磁石が仕込んであります・・・」
メド「おだまり、石にするわよ。」
ゼリーマン「コマキに髪を切られちまったからできないだろ。」
メド「あんたに牛乳を混ぜるわ。」
ゼリーマン「おれはフルーチェか・・・」
金貨が入った袋を取り出すヨシヒコ「元手がこれしかないんだが・・・」
メド「あらまあ・・・うちの最低ベットは20ゴールドなので厳しいですわね・・・
ただし、賭け金を貸し出すことはできますわ。
コマキの社員様には、それこそ低金利で・・・(歯車式の計算機を叩く)トイチでどうかしら?」
ヨシヒコ「・・・おいゼリー・・・破滅への扉が今開いた気がするんだが・・・」
ゼリーマン「何をおっしゃいます!
冷血動物のメデューサにしちゃ甘々のデレデレ!
ここで勝負しなきゃ男じゃねえっすよ旦那!」
ヨシヒコ「ぼくはリスクが高いことには手を出さない主義なんだ。
トイチは年利換算で3100%・・・悪魔的だ。今じゃ武富士だってやらない・・・」
ゼリーマン「おい、その金利で乗った!いくらまで借りれる!?」
メド「あんたには貸さないわよ?私が貸すのはそちらの紳士・・・」
ゼリーマン「わかってらい!
旦那、こちらの羊皮紙にサインを・・・上限いっぱいまで借りましょう!」
サインをするヨシヒコ「お前・・・大丈夫なんだろうな・・・
で、貸し出し上限はいくらなんだ?」
メド「24000ゴールド・・・コマキ様ならはした金ですわ。」
青ざめるゼリーマン「・・・え?」
ヨシヒコ「お・・・おい・・・!!24000ゴールドって一体どれくらいの金額なんだ!」
ゼリーマン「武器屋で一番高い装備が・・・ちがうな。武器屋が買えます。」
ヨシヒコ「やっぱり貸出額は240ゴールドで・・・」
メド「あら残念ね。お客様はすでにサインをしてしまった。
魔界で契約は絶対・・・こちらが24000ゴールド相当のチップです。」
メドがレバーを引くと、金庫が開いて大量のチップがあふれ出す。
チップに埋まってしまうゼリーマン「うあ~!」
メド「さあ、頑張ってくださいまし。
10日で少なくとも2400ゴールド分は勝たないと利子も払えませんわよ・・・
お~っほっほ・・・!」
ゼリーマン「くそう!はめられたぜ・・・!!」
ヨシヒコ「馬鹿野郎!どうすんだこのチップ・・・!」
メド(・・・くくく・・・まんまとコマキのバカ社員を毒牙にかけてやったわ・・・
今まであの会社に奪われた分をふんだくってやるんだから・・・)
ゼリーマン「おいラミア!」
メド「種族名で呼ばないでくれる・・・?」
ゼリーマン「このカジノで青天井のギャンブルは何だ!!」
ヨシヒコ「お前本物のバカだろ・・・!」
ゼリーマン「このチップの量をチビチビかけてたら間に合いませんよ・・・!
こうなりゃハイリスクハイリターンの大勝負をして勝ち逃げするっきゃねえ!」
ヨシヒコ「パチンカスがよく言うセリフだ・・・!」
メド「そりゃあもちろんジュ―スティングに決まってるじゃない。」
ヨシヒコ「ジュースティング?」
ゼリーマン「よっしゃあ!血がたぎるぜ・・・!!」
ヨシヒコ「もしかして・・・馬上槍試合じゃないだろうな・・・!
俺たちはランサーなんか用意できないぞ!」
ゼリーマン「ランサーはここにいる。」
ヨシヒコ「は??」
ゼリーマン「このオレが出場します。」
ヨシヒコ「なんだって?お前馬に乗れるのか??」
かっこつけてニヤリと微笑むゼリーマン「サー・ウィリアム・マーシャル並みにはね。」
メド「あら勇敢なこと・・・!(黒服に)あんたたち、この愚かなスライムに槍と馬を用意してあげなさい。」
ゼリーマンにコンピテンシーリーダーをあてるヨシヒコ。
「ゼリーマン。レベル1、HP5、攻撃力0、防御力0、乗馬経験も0」
ヨシヒコ「・・・終わった・・・」
・
ジュ―スティングの円形コロシアム
――ジュ―スティング(一騎撃ち)とは、馬に乗った2人の騎士が双方から突進し、相手の胸に木製のランスを当てる競技である。
胸にランスを当てられればベット額の2倍、そのまま落馬させればなんと5倍の配当が得られる、脳汁まちがいなしの中世を代表するギャンブルだ・・・!
