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爆弾は投下された
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ミュゲはナルシッサとアザレアの三人で座っていた。
そのすぐわきには二人の弟、どうやらアーサーが年長の弟だったらしい。さらに 三つぐらい幼い少年が居心地悪そうに座っている。そして叔母だという女性。そして、壮年の細身の男性が、その少し離れた場所で立っている。たぶん弁護士だろうとジャックは見当をつける。
レイシック卿はそれから少し離れた場所に座っていた。
最初にレイシック卿が座っていたのだが、後から入室した全員がレイシック卿のすぐそばに座らなかった。
状況を考えると無理もない。もとはと言えば諸悪の根源だ。
しかしサンダース大佐を見る目は一様に冷たい。
これも状況を考えれば無理はない。
居心地悪いとジャックはため息をつく。
ナルシッサはこちらを冷たい目で見ている。
ぱっと見、ミュゲによく似た美少女だ。ただわずかにミュゲより華やかな印象を感じる。
そしてもっと居心地の悪い人物がいた。
ダンダルジャン卿はめったに顔を合わさないジャックが見てすら何となくやつれたような気がしていた。
サンダース大佐は結構ひょうひょうとしていた。
基本的に、不利な状況ほど燃えるという厄介な性質だった。
もし軍事作戦なら、不可能と言いたくなるような作戦にこそ燃え上るという部下に対してやさしくない上官だ。
この状況が自分に関係なくて本当によかったとジャックはしみじみ思っていた。
そして話し合いが始まった。
のっけからナルシッサは爆弾をたたき落してくれた。
今まで表ざたになっていたのは軍事関係者の女性だけだった。さらに、民間の浮気相手、ならびにサンダース大佐のミュゲに対する暴言など、証言者付きで証拠を叩きつけたのだ。
サンダース大佐は軽く眉をあげて見せたが、反応はそれだけだった。
そしてナルシッサをまじまじと見る。
そして大変人の悪い顔でにんまりと笑った。
サンダース大佐はようやく目の間に敵を見つけることが出来たのだ。
影から自分を狙っていた敵が眼前に現れた、それならば叩きつぶすのみだ。
そうしてナルシッサを見据えていた。
ミュゲは人形のように表情を変えずにいた。
弟達の用に敵意をあらわにすることもなく、今までどおり、凪いだ表情で、ナルシッサが叩きつけた証拠写真を見るともなく見ていた。
「それだけかな」
穏やかとすら言えそうな声音でサンダース大佐は言う。
「そもそも彼女との結婚は契約だ、まるで愛情をかけなければいけないようだな」
ナルシッサの表情はこわばる。そしてサンダース大佐はミュゲを見ていた。
人形のように滑らかな肌。いや完全に人形に見える。
味方が、本当に味方かそれを見極めるのも才能なのだよ。
サンダース大佐はそうナルシッサを嘲笑う。
彼には切り札がある。ラウールという切り札をいつ切るか。サンダース大佐はラウールを自分の切り札だと信じていた。
ダンダルジャン卿はさらに苦境に立たされ、苦虫をかみ殺している。
歴戦の勇士たる彼をここまで苦境に陥れた敵はいままで存在しなかった。
ここに彼の味方はいない。息子ですら味方ではない、完全に孤立無援の彼に、さらなる敵が姿を現した。
「婚姻を継続しがたい理由はこれ以上ありますか」
銀ぶち眼鏡を押し上げて、弁護士が、証拠書類をまとめている。
ミュゲの母方の顧問弁護士だという彼は、理路整然と話を進めている。
はっきり言って勝ち目はない。それでもあがこうとした彼に追い打ちがかかる。
「さらなる違法行為の証人を呼ぶことにします」
呼ばれたのは、見慣れた部下の息子だった。どこかこわばった顔をした彼は大きく息を吸い込むとひといきに言い切った。
