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いきなり方向性が変わって全員が付いていけなくなった。
いや、わかっている連中もいる。ミュゲとその弟達、そしてナルシッサとアザレアだ。
「もしかして、家族の離籍手続きのことか、しかし、その手続きをとるのは二十歳からのはずだ」
ダンダルジャン卿が何とか立ち直り、そう言い切った。
「いえ、可能です、なぜなら彼女は正式な結婚を行っている」
女性の場合、結婚可能年齢は十六歳から、そして、たとえ十六歳でも結婚さえすれば二十歳と同じ権限が与えられる。
弁護士はそう言い切った。
離籍とは文字通り、一切の縁を切ることだ。戸籍すら抜かれる。
「すでに裁判は終わっています、本人の有責により、こちらのミュゲを新たな家長に立てて、縁は切られています」
レイシック卿は納得できない顔で怒鳴った。
「私ほど、家族を愛している人間はいない、なのになぜ私の有責で離籍するのだ」
「愛している、ね、簡単にいえば、それ以外の何もしなかったからです」
弁護士は眼鏡をいじりながら書類を出した。
「貴方の有責、まず育児放棄」
「十年前、子供達の面倒をみる人間を用意しないまま長期出張に出られた。その結果子供達は重度の栄養失調に陥り末子マイケルは命にかかわる渋滞で緊急入院した、このことは病院側の資料にもあります」
「また、学費の滞納、食費を渡し忘れるなど数々の問題点、また、人を雇ったとしても、その人間が子供達に危害を加えていたこともある。貴方が最低限のチェックさえい行っていれば防げたことです」
そして一度書類を置いて弁護士は言う。
「学費の滞納は貧困家庭であれば、虐待とはみなされない、ですが貴方の平均年収は到底貧困とは遠いそのためこれも虐待に加えられました」
「裁判だと、いつそんなことを」
「無論、裁判手続きの書類は送りましたよ、家族のための重要書類だという封筒に入れてね、だが、それを無視して、裁判所に顔を出さなかった。裁判所の出頭命令を無視した場合それだけで敗訴が確定するんですよ」
「読まないわよねえ、元お父様、お仕事が切羽詰まっていると家族関連の書類は一番に削られるんですもの。だから学費の督促状や、アーサーが病気になった時にも連絡がつかなくて危うく手遅れになったりするのよ」
「あの時もそうだ、少しずつ弱って行くマイケルを見ているのがどんなに怖かったか、様子を見に来てくれた叔母様が病院に運んでくれなかったら、たぶん今マイケルはいなかった」
十年前なら、ミュゲは六歳で、だとすれば、下手すれば未必の故意で、子供たちを殺害しようと疑われてもおかしくはない。
「なんで逮捕されてないんだ?」
十分殺人未遂が疑われる状況だろう。
「権力でもみ消したんだよ、他の子供たちなら救ってもらえた、でもよりによってそいつが権力をもっていたから、だから何をやっても揉み消された、私達は耐えるだけだった」
ミュゲの声はずいぶんと低く感じられた、
「そう、あいつが私達に金をくれなくなって、割のいいバイトを求めていろんなことをしたよ、国家資格が取れたときは嬉しかった、これでおなかが空くことはないって、レントゲンで撮ったらハリス線が出てたんだよ」
一瞬ミュゲが泣くかと思った、だがミュゲは唇をかみしめてはっきりと前を向いた。
「だからありがたかったよダンダルジャン卿、この結婚話ほど嬉しかったことはない。だって、利用するだけ利用して捨てていい男との結婚だったから」
ミュゲはそしてサンダース大佐に向き直った、
「利用価値がなかったらあんた見たいなカスと結婚するわけないだろ馬鹿、もう利用価値がなくなったから捨てるそれだけだよ、ああ慰謝料はしっかりもらうから、あんた程度の男がこの私の踏み台になったんだ、ありがたく思えば」
一気にまくし立てられた言葉にサンダース大佐は声が出ないようだった。
