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第5章 崩れた日常
第116話 御使いモード
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美羽とブラックオーガの戦い。
ズズーン……。
投げ飛ばしたブラックオーガが戻ってきた。
岩にぶつかったダメージはあまりないようだ。
美羽を視認したブラックオーガは咆哮した。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
鼓膜が破れそうな大きさで、聞くものの心の底から恐怖心を煽るような声だ。
当然、美羽も、
(怖いよぉ……、漏らしそうだよぉ)
ガタガタ震えていた。
ブラックオーガは自分の咆哮が効いていると理解していた。
美羽を臆病な獲物だと認定したのだ。
ブラックオーガの嗜虐心が働いた。
怯える美羽に唸りながら憤怒の表情でゆっくり近づく。
美羽は、その表情が心の底から恐ろしかった。
恐ろしい父親の賢治の顔と重なって見えてしまったのだ。
頭の中が真っ白になり、やろうとしていたこと全てを忘れてしまった。
美羽の前に行き、怖がる美羽を見て舌なめずりをする。
そして、大剣を地面に突き刺す。
ドカッ!
ビクッ。
そんな行為一つとっても美羽は怯えてしまう。
オーガはますます喜んで、美羽に近づく。
美羽の顔に自分の顔を近づける。
ニターと笑う。
「ひっ」
美羽が涙を流して、ガタガタ震える。
次の瞬間、ブラックオーガが美羽に平手打ちをした。
バシーン!
美羽は3メートルほど吹き飛び、地面に倒れた。
顔は鼻血が流れ、口からも血が流れ、目は虚になっている。
「グギギ」
オーガが笑う。
少しやりすぎたと思った。
せっかくのおもちゃが手に入ったのだ。大切に遊び尽くしてから壊して、食べなければもったいない。
そう思い、これからこのおもちゃで遊ぶことに決めた。
もう、ハイオーガ達は人間を殺し尽くしているだろう。
これを持って帰れば、羨ましい目で見られるだろう。
だから、ここで遊び尽くそう。そして最後は食べてしまおう。
この柔らかい体を生きたまま足からバリバリ食べるのはさぞかし美味いだろう。
まだ元気だったら悲鳴も聞ける。悲鳴を聞くと旨さが増すのだ。
「グゲゲ」
そして、美羽の右手を掴み持ち上げる。
グッタリしていた。
死んでしまったかと思って、試しに左腕の前腕部を掴み握ってみる。
バキン
「キャーー」
容易く折れると同時に、あまりの痛みに美羽は悲鳴をあげた。
まだ生きているとわかって、ブラックオーガはまたニヤリと笑う。
「やめろ! 御使い様に手を出すな!」
さっき、真っ二つに切った人間が何か言っている。
ブラックオーガにはまだ生きている人間が不思議だった。
オーガなら、これくらいでも生きているが、人間がここまで生きているのは知らない。
そういえば、さっきの戦場でも生きている人間は多かった。だが、そんなことそこまで深く考えなくてもいい。
トドメを刺そうか迷ったオーガだったが、うっかりこの子供まで殺してしまったら、もったいないから、殺すのをやめた。
美羽はブラックオーガの右手に掴まれたまま上に持ち上げられる。
今度は何をするつもりなのか、予測がつかない。
意識が朦朧としてしまっていた。
その意識の中で、美羽はこのままではまずいと思っている。
恐怖は相変わらずだが、まだ何かできるはずだ。
それが何かわからない。
意識が暗い淵に沈もうとしているのがわかる。
しかし、意識をなくしてしまうのはまずい。
(そう……だ、きんちゃんに……助けてって)
そこまで思った時に、先ほどのきんちゃんとの会話を思い出した。
『大丈夫でしょうか? 美羽様、ブラックオーガはかなり怖いですよ』
『うん、この間神界に行った時に、フィーナちゃんに伝えられた神気の使い方があったの。
試してないけど、それを使えばトラウマもなんとかなるはず』
(あ……そうだ。 フィーナちゃんに伝えられた、あれなら)
ブラックオーガは考えた。
遊びといっても何をするか。
すでにぐったりしているから、ただ、怖がらそうとしてもあまり怖がらないかもしれない。
じゃあ、足の先でも食ってやろうか。
そうすれば、悲鳴を上げて楽しくなる。
美味しいし、楽しい。
結局食うのだから、遊びで食っても一緒だ。
ブラックオーガはそれがいいアイデアだと思った。
早速、足の先を食おうと美羽を持ち上げる。
そして、左足の先を口に半分ほど入れて、噛み切ろうとしたその時、美羽の体から桜色の光が溢れ出してきた。
『御使いモード』
その声が聞こえた瞬間に美羽の身体が桜色の光に眩いほどに輝く。
至近距離から光を見てしまったオーガは美羽を投げ捨て、目を覆い悲鳴をあげる。
「グァァァァ」
放り出された美羽は、空中の途中まで死に体だったが、空中にいるうちにボロボロだった体が回復し、うまく着地する。
着地した美羽には大きな桜色の翼が生えていた。
そして、翼から桜色の羽が舞う。
髪は桜色に輝き、波打っている。
美しい桜色の瞳は自信に満ちていた。
その姿はまさに物語の天使そのものだった。
それを見た、いまだに体が半分しかないロイドは感動の声をあげる。
「おお、なんと美しいんだ」
美羽が、オーガに話す。
「これはね、怖がりで何もできなくなっちゃう私のために、フィーナちゃんが作ってくれた神気の使い方なの。
この御使いモードでいるときは……ブラックオーガ。お前でも怖くない」
視力が回復した目を開けたブラックオーガは、美羽が先ほどまで震えて泣いていたくせに、今は堂々としているのが許せなかった。
おもちゃはおもちゃらしくしていればいいのだ。
ブラックオーガは憤怒の表情になった。
「グオオオオオオオオオオ」
咆哮をしたが、美羽は何も動じていない。
生意気にも動じない美羽に業を煮やしたブラックオーガが大きな右の拳で殴りかかった。
その拳が美羽の顔面を砕こうとした瞬間、美羽は左手でその拳を止める。
美羽の足元の地面が砕けるが、美羽には全く効いていない。
「神気結界をはれば、お前の拳なんて防げるけど、散々好き勝手にやってくれたお前の力を真っ向から否定してあげる」
美羽がブラックオーガの懐に潜り込み、右拳を腹に減り込ませる。
ブラックオーガはたまらずに両膝をついて悶絶する。
「力で負けたことはなかったかな? でも、私は身体強化魔法を徹底的に磨いたし、もともと魔力は相当強かったから、いくらでも強化できるの。お前の力なんか、あってないようなものね」
正確な意味はわからなかったが、自分の力をバカにされたのはわかる。
ブラックオーガのプライドはズタズタになった。
「グオオオオオオオオオオオ」
「だから、咆哮は効かないって……?」
ブラックオーガは咆哮で美羽の油断を誘えたと思ったのか、後ろに向かって走った。
その先にあるのは、先ほど地面に突き刺した大剣だった。
あと少しで、大剣を手にできるとオーガがニヤついた瞬間、美羽が目の前の空中にいた。
美羽は微笑んで、
「そんな簡単に武器を取らせると思う?」
と言って、 ブラックオーガの左頬に右回し蹴りを当てた。
「グオッ」
ブラックオーガはすごい勢いで半回転して、顔から地面に突っ込んだ。
起き上がると、ブラックオーガの上顎から生えている左の牙が折れていた。
それに気がついたブラックオーガは怒りのあまり再び咆哮した。
「グオオオオオオオオオオオオオオ」
誰もが恐怖をするような咆哮だが、美羽は全く動じずに穏やかに言った。
「ごめんね。まさか牙が折れると思わなかったから。代わりにこれあげるね。牙の代わり」
美羽は大剣を地面から抜く。
美羽の身長よりはるかに高い剣だ。
それをブラックオーガに向かって投げると、地面に刺さる。
「もう終わりにしたいから、それで決着をつけようよ。私もこれで戦う」
そういうと、美羽は左目の下に張り付いている桜の花びらのアクセサリーをぺろっと剥がす。
その瞬間、それは刀に変わった。
今回は鞘に入っている。
「神刀コザクラ。これがこの刀の名前だよ。そして、お前を屠る名前でもある」
「グオオオオオオ」
ブラックオーガはその意味がわかったのか、地面に刺さった大剣を抜いた。
美羽はそれを見て、コザクラを左の腰につけて、足を前後に開き腰をかがめる。
ブラックオーガは右手に大剣をぶら下げて睨みつけてくる。
張り詰めた空気が場を支配する。
美羽が集中すると、刀から桜の花びらが舞い始めた。
やがてどちらともなく動き出した。
ブラックオーガはその巨体からは信じられないほどのスピードで突進した。
対して美羽はブラックオーガを凌駕するスピードで踏み込んだ。
「グオオオオオオオオ」
オーガが吠える。
「ヤーーーーー」
美羽も気合いを発した。
一人と一体が一瞬交錯する。
ブラックオーガの剣は地面を激しく砕き、美羽はブラックオーガの巨体を飛び越えてから着地をした。
ブラックオーガは動かず、美羽は刀を一回振った。すると、桜の花びらが舞うと共に血の線が地面についた。
そして、チンと音を立てて納刀をする。
それと同時にブラックオーガの首が地面に落ちて、残った体からは血飛沫が上がった。
美羽が居合でブラックオーガの首を落としたのだった。
「ふう」
一息つくと、美羽の翼はなくなり後には桜色の羽が舞うだけになった。
「居合は実践で使ったの初めてだけど、うまくいったな。うふふ、かっこよかったかな、私」
「「「「「かっこよかったです」」」」」
大勢の声がしたので、美羽が声の方に振り向くと、ロイド達が笑顔で迫ってきていた。
全員、下半身がない体を引きずって。
たくさんのゾンビに囲まれるアレである。
「いやーーーーーー! 来ないでーーーーーー!」
美羽の絶叫がこだました。
その後、泣きながら、できるだけ見ないように女神の手で、下半身を拾って、治癒でつなげてあげた美羽だった。
「もう、いやーーーーーーー!」
ズズーン……。
投げ飛ばしたブラックオーガが戻ってきた。
岩にぶつかったダメージはあまりないようだ。
美羽を視認したブラックオーガは咆哮した。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
鼓膜が破れそうな大きさで、聞くものの心の底から恐怖心を煽るような声だ。
当然、美羽も、
(怖いよぉ……、漏らしそうだよぉ)
ガタガタ震えていた。
ブラックオーガは自分の咆哮が効いていると理解していた。
美羽を臆病な獲物だと認定したのだ。
ブラックオーガの嗜虐心が働いた。
怯える美羽に唸りながら憤怒の表情でゆっくり近づく。
美羽は、その表情が心の底から恐ろしかった。
恐ろしい父親の賢治の顔と重なって見えてしまったのだ。
頭の中が真っ白になり、やろうとしていたこと全てを忘れてしまった。
美羽の前に行き、怖がる美羽を見て舌なめずりをする。
そして、大剣を地面に突き刺す。
ドカッ!
ビクッ。
そんな行為一つとっても美羽は怯えてしまう。
オーガはますます喜んで、美羽に近づく。
美羽の顔に自分の顔を近づける。
ニターと笑う。
「ひっ」
美羽が涙を流して、ガタガタ震える。
次の瞬間、ブラックオーガが美羽に平手打ちをした。
バシーン!