メド「さあ、皆さんお待ちかね・・・!
我がカジノ「ハリーハウゼン」にジュ―スティングが帰ってきました!
赤コーナーはディフェンディングチャンピオン!ミスタースリーピーホロウ、サー・デュラハン!
いざ入場です!!」
大歓声を受けて、下半身が馬になった首なし騎士がコロシアムに入場する。
大人気のデュラハンを眺めるヨシヒコ達。
ヨシヒコ「おい・・・めちゃくちゃ強そうだぞ・・・」
ゼリーマン「笑止。試合の前にすでに首が取れてるじゃないですか。
それ、すなわち雑魚キャラ・・・」
デュラハンにコンピテンシーリーダーをあてるヨシヒコ「死を予言する魔物らしいぞ・・・」
ゼリーマン「ふふ・・・この顔が、死にゆくゼリーの表情に見えますか?」
ジャケットを脱ぐヨシヒコ「逆になんでそんな自信満々なんだよ・・・試合には私が出る。」
ゼリーマン「旦那が?死ぬつもりですか?」
ヨシヒコ「お前は馬にも乗れないだろうが・・・!
私は妻に無理やり乗馬に付き合わされたことがある・・・だから少なくとも馬には乗れる・・・
それに・・・ここの連中はコマキを心底恐れている・・・コマキ社員のぼくに手荒な真似はしないだろう。」
ゼリーマン「忖度させるわけっすね!」
メド「対する挑戦者は青コーナー!
トウキョウトチュウオウクという異世界からお越しの株式会社コマキアミューズメント開発部主任、泉ヨシヒコ様!」
観客のモンスターたちは応援していいのか迷って、もじもじしている。
まばらな拍手。
ゼリーマン「おう!てめえらの薄汚ねえ賭博行為、誰が公認していると思ってるんだ!!」
慌てて大歓声をヨシヒコに浴びせるモンスターたち。
スケルトン兵士「最後の骨をミスターイズミに賭けるぜ~!!」
デュラハンに近づいて耳打ちするミノタウロス
「デュラハン卿・・・姐さんからの伝言だ。」
デュラハン「わかってる・・・殺しやしないさ・・・
そんなことしたら、それこそモンスターは皆殺しにされる・・・」
ミノタウロス「とはいえ・・・槍で軽くつついとけってさ・・・
試合中の事故なら何とでもごまかせる・・・
それで俺たち魔物の溜飲もいくらかは下がるだろ。」
デュラハン「面白い・・・」
発光するキノコをむしり取ってランタンがわりにするゼリーマン。
「もう少し行けばホーン平原の下ですが・・・
やめといたほうがいいっすよ・・・ここら一帯はもはやガリア帝国の縄張りだ・・・
ガリア兵はイナゴみたいな連中でね・・・何もかも奪って食いつぶしちまう・・・」
ヨシヒコ「まいったな・・・一度会社に帰って戦略を立て直したかったが・・・」
ゼリーマン「その会社が邪魔者の旦那を殺すために戦場のど真ん中に送ったんじゃないんですか?
俺が思うに・・・コマキ社は本気で奥様を救出する気はないと思いますよ。
そういう連中がやることは責任逃れの言い訳を考えることだけだ。」
ヨシヒコ「妻の救出に本気なのは出資したGASEだけか・・・」
ゼリーマン「ホーン平原の他にゲートはあるんですか?」
ヨシヒコ「ああ・・・来場者用が6ヶ所と従業員用が2ヶ所・・・」
ゼリーマン「その中で、戦火に巻き込まれていないところを探すとしますか・・・」
ヨシヒコ「・・・お前はずっとついてくるのか・・・??」
ゼリーマン「世話になった旦那が異世界で一人ぼっちなんですよ!力を貸すのはスライムとして当たり前じゃないですか・・・!」
ヨシヒコ「・・・仲間と根城がなくなったから心細いのか?」
ゼリーマン「ばっ・・・冗談じゃない!オレはこれでも雑魚モンスターの王っすよ!
手下はまだまだたくさん・・・」
ヨシヒコ「悪かった・・・私も大切なガイドを失ってね・・・
君のように、人間の言葉もモンスターの言葉もわかる味方は心強い・・・
ついてきてくれると助かる・・・」
ゼリーマン「へへ・・・」
ヨシヒコ「・・・で、どうせ目的は私の世界のゼリーなんだろ?
謝礼はハウス食品ゼリエース1年分でいいのか?」
ゼリーマン「で・・・できればマンナンライフの方も・・・」
ヨシヒコ「わかったよ・・・ウィダーインゼリーも箱で付けてやる・・・」
ゼリーマン「おっしゃあ!これでオレは一生遊んで暮らせる!
ゼリー界の神にオレはなる・・・!」
ヨシヒコ「よ・・・よかったな・・・」
ゼリーマン「旦那、オレに考えがあります・・・」
ヨシヒコ「聞こう。」
ゼリーマン「旦那の会社には味方はいない・・・なら、戻るのは奥様を救出してからだ。
この世界で味方を見つけるんです。」
ヨシヒコ「・・・まあ一理あるな・・・」
ゼリーマン「しかし、凄腕の味方をパーティに加えるには金が必要だ・・・
旦那・・・何ゴールド持ってます?」
ヨシヒコ「・・・現地の通貨は・・・12ゴールド・・・」
ゼリーマン「それ・・・俺によこしてください・・・100倍にしてみせますよ・・・」
ヨシヒコ「どうやって・・・?」
地下水路の隠し通路を開けるゼリーマン「ここです・・・」
・
通路の奥には、恐ろしいモンスターたちが集まる賭博場がある。
ゼリーマンが賭博場に入ろうとすると、ボディガードのミノタウロスとサイクロプスが入場を阻む。
ゼリーマン「メドの友人のゼリーが来たと伝えろ。」
ミノタウロス「あんた・・・また来たのか・・・」
サイクロプス「帰んな。お前は出禁だ・・・」
ゼリーマン「この俺にそんな口の利き方ができるとは・・・いやはや驚いたぜ。」
ミノタウロス「塩をかけられたくなかったら、とっとと失せろ・・・」
ゼリーマンにヨシヒコ「モンスターの王じゃなかったのか・・・?」
ヨシヒコを見てミノタウロス「あ・・・あんた・・・コマキの人間か!??」
ヨシヒコ「そうだが・・・」
サイクロプス「ひ・・・ひい・・・!この店は見逃してくだせえ・・・!
人間様に虐げられた哀れな魔物が細々とやっているつまらねえ遊戯施設です・・・」
ゼリーマン「ふうん・・・おめえらコマキが怖いのか・・・
この俺はこの方の第一の舎弟だがな。
お前らの態度次第では、コマキを説得してやってもいいが・・・」
ミノタウロス「本当か?」
サイクロプス「どうする兄弟・・・」
ミノタウロス「オーナーに相談だな・・・
コマキの方・・・ど、どうぞこちらへ・・・」
ヨシヒコ「コマキ社を相当恐れているじゃないか・・・」
ゼリーマン「それはそうですよ・・・半年前に完膚無きまでにやられちまったんだから。
地上のモンスターは来場者が怖がるということで、この地下に強制退去ですよ。
ハルみたいな飛行系はここには住めませんでしたがね。」
ヨシヒコ「コマキのせいで難民か・・・」
用心棒の魔物2人に案内されて賭博場を歩いて行くヨシヒコとゼリーマン。
スケルトンの博徒「もう賭けられる骨がねえ・・・!」
ゼリーマン「骨になるまで飲まれるとかバカだろあいつ・・・」
支配人室
メガネをかけたショートカットの美女が大きなデスクで帳簿をつけている。
美女は下半身がガラガラヘビのそれで、しっぽの先っちょはデスクの陰に隠れている。
ヘビ女「ようこそ、裏カジノ「ハリーハウゼン」へ!ここのオーナーをさせてもらっているメド・ゴルゴーンです。
コマキさんへの上納金は先月送金したはずですが?」
