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金と銀の玉の章

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 ランディとヴァイキー、エヴァがデヴィッドに連れられて帰ってきた。三人が帰ってきたのでレッドが代わりに北へ向かっうことになった。

「レッド、ちゃんと防寒しとけよ」

ランディが言う。

「こっちの冬と違って底冷えする。一番舐めてたの、靴」

ランディが足元を指す。かなりごつい冬仕様の靴に変わっている。

「最初、一般的な、今レッドが吐いてるような靴だったんだけど。もうね、靴底から冷えるの。足の裏から冷たくなる」

エヴァが付け加える。

「宗介が持たせてくれたマジックボックスの中に沢山入ってた豚汁と熱いお茶、すごく助かった」

「そうか、よかったな。レッドは明日出るんだよな?豚汁とお茶作って箱に入れとくわ」

と宗介が早速出汁を取り始める。レッドが素直に疑問を口にする。

「味噌汁とは違うのか?豚汁って」

アキラが説明する。

「豚の脂でより冷めにくいんだと思う。あと、脂とか油って体温調節に利用するらしいし。腹の中からあったまると寒さもましになるし」

レッドは真面目な顔で聞いている。

「あとな、手袋。絶対多少高くても魔獣の革で出来たのを買った上で手首毛皮のリストバンドつけたほうがいい」

寒さに弱いランディはレッドの事を心配して多少大げさにアドバイスしている。実際ランディの恰好は手首に毛皮のリストバンドをつけていた。部屋の中で熱くなってきたのか上に着ていた外套を脱ぐと裏には薄くてしなやかな毛皮がついている。

「これ何の毛皮?」

「魔豹って現地では呼んでたな」

ランディがエドガーに答える。

「こっちでは見たことないや」

エドガーはその毛皮を撫でている。レッドはその毛皮を見て感心している。

「北にはいるんだな。デアードの北の山の森とか山あたりにいるんだよな。あっちの北はディアーヌ王国の北以上に厳しいぞ。国境封鎖の前に名何度かデアードに行ったことあったからな」

宗介は話を聞きながら苦笑する。

「で、なんでみんな台所にいるのん」

アキラは

「腹減ったから」

といい、ランディ達も

「俺らも少しつまむもん無いかと思って」

と言う。

「っていうか、俺、パン焼きたくて」

とアキラが黒パンを焼き始め、宗介は台所のアイテムボックスから芋とベーコンと玉ねぎを取り出した。

「まっときや。芋炒めるわ」

とジャーマンポテトを作り始めた。

「みんな、部屋帰って楽な恰好になっておいで。その間に作っとくから」

と宗介に言われランディ達は部屋に戻った。エドガーはちゃっかりおやつにあやかろうとアキラの横に座っている。

「エドガーも食べる?」

アキラに言われてエドガーが嬉しそうに頷いた。エドガーとであった頃はもっとアキラに近い少年らしい感じであったが今はもう青年、という感じになっている。

「なぁ、…空いてる小屋って使っていいかな」

エドガーが遠慮がちに言う。

「いいよ。いくらでも」

「…その、付き合ってる女の子がいてさ」

アキラも宗介も驚いた。

「いつから」

「まだ三か月。…父親にもまだ紹介してないから…もうちょっと先の話なんだけど、さ」

とぼそぼそ赤い顔をして話す。ユリアーナの知人らしい。

「まだユリアーナには話してなくて」

宗介が容赦なく告げる。

「あー、それは彼女の方からユリアーナちゃんに話してると思うで」
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