でっっかいイモムシかわいいね!!

ぺーる

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メシ問題、繰り越し

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 大学裏手の茂みまで、そそくさとエノキの枝を取りに行った。幸いこの木の世話はうちの変な教授がやってる。ダメ元で電話すれば快く許可が出た。確かこの時期ならまだ新芽もあるはずだ。目を凝らして探してみれば、薄緑の柔らかな若葉がちらほら見える。ナイロン袋に数枝切って詰め込む。枝を痛めないように丁寧に扱いながら、ふとポケットの中でスマホが震えた。

「はーい、花畑です」
『イモムシくんの写真みましたよぉ、花畑くんの予想通り、オオムラサキで間違いないかと。これ以上ないくらいオオムラサキです』
「ですよね、ありがとうございます。エノキは殺さん程度に採るんで」
『一本くらい殺してもいいですよぉ、イモムシくんのためです。それはそうと、本当に会わせてくれるんですね? ボク遠慮とかしませんよ、行きますからねぇ』
「はいはい、来てください。お待ちしてマース」
『行きますからね!』


 切る直前まで念を押された。よほど気になるらしい。大学の教授が自宅に虫見学って、妙な状況になるな。まああの先生なら気にせず面白がるだろうが。なんならそのまま、引き取っていくかも。

 帰宅して、台所に放っておいた段ボール箱のふちをそっとのぞき込んだ。ダンボールに新聞紙を敷いた仮住まいだ。もに、と身体をくねらせて、まだ元気はなさそうだが、俺が戻ったのに気づいたのか、頭をもそりと持ち上げてきた。黒い目でじっと見られる……はは、目が合うと妙に可愛いな。腹は減ってんだろ、さっさとメシだ。

「ほれ、採れたてだ。食えるか?」

 袋からエノキの葉先を選んで、慎重に一枝差し入れる。ぴく、と触覚が反応した。若葉の先を幼虫の口元へ。もにっと頭を寄せ、くんくん嗅いでるような仕草。それから腹脚をうねらせて、枝を抱え込んだ。かぷ。ちいさな口が葉の縁を挟む。しゃり、しゃり。食った。食ってる。控えめだが確かに音がしてる。

「……よしよし、いい子だな」

 つい、声に出てしまった。誰に聞かせるわけでもないけど、こうして生き物が飯を食ってくれるのは、ほっとする。へちょへちょだったボディに、ほんの少し張りが戻ってきた気がする。やっぱ腹が減ってただけか。なら、とにかく食わせて、回復させねぇとな。ちら、と俺を見て、また葉へかぷり。食欲はそこそこありそうだ。水ももう少し用意しておこう。皿に浅く張っていたのを、少し替えて新しいのにする。手早く世話をして、そっと箱の横に腰を下ろした。思えば、俺も朝からろくに飯食ってなかったな。買い出し、だる。

 段ボール箱の中は、即席で新聞紙を敷いただけ。とりあえずこれで糞の処理はなんとかなるだろう。湿度も高すぎず乾きすぎず、温度も悪くないはず。専門設備がないのは仕方ねぇが、できる範囲でやるしかない。今日は一晩、ここで様子を見るか。エノキの葉は数日分くらい確保してあるが、追加がいるならまた取りに行こう。水に挿してりゃそうそう萎びることはねぇ。

「……なあ、おまえ。まさか、ここで羽化まで面倒見る羽目になるんじゃねぇだろうな」

 もに、とイモムシがまた枝を引き寄せた。その様子を見ながら、ぐっと額を押さえる。いや、仮だ。仮だからな。情を移すな俺。そう言い聞かせつつ、スマホで飼育設備を確認してる俺は手遅れかもしれん。食う様子を見てるだけで、ちょっと安心してる自分がいる。だめだこりゃ、もうしっかり保護者気取りじゃねぇか。
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