ヨシヒコ「・・・うちの会社はモンスターになんてことさせてるんだ・・・」
ゼリーマン「相変わらず美人だなメドちゃん。海神が入れ込んだのも分かるぜ。」
メド「・・・あんたとは口もききたくないわ。」
ゼリーマン「無視は愛の裏返しってね・・・」
メド「キモイ・・・うちのカジノでゴト行為をやって黒服にボコボコにされたのに、よく懲りずに来れたものね・・・店が汚(けが)れるから出ていってちょうだい。」
ヨシヒコ「おたく・・・めちゃくちゃ嫌われてないか?」
ヨシヒコの方を向いて微笑むメド「もちろん泉様はVIP待遇で遊戯を楽しんでいただけますわ・・・
ルーレット、バカラ、ポーカーなんでもござれ。
差し支えなければ、このわたくしがディーラーを・・・」
ひそひそ声でゼリーマン「ここのルーレットには電磁石が仕込んであります・・・」
メド「おだまり、石にするわよ。」
ゼリーマン「コマキに髪を切られちまったからできないだろ。」
メド「あんたに牛乳を混ぜるわ。」
ゼリーマン「おれはフルーチェか・・・」
金貨が入った袋を取り出すヨシヒコ「元手がこれしかないんだが・・・」
メド「あらまあ・・・うちの最低ベットは20ゴールドなので厳しいですわね・・・
ただし、賭け金を貸し出すことはできますわ。
コマキの社員様には、それこそ低金利で・・・(歯車式の計算機を叩く)トイチでどうかしら?」
ヨシヒコ「・・・おいゼリー・・・破滅への扉が今開いた気がするんだが・・・」
ゼリーマン「何をおっしゃいます!
冷血動物のメデューサにしちゃ甘々のデレデレ!
ここで勝負しなきゃ男じゃねえっすよ旦那!」
ヨシヒコ「ぼくはリスクが高いことには手を出さない主義なんだ。
トイチは年利換算で3100%・・・悪魔的だ。今じゃ武富士だってやらない・・・」
ゼリーマン「おい、その金利で乗った!いくらまで借りれる!?」
メド「あんたには貸さないわよ?私が貸すのはそちらの紳士・・・」
ゼリーマン「わかってらい!
旦那、こちらの羊皮紙にサインを・・・上限いっぱいまで借りましょう!」
サインをするヨシヒコ「お前・・・大丈夫なんだろうな・・・
で、貸し出し上限はいくらなんだ?」
メド「24000ゴールド・・・コマキ様ならはした金ですわ。」
青ざめるゼリーマン「・・・え?」
ヨシヒコ「お・・・おい・・・!!24000ゴールドって一体どれくらいの金額なんだ!」
ゼリーマン「武器屋で一番高い装備が・・・ちがうな。武器屋が買えます。」
ヨシヒコ「やっぱり貸出額は240ゴールドで・・・」
メド「あら残念ね。お客様はすでにサインをしてしまった。
魔界で契約は絶対・・・こちらが24000ゴールド相当のチップです。」
メドがレバーを引くと、金庫が開いて大量のチップがあふれ出す。
チップに埋まってしまうゼリーマン「うあ~!」
メド「さあ、頑張ってくださいまし。
10日で少なくとも2400ゴールド分は勝たないと利子も払えませんわよ・・・
お~っほっほ・・・!」
ゼリーマン「くそう!はめられたぜ・・・!!」
ヨシヒコ「馬鹿野郎!どうすんだこのチップ・・・!」
メド(・・・くくく・・・まんまとコマキのバカ社員を毒牙にかけてやったわ・・・
今まであの会社に奪われた分をふんだくってやるんだから・・・)
ゼリーマン「おいラミア!」
メド「種族名で呼ばないでくれる・・・?」
ゼリーマン「このカジノで青天井のギャンブルは何だ!!」
ヨシヒコ「お前本物のバカだろ・・・!」
ゼリーマン「このチップの量をチビチビかけてたら間に合いませんよ・・・!
