79 / 138
78. エミール、締められる
しおりを挟む
レイラの家での合宿も半分は過ぎた。レイラやロラン、ペール、アルフォンス、クリストフはエミールに魅了術を習っていた。またその合間でエミールは魅了石を使った魔道具を作成していた。
「これは使用者個人の魔力で起動するように出来てるんだ」
少年たちとアルフォンス、そしてジークはそんな作業も感心して見ている。テオもその中に入りたがっているがちょくちょく宮廷師団とこの屋敷をいったりきたりしている。時にはエミールもテオに引きずって行かれることもある。
エミールはヴィヴィアンヌにかなり絞られたらしい。またお忍びで隣国の魔術師がエミールの元を訪れて、これもかなり絞られたようだった。
「ロッドバルトまで出さなくても」
エミールは少し涙目だ。
「お前のあの魔草でうちの国もこまってんだよ」
半分白で半分黒という左右で髪の色の違う中年の男がエミールを睨む。
「うちの国は中毒者が出てんだよ。……最初は医療用で輸入していた医者がいたらっしい。だがな。ある草と一緒に刻んでタバコとして吸う、なんて事が流行ってな」
隣の国ではあの先が紫の魔草を麻薬と一緒に吸う事が早って中毒者を出しているらしい。
「あれの供給を止めたら死ぬぞ」
「知ってる。それで王族が数人、な」
ロッドバルドは難しい顔になっている。このエミールが見つけたのが悪いと言えば悪い。ただ研究して見つけてそれを悪用していたのはフィールズ老なのだ。
「供給元はわかったが一気に引き抜けない相手なのは分かった。ってかあの野郎しぶといな。ヴィヴィアンヌを狙ってるのかね、まだ?」
ヴィヴィアンヌは急に自分の名前が出てきて驚いている。
「は?」
「あいつはガキの頃からヴィヴとやりたくてしょうがないんだよ。……一時期王都で流行ったヴィヴがモデルだって騒がれた官能小説、あれの作者があいつだよ」
「はぁ?」
確かにそういう小説が貴族に出回って迷惑を被った事はある。12歳になった自分の息子の友人との愛欲の日々、最初は息子の友人が責められる役で息子の友人が十代後半からは女主人公が息子の友人にメロメロになって、息子の友人が結婚してからは不倫の愛を貫くという筋書きをこれでもかとありとあらゆる性愛を絡めて書き綴った長編かつ偏執狂的な小説だった。
「あの小説はヴィヴを自由にしたいっていうフィールズの坊やの欲望の結晶だよ」
ヴィヴィアンヌは苦笑いをしている。
「フィールズの坊や、って言われると今ここにいるペールを連想してむずむずしちゃうね」
「お、どれがフィールズ家の?」
「白金の髪に青い瞳がロラン。ライン公爵の息子だ。金の髪にエメラルドの瞳が」
「ああ、この国の王子だろ。あの子は母親と何度か我が国に来てるよ」
ロッドバルトがいう。
「じゃあの麦わら色の髪に水色の瞳か、現役のフィールズの坊主は」
「そそ」
エミールが言う。
「悪い子じゃないぞ。高い水属性の魔力を持っている。今は土属性も使えるようになってるから3属性の魔術の使い手だな。水、氷、土な」
幼馴染で元同僚の3人は打合せを済ませる。隣国にエドガーが逃げないようにこちらからも魔力障壁をはるが、ロッドバルトの国でも一応防御はしておいて欲しい事等をヴィヴィアンヌは告げる。
「ロッドの得意な土魔法で高い障壁を作っておいて欲しい。それとあの石碑の場所に近い国境辺りに一応精鋭を秘密裡に待機させておいて欲しい」
「俺が出張るよ」
ロッドがヴィヴィアンヌが一番望んだ答えを返してくれる。
「うちの国王には漏らしておくけど、近衛とか騎士団には内緒にする。来週の今日、この時間にまた来るからそれまでに『現状』の吸精鬼の情報をそれまでに欲しい」