「私は、そこの彼に、ミュゲさんを強姦するよう依頼を受けました」
一瞬の沈黙。そしてジャックはとっさに耳を押さえた。
そのすぐわきには二人の弟、どうやらアーサーが年長の弟だったらしい。さらに 三つぐらい幼い少年が居心地悪そうに座っている。そして叔母だという女性。そして、壮年の細身の男性が、その少し離れた場所で立っている。たぶん弁護士だろうとジャックは見当をつける。
レイシック卿はそれから少し離れた場所に座っていた。
最初にレイシック卿が座っていたのだが、後から入室した全員がレイシック卿のすぐそばに座らなかった。
状況を考えると無理もない。もとはと言えば諸悪の根源だ。
しかしサンダース大佐を見る目は一様に冷たい。
これも状況を考えれば無理はない。
居心地悪いとジャックはため息をつく。
ナルシッサはこちらを冷たい目で見ている。
ぱっと見、ミュゲによく似た美少女だ。ただわずかにミュゲより華やかな印象を感じる。
そしてもっと居心地の悪い人物がいた。
ダンダルジャン卿はめったに顔を合わさないジャックが見てすら何となくやつれたような気がしていた。
サンダース大佐は結構ひょうひょうとしていた。
基本的に、不利な状況ほど燃えるという厄介な性質だった。
もし軍事作戦なら、不可能と言いたくなるような作戦にこそ燃え上るという部下に対してやさしくない上官だ。
この状況が自分に関係なくて本当によかったとジャックはしみじみ思っていた。
そして話し合いが始まった。
のっけからナルシッサは爆弾をたたき落してくれた。
今まで表ざたになっていたのは軍事関係者の女性だけだった。さらに、民間の浮気相手、ならびにサンダース大佐のミュゲに対する暴言など、証言者付きで証拠を叩きつけたのだ。
サンダース大佐は軽く眉をあげて見せたが、反応はそれだけだった。
そしてナルシッサをまじまじと見る。
そして大変人の悪い顔でにんまりと笑った。
サンダース大佐はようやく目の間に敵を見つけることが出来たのだ。
影から自分を狙っていた敵が眼前に現れた、それならば叩きつぶすのみだ。
そうしてナルシッサを見据えていた。
ミュゲは人形のように表情を変えずにいた。
弟達の用に敵意をあらわにすることもなく、今までどおり、凪いだ表情で、ナルシッサが叩きつけた証拠写真を見るともなく見ていた。
「それだけかな」
穏やかとすら言えそうな声音でサンダース大佐は言う。
「そもそも彼女との結婚は契約だ、まるで愛情をかけなければいけないようだな」
ナルシッサの表情はこわばる。そしてサンダース大佐はミュゲを見ていた。
人形のように滑らかな肌。いや完全に人形に見える。
味方が、本当に味方かそれを見極めるのも才能なのだよ。
サンダース大佐はそうナルシッサを嘲笑う。
彼には切り札がある。ラウールという切り札をいつ切るか。サンダース大佐はラウールを自分の切り札だと信じていた。
ダンダルジャン卿はさらに苦境に立たされ、苦虫をかみ殺している。
歴戦の勇士たる彼をここまで苦境に陥れた敵はいままで存在しなかった。
ここに彼の味方はいない。息子ですら味方ではない、完全に孤立無援の彼に、さらなる敵が姿を現した。
「婚姻を継続しがたい理由はこれ以上ありますか」
銀ぶち眼鏡を押し上げて、弁護士が、証拠書類をまとめている。
ミュゲの母方の顧問弁護士だという彼は、理路整然と話を進めている。
はっきり言って勝ち目はない。それでもあがこうとした彼に追い打ちがかかる。
「さらなる違法行為の証人を呼ぶことにします」
呼ばれたのは、見慣れた部下の息子だった。どこかこわばった顔をした彼は大きく息を吸い込むとひといきに言い切った。
「私は、そこの彼に、ミュゲさんを強姦するよう依頼を受けました」
一瞬の沈黙。そしてジャックはとっさに耳を押さえた。
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