美羽は3メートルほど吹き飛び、地面に倒れた。
顔は鼻血が流れ、口からも血が流れ、目は虚になっている。
「グギギ」
オーガが笑う。
少しやりすぎたと思った。
せっかくのおもちゃが手に入ったのだ。大切に遊び尽くしてから壊して、食べなければもったいない。
そう思い、これからこのおもちゃで遊ぶことに決めた。
もう、ハイオーガ達は人間を殺し尽くしているだろう。
これを持って帰れば、羨ましい目で見られるだろう。
だから、ここで遊び尽くそう。そして最後は食べてしまおう。
この柔らかい体を生きたまま足からバリバリ食べるのはさぞかし美味いだろう。
まだ元気だったら悲鳴も聞ける。悲鳴を聞くと旨さが増すのだ。
「グゲゲ」
そして、美羽の右手を掴み持ち上げる。
グッタリしていた。
死んでしまったかと思って、試しに左腕の前腕部を掴み握ってみる。
バキン
「キャーー」
容易く折れると同時に、あまりの痛みに美羽は悲鳴をあげた。
まだ生きているとわかって、ブラックオーガはまたニヤリと笑う。
「やめろ! 御使い様に手を出すな!」
さっき、真っ二つに切った人間が何か言っている。
ブラックオーガにはまだ生きている人間が不思議だった。
オーガなら、これくらいでも生きているが、人間がここまで生きているのは知らない。
そういえば、さっきの戦場でも生きている人間は多かった。だが、そんなことそこまで深く考えなくてもいい。
トドメを刺そうか迷ったオーガだったが、うっかりこの子供まで殺してしまったら、もったいないから、殺すのをやめた。
美羽はブラックオーガの右手に掴まれたまま上に持ち上げられる。
今度は何をするつもりなのか、予測がつかない。
意識が朦朧としてしまっていた。
その意識の中で、美羽はこのままではまずいと思っている。
恐怖は相変わらずだが、まだ何かできるはずだ。
それが何かわからない。
意識が暗い淵に沈もうとしているのがわかる。
しかし、意識をなくしてしまうのはまずい。
(そう……だ、きんちゃんに……助けてって)
そこまで思った時に、先ほどのきんちゃんとの会話を思い出した。
『大丈夫でしょうか? 美羽様、ブラックオーガはかなり怖いですよ』
『うん、この間神界に行った時に、フィーナちゃんに伝えられた神気の使い方があったの。
試してないけど、それを使えばトラウマもなんとかなるはず』
(あ……そうだ。 フィーナちゃんに伝えられた、あれなら)
ブラックオーガは考えた。
遊びといっても何をするか。
すでにぐったりしているから、ただ、怖がらそうとしてもあまり怖がらないかもしれない。
じゃあ、足の先でも食ってやろうか。
そうすれば、悲鳴を上げて楽しくなる。
美味しいし、楽しい。
結局食うのだから、遊びで食っても一緒だ。
ブラックオーガはそれがいいアイデアだと思った。
早速、足の先を食おうと美羽を持ち上げる。
そして、左足の先を口に半分ほど入れて、噛み切ろうとしたその時、美羽の体から桜色の光が溢れ出してきた。
『御使いモード』
その声が聞こえた瞬間に美羽の身体が桜色の光に眩いほどに輝く。
至近距離から光を見てしまったオーガは美羽を投げ捨て、目を覆い悲鳴をあげる。
「グァァァァ」
放り出された美羽は、空中の途中まで死に体だったが、空中にいるうちにボロボロだった体が回復し、うまく着地する。
着地した美羽には大きな桜色の翼が生えていた。
そして、翼から桜色の羽が舞う。
髪は桜色に輝き、波打っている。
美しい桜色の瞳は自信に満ちていた。
その姿はまさに物語の天使そのものだった。
それを見た、いまだに体が半分しかないロイドは感動の声をあげる。
「おお、なんと美しいんだ」
美羽が、オーガに話す。
「これはね、怖がりで何もできなくなっちゃう私のために、フィーナちゃんが作ってくれた神気の使い方なの。
この御使いモードでいるときは……ブラックオーガ。お前でも怖くない」
視力が回復した目を開けたブラックオーガは、美羽が先ほどまで震えて泣いていたくせに、今は堂々としているのが許せなかった。
おもちゃはおもちゃらしくしていればいいのだ。
ブラックオーガは憤怒の表情になった。
「グオオオオオオオオオオ」
咆哮をしたが、美羽は何も動じていない。
生意気にも動じない美羽に業を煮やしたブラックオーガが大きな右の拳で殴りかかった。
その拳が美羽の顔面を砕こうとした瞬間、美羽は左手でその拳を止める。
美羽の足元の地面が砕けるが、美羽には全く効いていない。
「神気結界をはれば、お前の拳なんて防げるけど、散々好き勝手にやってくれたお前の力を真っ向から否定してあげる」
美羽がブラックオーガの懐に潜り込み、右拳を腹に減り込ませる。
ブラックオーガはたまらずに両膝をついて悶絶する。
「力で負けたことはなかったかな? でも、私は身体強化魔法を徹底的に磨いたし、もともと魔力は相当強かったから、いくらでも強化できるの。お前の力なんか、あってないようなものね」
正確な意味はわからなかったが、自分の力をバカにされたのはわかる。
ブラックオーガのプライドはズタズタになった。
「グオオオオオオオオオオオ」
「だから、咆哮は効かないって……?」
ブラックオーガは咆哮で美羽の油断を誘えたと思ったのか、後ろに向かって走った。
その先にあるのは、先ほど地面に突き刺した大剣だった。
あと少しで、大剣を手にできるとオーガがニヤついた瞬間、美羽が目の前の空中にいた。
美羽は微笑んで、
「そんな簡単に武器を取らせると思う?」
と言って、 ブラックオーガの左頬に右回し蹴りを当てた。
「グオッ」
ブラックオーガはすごい勢いで半回転して、顔から地面に突っ込んだ。
起き上がると、ブラックオーガの上顎から生えている左の牙が折れていた。
それに気がついたブラックオーガは怒りのあまり再び咆哮した。
「グオオオオオオオオオオオオオオ」
誰もが恐怖をするような咆哮だが、美羽は全く動じずに穏やかに言った。
「ごめんね。まさか牙が折れると思わなかったから。代わりにこれあげるね。牙の代わり」
美羽は大剣を地面から抜く。
美羽の身長よりはるかに高い剣だ。
それをブラックオーガに向かって投げると、地面に刺さる。
「もう終わりにしたいから、それで決着をつけようよ。私もこれで戦う」
そういうと、美羽は左目の下に張り付いている桜の花びらのアクセサリーをぺろっと剥がす。
その瞬間、それは刀に変わった。
今回は鞘に入っている。
「神刀コザクラ。これがこの刀の名前だよ。そして、お前を屠る名前でもある」
「グオオオオオオ」
ブラックオーガはその意味がわかったのか、地面に刺さった大剣を抜いた。
美羽はそれを見て、コザクラを左の腰につけて、足を前後に開き腰をかがめる。
ブラックオーガは右手に大剣をぶら下げて睨みつけてくる。
張り詰めた空気が場を支配する。
美羽が集中すると、刀から桜の花びらが舞い始めた。
やがてどちらともなく動き出した。
ブラックオーガはその巨体からは信じられないほどのスピードで突進した。
対して美羽はブラックオーガを凌駕するスピードで踏み込んだ。
「グオオオオオオオオ」
オーガが吠える。
「ヤーーーーー」
美羽も気合いを発した。
一人と一体が一瞬交錯する。
ブラックオーガの剣は地面を激しく砕き、美羽はブラックオーガの巨体を飛び越えてから着地をした。
ブラックオーガは動かず、美羽は刀を一回振った。すると、桜の花びらが舞うと共に血の線が地面についた。
そして、チンと音を立てて納刀をする。
それと同時にブラックオーガの首が地面に落ちて、残った体からは血飛沫が上がった。
美羽が居合でブラックオーガの首を落としたのだった。
「ふう」
一息つくと、美羽の翼はなくなり後には桜色の羽が舞うだけになった。
「居合は実践で使ったの初めてだけど、うまくいったな。うふふ、かっこよかったかな、私」
「「「「「かっこよかったです」」」」」
大勢の声がしたので、美羽が声の方に振り向くと、ロイド達が笑顔で迫ってきていた。
全員、下半身がない体を引きずって。
たくさんのゾンビに囲まれるアレである。
「いやーーーーーー! 来ないでーーーーーー!」
美羽の絶叫がこだました。
その後、泣きながら、できるだけ見ないように女神の手で、下半身を拾って、治癒でつなげてあげた美羽だった。
「もう、いやーーーーーーー!」
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