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緊張と緩和
逃げてどうすんだよ、と思った。
思ったのに、気がついたら軽々と担がれ屋根の上を高速移動していた。
「えっ、ちょ、まっ!」
「口閉じてないと舌噛むぞー」
「……………!」
そう言われてしまえば口を閉じるしかない。しかし、細身に見えていたのに凄い力である。こっちの世界に来て痩せたとはいえ成人男性を片手で担ぎ上げるなんてそうそう出来ることじゃない。いったいどんな鍛え方をしているのだろうか…
「この先に根城にしてる家がある」
とりあえずそこに行くぞ、とヴィリは言った。勿論暁斗に、拒否権はなかった。
家に着くなり風呂場に押し込まれる。暗に臭いと言われた気分である。
(まあ、しょうがないか)
何処から見ていたかなんて知らないが、確かに臭うだろう。浄化をかける間もなかったから口や髪にあの男の精子がついたままの状態だった。そりゃ不快に思うのも当然だろう。
「一応、浄化もかけておくか」
スキルで綺麗になるとはいっても、やっぱりシャワーを浴びればスッキリするし風呂に入れば疲れもとれる。
暁斗は半ばヤケクソな気持ちでたっぷりと長風呂をすることにした。どうせ今更慌てたところで娼館の門限には間に合わない。ここまできたら、なるようにしかならないだろう。
「ほら」
「ん」
ありがと、と差し出された水差しを受け取る。
風呂から出るとヴィリが頭を乾かしてくれた。ふわふわのタオルで頭を拭かれ、長く伸びた襟足に滴る水滴を丹念に拭ってくれる。
なんだか手慣れているなと思わなくもなかったが、なかなか気持ちが良かったのでされるがままにしておいた。こちらの世界に来てからというもの、誰かの世話をすることはあってもされるということはなかった。なので、まあ少しだけ、気が緩んだのは確かだった。
気が付いたら、うつらうつらと船を漕いでいた。短時間のうちに緊張と緩和を繰り返したせいかもしれない。暁斗は急激な睡魔に襲われ、ついにその場で眠り込んでしまった。
「………………なんて緊迫感の無い奴」
頭上でそんなあきれたようなヴィリの声を聞いた気がしたけれど、もうどうしても、目を開けることは出来なかった。
思ったのに、気がついたら軽々と担がれ屋根の上を高速移動していた。
「えっ、ちょ、まっ!」
「口閉じてないと舌噛むぞー」
「……………!」
そう言われてしまえば口を閉じるしかない。しかし、細身に見えていたのに凄い力である。こっちの世界に来て痩せたとはいえ成人男性を片手で担ぎ上げるなんてそうそう出来ることじゃない。いったいどんな鍛え方をしているのだろうか…
「この先に根城にしてる家がある」
とりあえずそこに行くぞ、とヴィリは言った。勿論暁斗に、拒否権はなかった。
家に着くなり風呂場に押し込まれる。暗に臭いと言われた気分である。
(まあ、しょうがないか)
何処から見ていたかなんて知らないが、確かに臭うだろう。浄化をかける間もなかったから口や髪にあの男の精子がついたままの状態だった。そりゃ不快に思うのも当然だろう。
「一応、浄化もかけておくか」
スキルで綺麗になるとはいっても、やっぱりシャワーを浴びればスッキリするし風呂に入れば疲れもとれる。
暁斗は半ばヤケクソな気持ちでたっぷりと長風呂をすることにした。どうせ今更慌てたところで娼館の門限には間に合わない。ここまできたら、なるようにしかならないだろう。
「ほら」
「ん」
ありがと、と差し出された水差しを受け取る。
風呂から出るとヴィリが頭を乾かしてくれた。ふわふわのタオルで頭を拭かれ、長く伸びた襟足に滴る水滴を丹念に拭ってくれる。
なんだか手慣れているなと思わなくもなかったが、なかなか気持ちが良かったのでされるがままにしておいた。こちらの世界に来てからというもの、誰かの世話をすることはあってもされるということはなかった。なので、まあ少しだけ、気が緩んだのは確かだった。
気が付いたら、うつらうつらと船を漕いでいた。短時間のうちに緊張と緩和を繰り返したせいかもしれない。暁斗は急激な睡魔に襲われ、ついにその場で眠り込んでしまった。
「………………なんて緊迫感の無い奴」
頭上でそんなあきれたようなヴィリの声を聞いた気がしたけれど、もうどうしても、目を開けることは出来なかった。
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