異世界に鉄道を引こう

karon

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アンナの試練

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「僕が企画したのは鉄道計画が発動した後の展開だった」
 エドワードはそう言って椅子の上で足を組んだ。
 アンナとゴロウアキマサは長椅子に並んで座っている。
「まず、人口の移動を最小限にしなければならない。都市部に人が集中するのはいろいろと問題がある」
「まあ、そうなるわ、田舎から都会に出るのは一苦労だからくすぶってるやつらは田舎にとどまっているんだ、座ってるだけで田舎から都会に出られるなら多少金がかかってもじゃんじゃん人が流れるだろうな」
 ゴロウアキマサがうんうんとうなづきながら答える。
「だからそのための職場を用意しようと考えた」
「職場?」
「雇用があれば人口の流出は最小限に抑えられる」
 確かにそうだろうなとアンナも思う。
「そこで考えたのが、アンナの保存食工場だ」
 いきなり話を振られてアンナは眼をむいた。
「あたしの?」
「そう、君が保存食のつくり方を人に教える、そしてその人が保存食を作る工場を運営する。できた保存食は鉄道で国中に分配する」
 想像以上に大掛かりな話にアンナは目を白黒させる。
「だから君の力が必要なんだ、アンナ」
 そう言われてアンナは途方に暮れる。
「心配しなくていい、時間はまだある。線路の延長には相応の時間がかかるその間に工場を造ればいいんだ」
 アンナの保存食を作るための工場をこれから立てると言われてアンナは気が遠くなった。
「工場を建てるにしろ、それは時間がかかる。だから今から人材の育成に取り掛かってもらいたい」
 アンナはその場で倒れた。

 ひっくり返ったアンナをエドワードが介抱しているのをしり目にゴロウアキマサは庭先に出た。
 通りがかった相手に声をかける。
 ホイエルがゴロウアキマサの小さな体を見下ろしていた。
「お前は鍛冶師だろう、このままでいいのか?」
「何のことだ」
「鍛冶の仕事がしてみたいと思わないのか?」
「ああ、これからそうなるはずだったよ」
 ゴロウアキマサはこともなく答えた。
「俺の鉄道での仕事は一段落したんだよ、だから当分は鉄道の仕事じゃなくて、報酬でもらった金で自分の鍛冶仕事をする場所を買いとろうと思っていたところでな」
「なんだと?」
「もうオカジョウキは動き出しただろう。俺の仕事はほとんど終わったんだよ、まあ新しい鉱山でも見つかればまた行ってくれと言われるかもしれんが」
「では、これからは個人で仕事を請け負うと」
 ホイエルはその場で座り込んだ。
「つまり剣の依頼を出せば受けてくれるということか?」
「報酬次第でなら、もしかして俺に剣を作らせるために俺をさらったのか」 
 何故、あの時一言でも質問してくれなかったんだろう。
「馬鹿じゃね」
 ホイエルは一言もなかった。
「まあ、これからはアンナが忙しいが、でもアンナの作ったブルストは安く買えるらしいぞ」
 彼らがアンナの料理を気に入っていたことはわかっていた。
 ホイエルは虚ろな目でその場でうずくまっていた。いつまでもいつまでも。
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