ただ食い入るようにミュゲを見ていた。
いや、わかっている連中もいる。ミュゲとその弟達、そしてナルシッサとアザレアだ。
「もしかして、家族の離籍手続きのことか、しかし、その手続きをとるのは二十歳からのはずだ」
ダンダルジャン卿が何とか立ち直り、そう言い切った。
「いえ、可能です、なぜなら彼女は正式な結婚を行っている」
女性の場合、結婚可能年齢は十六歳から、そして、たとえ十六歳でも結婚さえすれば二十歳と同じ権限が与えられる。
弁護士はそう言い切った。
離籍とは文字通り、一切の縁を切ることだ。戸籍すら抜かれる。
「すでに裁判は終わっています、本人の有責により、こちらのミュゲを新たな家長に立てて、縁は切られています」
レイシック卿は納得できない顔で怒鳴った。
「私ほど、家族を愛している人間はいない、なのになぜ私の有責で離籍するのだ」
「愛している、ね、簡単にいえば、それ以外の何もしなかったからです」
弁護士は眼鏡をいじりながら書類を出した。
「貴方の有責、まず育児放棄」
「十年前、子供達の面倒をみる人間を用意しないまま長期出張に出られた。その結果子供達は重度の栄養失調に陥り末子マイケルは命にかかわる渋滞で緊急入院した、このことは病院側の資料にもあります」
「また、学費の滞納、食費を渡し忘れるなど数々の問題点、また、人を雇ったとしても、その人間が子供達に危害を加えていたこともある。貴方が最低限のチェックさえい行っていれば防げたことです」
そして一度書類を置いて弁護士は言う。
「学費の滞納は貧困家庭であれば、虐待とはみなされない、ですが貴方の平均年収は到底貧困とは遠いそのためこれも虐待に加えられました」
「裁判だと、いつそんなことを」
「無論、裁判手続きの書類は送りましたよ、家族のための重要書類だという封筒に入れてね、だが、それを無視して、裁判所に顔を出さなかった。裁判所の出頭命令を無視した場合それだけで敗訴が確定するんですよ」
「読まないわよねえ、元お父様、お仕事が切羽詰まっていると家族関連の書類は一番に削られるんですもの。だから学費の督促状や、アーサーが病気になった時にも連絡がつかなくて危うく手遅れになったりするのよ」
「あの時もそうだ、少しずつ弱って行くマイケルを見ているのがどんなに怖かったか、様子を見に来てくれた叔母様が病院に運んでくれなかったら、たぶん今マイケルはいなかった」
十年前なら、ミュゲは六歳で、だとすれば、下手すれば未必の故意で、子供たちを殺害しようと疑われてもおかしくはない。
「なんで逮捕されてないんだ?」
十分殺人未遂が疑われる状況だろう。
「権力でもみ消したんだよ、他の子供たちなら救ってもらえた、でもよりによってそいつが権力をもっていたから、だから何をやっても揉み消された、私達は耐えるだけだった」
ミュゲの声はずいぶんと低く感じられた、
「そう、あいつが私達に金をくれなくなって、割のいいバイトを求めていろんなことをしたよ、国家資格が取れたときは嬉しかった、これでおなかが空くことはないって、レントゲンで撮ったらハリス線が出てたんだよ」
一瞬ミュゲが泣くかと思った、だがミュゲは唇をかみしめてはっきりと前を向いた。
「だからありがたかったよダンダルジャン卿、この結婚話ほど嬉しかったことはない。だって、利用するだけ利用して捨てていい男との結婚だったから」
ミュゲはそしてサンダース大佐に向き直った、
「利用価値がなかったらあんた見たいなカスと結婚するわけないだろ馬鹿、もう利用価値がなくなったから捨てるそれだけだよ、ああ慰謝料はしっかりもらうから、あんた程度の男がこの私の踏み台になったんだ、ありがたく思えば」
一気にまくし立てられた言葉にサンダース大佐は声が出ないようだった。
ただ食い入るようにミュゲを見ていた。
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