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侍女 詐術
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路地裏の今にも崩れそうな廃屋、かび臭いにおいがするが背に腹は代えられない。
というか慌てていたので花嫁衣装おいてきてしまった。もったいない。あいつらに売り払われているかもしれない。
悔しい。
「本当はお前らなんか助けたくなかったんだからな」
少年が人を小ばかにしたような顔であたしたちを見た。
見たところそこそこ貧しいが、とことんまで困っていない家庭の子供に見えた。だがそんな家庭の子供は夜外出など許されない。
「本当にお前らなんか助けたくないけど、あんな奴らにあの人の嫁候補がどうにかされたらあの人の名前に傷がつくからな」
この少年はあの男のことを言っていたんだろうか。この少年の言っていることが事実ならあたしは随分誤解していることになるが。
「本当ならお前なんかあの人の嫁になれるはずなかったんだからな」
そう言って少年はお嬢様を睨みつける。
「ちょっとお待ち、坊や、名前は?」
とりあえず、あたしのお仕えしている先のお嬢様に無礼な態度をとるのはいただけない。
「言っておくけどこの人は美鈿お嬢様という名前があるの。坊やにお前呼ばわりされる筋合いはないの」
「うるさいな、どうせあの女の身代わりのくせに」
あの女、誰のことかな。
「あの女とは?」
「商人の妻になるくらいなら貴族の妾になった女だよ、もともと貴族って言っても名ばかりの落ちぶれ貴族だったくせに」
こればっかりは仕方がない。
人間は平等ではないからだ。貴族と名がつけば落ちぶれていても豪商のお嬢様より上に行く。そして商人の正妻より、貴族の妾のほうが序列は高い。
おそらく女の家族も佶家よりもその貴族の妾を進めたんだろう。
それに本人の意思がどうだったのかもわからない。女の意思など考慮してもらえるほうが珍しいのだから。
だけどあたしは泣く泣く佶家の嫁になるのをあきらめたとは思っていないけど。
「あの人がどんなすごい人だかお前ら知らないだろう」
「それはそうと名前は何、あたしの名前は愛亜、そっちは」
「清秋だよ、だけど気楽に呼ぶんじゃねえぞ、お前らなんかに呼ばれたくないね」
清秋はそう言って顔をゆがめる。
「それであの方がすごい方っていったい何故?」
「ふーん、知らないんだ」
清秋はいかにも嗜虐的な態度で気を持たせるような態度をとるが、あとちょっと待てば話し出すはずだ。
「この国で内乱があったことは知っているよな、そして、この街で反乱軍が街の住民を大勢焼き殺す事件があったんだ」
血のしみだらけの船。虐殺があったことは知っているそれもほんの数年前に。
「その反乱軍を街の人を指揮してやっつけた人がいるんだ」
「もしかしてそれがあの方?」
お嬢様が食いつく。
「ああ、見事その指導者は敵の総大将を叩き殺したそうだ」
「それ、君は見てないの?」
ちょっと引っかかることがあったので尋ねてみる。
「見てないけど、街中の噂だったんだ」
「ふうん」
信じ切った少年純粋だけどね。
「だけど、反乱軍はもともと正規軍、それが民間人にあっさり殺されたなんて国の沽券にかかわると言われて、その反乱軍をやっつけた人たちは迫害されて、首謀者は町の人にかくまわれているって話だけど、ちゃんと調べたんだ」
「なるほど」
調べた挙句でたらめをひっかけたか。
あのお嬢様、信じてるふりですよね、だってお嬢様そもそも虐殺だの内乱だの物騒なのを避けてあの男はお嬢様のお屋敷に滞在していたでしょう。根本的な問題を気が付いていないとか本気か?
というか慌てていたので花嫁衣装おいてきてしまった。もったいない。あいつらに売り払われているかもしれない。
悔しい。
「本当はお前らなんか助けたくなかったんだからな」
少年が人を小ばかにしたような顔であたしたちを見た。
見たところそこそこ貧しいが、とことんまで困っていない家庭の子供に見えた。だがそんな家庭の子供は夜外出など許されない。
「本当にお前らなんか助けたくないけど、あんな奴らにあの人の嫁候補がどうにかされたらあの人の名前に傷がつくからな」
この少年はあの男のことを言っていたんだろうか。この少年の言っていることが事実ならあたしは随分誤解していることになるが。
「本当ならお前なんかあの人の嫁になれるはずなかったんだからな」
そう言って少年はお嬢様を睨みつける。
「ちょっとお待ち、坊や、名前は?」
とりあえず、あたしのお仕えしている先のお嬢様に無礼な態度をとるのはいただけない。
「言っておくけどこの人は美鈿お嬢様という名前があるの。坊やにお前呼ばわりされる筋合いはないの」
「うるさいな、どうせあの女の身代わりのくせに」
あの女、誰のことかな。
「あの女とは?」
「商人の妻になるくらいなら貴族の妾になった女だよ、もともと貴族って言っても名ばかりの落ちぶれ貴族だったくせに」
こればっかりは仕方がない。
人間は平等ではないからだ。貴族と名がつけば落ちぶれていても豪商のお嬢様より上に行く。そして商人の正妻より、貴族の妾のほうが序列は高い。
おそらく女の家族も佶家よりもその貴族の妾を進めたんだろう。
それに本人の意思がどうだったのかもわからない。女の意思など考慮してもらえるほうが珍しいのだから。
だけどあたしは泣く泣く佶家の嫁になるのをあきらめたとは思っていないけど。
「あの人がどんなすごい人だかお前ら知らないだろう」
「それはそうと名前は何、あたしの名前は愛亜、そっちは」
「清秋だよ、だけど気楽に呼ぶんじゃねえぞ、お前らなんかに呼ばれたくないね」
清秋はそう言って顔をゆがめる。
「それであの方がすごい方っていったい何故?」
「ふーん、知らないんだ」
清秋はいかにも嗜虐的な態度で気を持たせるような態度をとるが、あとちょっと待てば話し出すはずだ。
「この国で内乱があったことは知っているよな、そして、この街で反乱軍が街の住民を大勢焼き殺す事件があったんだ」
血のしみだらけの船。虐殺があったことは知っているそれもほんの数年前に。
「その反乱軍を街の人を指揮してやっつけた人がいるんだ」
「もしかしてそれがあの方?」
お嬢様が食いつく。
「ああ、見事その指導者は敵の総大将を叩き殺したそうだ」
「それ、君は見てないの?」
ちょっと引っかかることがあったので尋ねてみる。
「見てないけど、街中の噂だったんだ」
「ふうん」
信じ切った少年純粋だけどね。
「だけど、反乱軍はもともと正規軍、それが民間人にあっさり殺されたなんて国の沽券にかかわると言われて、その反乱軍をやっつけた人たちは迫害されて、首謀者は町の人にかくまわれているって話だけど、ちゃんと調べたんだ」
「なるほど」
調べた挙句でたらめをひっかけたか。
あのお嬢様、信じてるふりですよね、だってお嬢様そもそも虐殺だの内乱だの物騒なのを避けてあの男はお嬢様のお屋敷に滞在していたでしょう。根本的な問題を気が付いていないとか本気か?
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