「了解した」
エミールはロッドの言葉にうなずいた。
「これは使用者個人の魔力で起動するように出来てるんだ」
少年たちとアルフォンス、そしてジークはそんな作業も感心して見ている。テオもその中に入りたがっているがちょくちょく宮廷師団とこの屋敷をいったりきたりしている。時にはエミールもテオに引きずって行かれることもある。
エミールはヴィヴィアンヌにかなり絞られたらしい。またお忍びで隣国の魔術師がエミールの元を訪れて、これもかなり絞られたようだった。
「ロッドバルトまで出さなくても」
エミールは少し涙目だ。
「お前のあの魔草でうちの国もこまってんだよ」
半分白で半分黒という左右で髪の色の違う中年の男がエミールを睨む。
「うちの国は中毒者が出てんだよ。……最初は医療用で輸入していた医者がいたらっしい。だがな。ある草と一緒に刻んでタバコとして吸う、なんて事が流行ってな」
隣の国ではあの先が紫の魔草を麻薬と一緒に吸う事が早って中毒者を出しているらしい。
「あれの供給を止めたら死ぬぞ」
「知ってる。それで王族が数人、な」
ロッドバルドは難しい顔になっている。このエミールが見つけたのが悪いと言えば悪い。ただ研究して見つけてそれを悪用していたのはフィールズ老なのだ。
「供給元はわかったが一気に引き抜けない相手なのは分かった。ってかあの野郎しぶといな。ヴィヴィアンヌを狙ってるのかね、まだ?」
ヴィヴィアンヌは急に自分の名前が出てきて驚いている。
「は?」
「あいつはガキの頃からヴィヴとやりたくてしょうがないんだよ。……一時期王都で流行ったヴィヴがモデルだって騒がれた官能小説、あれの作者があいつだよ」
「はぁ?」
確かにそういう小説が貴族に出回って迷惑を被った事はある。12歳になった自分の息子の友人との愛欲の日々、最初は息子の友人が責められる役で息子の友人が十代後半からは女主人公が息子の友人にメロメロになって、息子の友人が結婚してからは不倫の愛を貫くという筋書きをこれでもかとありとあらゆる性愛を絡めて書き綴った長編かつ偏執狂的な小説だった。
「あの小説はヴィヴを自由にしたいっていうフィールズの坊やの欲望の結晶だよ」
ヴィヴィアンヌは苦笑いをしている。
「フィールズの坊や、って言われると今ここにいるペールを連想してむずむずしちゃうね」
「お、どれがフィールズ家の?」
「白金の髪に青い瞳がロラン。ライン公爵の息子だ。金の髪にエメラルドの瞳が」
「ああ、この国の王子だろ。あの子は母親と何度か我が国に来てるよ」
ロッドバルトがいう。
「じゃあの麦わら色の髪に水色の瞳か、現役のフィールズの坊主は」
「そそ」
エミールが言う。
「悪い子じゃないぞ。高い水属性の魔力を持っている。今は土属性も使えるようになってるから3属性の魔術の使い手だな。水、氷、土な」
幼馴染で元同僚の3人は打合せを済ませる。隣国にエドガーが逃げないようにこちらからも魔力障壁をはるが、ロッドバルトの国でも一応防御はしておいて欲しい事等をヴィヴィアンヌは告げる。
「ロッドの得意な土魔法で高い障壁を作っておいて欲しい。それとあの石碑の場所に近い国境辺りに一応精鋭を秘密裡に待機させておいて欲しい」
「俺が出張るよ」
ロッドがヴィヴィアンヌが一番望んだ答えを返してくれる。
「うちの国王には漏らしておくけど、近衛とか騎士団には内緒にする。来週の今日、この時間にまた来るからそれまでに『現状』の吸精鬼の情報をそれまでに欲しい」
「了解した」
エミールはロッドの言葉にうなずいた。
2
あなたにおすすめの小説
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる