十三歳の聡

茶熊

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1章 退屈から多忙へ

プール

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聡「暑いな…」

9月の中旬に差しかかろうというのに、現在の気温は36℃である。
コンクリートの反射熱もあってか体感温度は40℃程に感じる。

康太「まぁまぁ…夏は暑いもんだって!
それに良いじゃないか絶好のプール日和だぜ?
暑くて晴れだなんて最高じゃないか!」

俺達が行くのは屋内プールだ。
例え外が氷点下で大雪だったとしても中の室温は一定に保たれている。

そう突っ込もうとしたが暑いせいで、言葉にする元気も出なかった。

「ごめ~ん!待った?」

声の方を振り向くと、千里と上村夏実が立っていた。
上村夏実(うえむらなつみ)はクラスの委員長である。
容姿端麗、成績優秀であるが運動が苦手らしい。
完璧超人まであと一歩なのだが実に惜しい。

千里「夏実ちゃんが寝坊しちゃって」

上村「ごめんね完全に目覚ましかけるのを忘れちゃってて…」

どうやら二人は走ってきたのだろう。
もうプールに入ってきたのか?というぐらいに髪が汗で濡れている。

康太「いいよ、気にすんなって
じゃみんな揃ったことだし早速出発!」

康太、そっちは逆だぞ。

康太に任せるとプールに着きそうにはないので俺が先導することになった。
横を歩く康太が俺に耳打ちをする。

康太「なぁ…楽しみなんだろ?」

聡「何が?」

康太「誤魔化すなよ…二人の水着姿だよ!」

聡「ハハハ…笑」

笑って誤魔化す。
生憎だが俺はガキの水着に興味はない。
コイツらと遊ぶのも楽しみだが…強いて言えば出店だな。

ようやくバス停に着きプールに行くためにバスに乗る。
冷房が効いていて、あれほど滝のように流れていた汗がピタっと止まった。
正直遊ぶ元気は無いし、おじさんはこのままバスの中で涼んでいたい。

千里「ねぇ聡、喉乾いてるでしょコーラ飲む?」

確かに口の中は砂漠のように乾ききっている。
千里の好意に甘えて一口頂くことにした。
炭酸が口の中で弾けると同時にコーラ独特の清涼感、爽快感が全身を駆け巡る。
喉がカラカラの時に飲むコーラは温泉上がりに飲む牛乳と同じくらい美味い。

聡「ありがとう…生き返ったわ」

千里「いえいえ、あんた死にそうな顔だったもん」

聡「そんな顔してたか!?
バス内があまりに涼しいから、ちょっと顔が緩んでただけだよ」

千里「あー確かにバカみたいな顔だった」

聡「お前な…笑」

そんな掛け合いをしていた俺の後ろでなにやらヒソヒソ話し声が聞こえた。

康太「なんなんだろうなアイツら」

上村「爆発すればいいのにね」

康太「俺もあんな感じでイチャイチャしたい…
ねぇ上村さん、喉乾いて」

上村「大丈夫」

康太「はい」

千里も喉が乾いていた様で、コーラをくいっと飲む。
何やら頬を赤くしていたが何故だろうと疑問に思う前にバスは目的地に到着した。



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