こうなりゃハイリスクハイリターンの大勝負をして勝ち逃げするっきゃねえ!」
ヨシヒコ「パチンカスがよく言うセリフだ・・・!」
メド「そりゃあもちろんジュ―スティングに決まってるじゃない。」
ヨシヒコ「ジュースティング?」
ゼリーマン「よっしゃあ!血がたぎるぜ・・・!!」
ヨシヒコ「もしかして・・・馬上槍試合じゃないだろうな・・・!
俺たちはランサーなんか用意できないぞ!」
ゼリーマン「ランサーはここにいる。」
ヨシヒコ「は??」
ゼリーマン「このオレが出場します。」
ヨシヒコ「なんだって?お前馬に乗れるのか??」
かっこつけてニヤリと微笑むゼリーマン「サー・ウィリアム・マーシャル並みにはね。」
メド「あら勇敢なこと・・・!(黒服に)あんたたち、この愚かなスライムに槍と馬を用意してあげなさい。」
ゼリーマンにコンピテンシーリーダーをあてるヨシヒコ。
「ゼリーマン。レベル1、HP5、攻撃力0、防御力0、乗馬経験も0」
ヨシヒコ「・・・終わった・・・」
・
ジュ―スティングの円形コロシアム
――ジュ―スティング(一騎撃ち)とは、馬に乗った2人の騎士が双方から突進し、相手の胸に木製のランスを当てる競技である。
胸にランスを当てられればベット額の2倍、そのまま落馬させればなんと5倍の配当が得られる、脳汁まちがいなしの中世を代表するギャンブルだ・・・!
メド「さあ、皆さんお待ちかね・・・!
我がカジノ「ハリーハウゼン」にジュ―スティングが帰ってきました!
赤コーナーはディフェンディングチャンピオン!ミスタースリーピーホロウ、サー・デュラハン!
いざ入場です!!」
大歓声を受けて、下半身が馬になった首なし騎士がコロシアムに入場する。
大人気のデュラハンを眺めるヨシヒコ達。
ヨシヒコ「おい・・・めちゃくちゃ強そうだぞ・・・」
ゼリーマン「笑止。試合の前にすでに首が取れてるじゃないですか。
それ、すなわち雑魚キャラ・・・」
デュラハンにコンピテンシーリーダーをあてるヨシヒコ「死を予言する魔物らしいぞ・・・」
ゼリーマン「ふふ・・・この顔が、死にゆくゼリーの表情に見えますか?」
ジャケットを脱ぐヨシヒコ「逆になんでそんな自信満々なんだよ・・・試合には私が出る。」
ゼリーマン「旦那が?死ぬつもりですか?」
ヨシヒコ「お前は馬にも乗れないだろうが・・・!
私は妻に無理やり乗馬に付き合わされたことがある・・・だから少なくとも馬には乗れる・・・
それに・・・ここの連中はコマキを心底恐れている・・・コマキ社員のぼくに手荒な真似はしないだろう。」
ゼリーマン「忖度させるわけっすね!」
メド「対する挑戦者は青コーナー!
トウキョウトチュウオウクという異世界からお越しの株式会社コマキアミューズメント開発部主任、泉ヨシヒコ様!」
観客のモンスターたちは応援していいのか迷って、もじもじしている。
まばらな拍手。
ゼリーマン「おう!てめえらの薄汚ねえ賭博行為、誰が公認していると思ってるんだ!!」
慌てて大歓声をヨシヒコに浴びせるモンスターたち。
スケルトン兵士「最後の骨をミスターイズミに賭けるぜ~!!」
デュラハンに近づいて耳打ちするミノタウロス
「デュラハン卿・・・姐さんからの伝言だ。」
デュラハン「わかってる・・・殺しやしないさ・・・
そんなことしたら、それこそモンスターは皆殺しにされる・・・」
ミノタウロス「とはいえ・・・槍で軽くつついとけってさ・・・
試合中の事故なら何とでもごまかせる・・・
それで俺たち魔物の溜飲もいくらかは下がるだろ。」
デュラハン「面白い・・・」
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ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
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