異世界で高級男娼になりました

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初恋の毒

「アンタにとって爵位はそんなに簡単に捨てられるもんなんですか?」
「それは違う。捨てるつもりはない」
「はい?」
「そもそも家督は妹が継いだ方がいいと考えている。現状領地経営はほぼ妹と父に任せきりだしな」
「それは…」

単に坊ちゃんが騎士団での任務に忙殺されているせいで、妹御が駆り出されているだけなのでは?…と思ったものの、ヴィリはひとまず口を挟まずアーデルベルトの言い分を聞くことにした。いちいち突っ込んでいては埒があかないと思ったからではない。あしからず。

「幸い妹には商才がある。民からの人望もあると聞いているし、たまにしか顔を見せない自分よりよほど当主の座にふさわしいのではないだろうか?」
「はー……そうきたか…」
「実際、領地はかなり潤っていると聞いている。俺が当主になっても騎士団にいる限り領地のことまで手が回らないのは目に見えている。ならばこのまま妹が主体となり侯爵家を支えていく方が──」
「いやいやちょっと待てって」

そもそも領地経営は一朝一夕でどうにかなるもんじゃないでしょ、とヴィリは溜息を吐く。あまりに飛躍した論理を展開するのでつい口を挟んでしまったじゃないか。ほんとにもう、とヴィリは頭を抱える。

「誰も坊ちゃんに領地のことまでやれだなんて言っていないでしょうよ。アンタに求められてるのは騎士団内での業績と実績だ。それがそのまま侯爵家ひいては領地の名声と有益性に繋がっていく」

そういうもんだろ?とヴィリは呆れた声を出す。適材適所という奴だ。アーデルベルトが騎士である限り、領地を治めるのはその親族、ないしは配偶者となるのが通例である。つまり、それが妹に家督を譲る理由にはなり得ない。


「………駄目だろうか」
「ダメだな、そんな理由で拒否してみろ。今度は泣かれるだけじゃすまないぞ」
「では、どうすればいいんだ」

俺は愛する人を見つけてしまったんだ、とアーデルベルトは言う。
それはそれは、とても、真剣な眼差しで。



「………男の愛人に寛容な奥方を見つけるしかないでしょうね」
「…………………」


そんな貴族の女がそうそういるとは思えないけどな、とは思いつつ
そもそも彼が、貴族の愛妾となることを良しとするだろうか?という疑問も残る。


(………もしかすると、コイツもそのことに気が付いているのかもしれないな)

だからこそ、孕ませるなんてぶっ飛んだ発想に至ったのだろう。
難儀だな、とヴィリは思う。
恋は人を狂わせるというが、それはこの誰もが見惚れる麗しい幼馴染にとっても、例外ではなかったようである。
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