聖女は断罪する

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45. 聖女って

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 王宮の端の小屋の扉をノックするとテオから返事があった。

「はいるよ」

ヴィヴィアンヌが入ると、テオがベッドに寝そべって、本を読んでいる。横の小テーブルには食料と本の続きが置かれている。親石の聖別からは少し肉が着いているようだった。

「……少し太れたかい?」

「少しな。……なかなか戻らないな、今回」

「あそこまで急激にやらなくてもよかったんじゃ?」

「親石が魔力引っ張ってった感じだったよ。……陛下とっちめないと。あいつ真面目に石に力注いでなかったみたいだ」

テオは本から目を離さない。

「もう親石にとっちめられてるっぽいよ。親石の精霊が夢で毎日愚痴ってるって。『接続が切れる所だったぞ』とか。エルシーが愚痴られるって」

テオはくすくす笑っている。

「親石の精霊とつながってられているって事はまだ陛下はこの国の王、って事だな」

テオはおもむろに起き上がってベッドに座る。

「王と親石との接続の話を親石自身からされてるのは俺とヴィヴィアンヌ、貴方だけだよね」

ヴィヴィアンヌはすとん、とその部屋の粗末な椅子に座る。

「もう一人、エミール・マリュスっていう古い魔法使い、……私の幼馴染なんだけどね、その男が知ってる」

テオが目を剥く。

「え、ちょっとまって。エミール・マリュスってあのマリュス?『光と闇の結合』とか『魔法の根源』とかの?」

「そそ。それの編集者が書類保管庫のウィルだよ。全部王立出版からでてるだろ?」

「会わせて!」

テオが子供の頃と変わらない顔でヴィヴィアンヌに頼んできた。

「ふむ。その体型ならまだ、レイラに会わせられるし。ついでに面会しておいき」

「そうだね。一応、俺もレイラの後ろ盾だしね。……成人したら伯爵代行あいつ、全部失うと思うといい気味だ」

「それはおいおいね。……土の聖女はどんな感じ?」

「順調、すくすく育って今王弟の騎士に混じって鍛錬してる。どの騎士よりも背が高くて体格もいいよ、メルヴィン」

「……男の子に「聖女』っていうの違和感あるねぇ」

「男の方が出現率低いとは言えな」

テオも同意している。

「今回みたいに複数の候補が同時にでるのも珍しいけどな」

「それなんだけど……テオはリリスをどう見立てる?」

「見立てるとは?」

「聖女としてはどうかってね」

テオは組んだ足に肘を乗せ、己が拳の上に顎を乗せる。

「副教皇が俺にリリスをほとんど見せないようにしてる。ただ強い弱いは別としてあの子が癒しの魔法を使えるのはほんと。水の魔力との親和性が高いからポーションづくり手伝って欲しいんだけど、『そういうのは下々の子がやることです』だってさ。まるで貴族のお嬢様だよ、言いぐさが」

テオは軽く肩を竦めた。

「こういう態度だから教会の女子とも仲良くできなくてなぁ」

テオの言葉には慈しみの気持ちが籠っている。なんだかんだと言っても、副教皇の庇護の下にある子供でもテオにとっては『教会の子供』なのである。

「心配かい?」

「そうだね。もっと周りを見て欲しいのはあるな」


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