3 / 30
赤い髪の貴公子
しおりを挟む
アンナは随分と立派な屋敷に連れてこられた。
竜に乗せてもらえる日が来るとは思っていなかった。
この屋敷で出立の準備を整えて、アンナは遠い街まで連れていかれるのだという。
家族は一袋の金であっさりアンナを売った。
それを恨む気持ちはない。過去の家族にこだわってアンナ自身今の家族を家族と思ったことがなかった。
そしてアンナを連れに来た赤毛の青年がアンナをずいぶんと豪勢な部屋に案内してくれた。
壁には細かい模様のついた壁紙が貼られ、椅子とテーブルの脚には何やら厳かな彫刻が施され、そしてアンナは晴れ着にでも使ったことのない上等な布が椅子の背もたれと座面に貼られている。
そして奥の部屋には寝室だと言われた。しかし貧乏性のアンナはその寝室を覗き込むのが恐ろしかった。
普通の二倍人生を生きているが、こんな豪勢な部屋は見たことがない。
「グエンダ?」
そう話しかけてくる。その白石の貴公子という肩書が見えそうな赤毛の青年をアンナはどこか胡散臭いと思っていた。
「アンナと呼んでください」
グエンダという呼びかけはずっと拒否していた。意地になっていたのだと思う。
「それはそれは、フロイライン」
その言葉はアンナの知る抑揚と少し違う。だがアンナの国の言葉だ。
「ああ、ドイツ語は苦手なんだ、こちらの言葉で会話しても構わないか?」
そういわれてこくこく頷いた。
「ウィルファ、とこちらでは呼ばれている、元はイギリス人で名前はエドワード、君は元ドイツ人だったようだな」
アンナは無言だった。
自分と同じような人間がほかにいるとは聞いたことがなく想像すらしたことがなかった。
からからに乾いた喉からようやく絞り出したのは情けないほどかすれた声だった。
「他に私のような人はいるの」
「ここは僕の別邸なんだ、本部は首都にある。そこに皆いるからその時紹介するよ」
みんなということは最低でも四五人入るということか。
「いったいどうして私を連れてきたの」
すでにほかの仲間がいるというならアンナまで連れてくる必要があっただろうか。
「それはあちらについてから教えるよ」
そしてウィルファ、もしくはエドワードは扉を閉めてアンナを豪勢な部屋に残して去ってしまった。
もう家に戻ることはできないだろう。家に戻ってもあの金華の袋を取り戻されると追い出されるのがおちだ。
アンナに何ができるのだろう。
かつての人生では母国語の読み書きくらいはできた。でもこの国の言葉で読み書きはしたことがない。
子どものころ神父様に習ったけれど、こちらの聖職者はそれほど勤勉ではないようだ。
アンナができるのはかつても今も簡単な家事ぐらいだ。
そうするとできそうなのは女中奉公ぐらいだが、女中候補をこんな豪勢な部屋に泊まらせるだろうか。
いくら考えても分からない。疲れたのでその辺の椅子に座るとものすごい勢いで体が沈んだ。
竜に乗せてもらえる日が来るとは思っていなかった。
この屋敷で出立の準備を整えて、アンナは遠い街まで連れていかれるのだという。
家族は一袋の金であっさりアンナを売った。
それを恨む気持ちはない。過去の家族にこだわってアンナ自身今の家族を家族と思ったことがなかった。
そしてアンナを連れに来た赤毛の青年がアンナをずいぶんと豪勢な部屋に案内してくれた。
壁には細かい模様のついた壁紙が貼られ、椅子とテーブルの脚には何やら厳かな彫刻が施され、そしてアンナは晴れ着にでも使ったことのない上等な布が椅子の背もたれと座面に貼られている。
そして奥の部屋には寝室だと言われた。しかし貧乏性のアンナはその寝室を覗き込むのが恐ろしかった。
普通の二倍人生を生きているが、こんな豪勢な部屋は見たことがない。
「グエンダ?」
そう話しかけてくる。その白石の貴公子という肩書が見えそうな赤毛の青年をアンナはどこか胡散臭いと思っていた。
「アンナと呼んでください」
グエンダという呼びかけはずっと拒否していた。意地になっていたのだと思う。
「それはそれは、フロイライン」
その言葉はアンナの知る抑揚と少し違う。だがアンナの国の言葉だ。
「ああ、ドイツ語は苦手なんだ、こちらの言葉で会話しても構わないか?」
そういわれてこくこく頷いた。
「ウィルファ、とこちらでは呼ばれている、元はイギリス人で名前はエドワード、君は元ドイツ人だったようだな」
アンナは無言だった。
自分と同じような人間がほかにいるとは聞いたことがなく想像すらしたことがなかった。
からからに乾いた喉からようやく絞り出したのは情けないほどかすれた声だった。
「他に私のような人はいるの」
「ここは僕の別邸なんだ、本部は首都にある。そこに皆いるからその時紹介するよ」
みんなということは最低でも四五人入るということか。
「いったいどうして私を連れてきたの」
すでにほかの仲間がいるというならアンナまで連れてくる必要があっただろうか。
「それはあちらについてから教えるよ」
そしてウィルファ、もしくはエドワードは扉を閉めてアンナを豪勢な部屋に残して去ってしまった。
もう家に戻ることはできないだろう。家に戻ってもあの金華の袋を取り戻されると追い出されるのがおちだ。
アンナに何ができるのだろう。
かつての人生では母国語の読み書きくらいはできた。でもこの国の言葉で読み書きはしたことがない。
子どものころ神父様に習ったけれど、こちらの聖職者はそれほど勤勉ではないようだ。
アンナができるのはかつても今も簡単な家事ぐらいだ。
そうするとできそうなのは女中奉公ぐらいだが、女中候補をこんな豪勢な部屋に泊まらせるだろうか。
いくら考えても分からない。疲れたのでその辺の椅子に座るとものすごい勢いで体が沈んだ。
7
あなたにおすすめの小説
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる