14 / 26
侍女 警戒
しおりを挟む
人間飲まず食わずでは死ぬ。
そう当たり前のことだ。つまりこんな廃屋に隠れていたとしてもいずれ追い詰められる。
「愛亜、これからどうするの」
「そうですねえ、まず手紙を書かなければなりませんが、筆も紙もないのでどうしようもないです」
どうやったらこの国で旦那様にこの事態を知らせるか。まさか嫁いだ当日没落するとは思わなかったから情報を集めている暇もなかった。
「愛亜、あの方を救って差し上げられないかしら」
「無理言わないでください、国が相手ですよ」
何を言ってるんだこのお嬢様、自分が生き残れるかも怪しい状況で、そんな無理難題口にする前にダメに決まっているだろう。
「お嬢様、まず自分の身を救ってからようやく人を救えるのですよ」
今あたしたちが明日すら生き延びられるか怪しいような状況でどうしようというのか。
「こんなところにいたぞ」
しまった。見つかった。
土地勘がない場所で逃げ切れる可能性のほうが少ないのは分かっていた。
それにこの清秋ってのはそれほど頼りになるものじゃないのも分かっていた。それでも万が一の可能性を信じていたかった。
「お嬢様」
思わずそう呼んだけれど、あの人が頼りにならないのは分かり切っている。
か弱い女二人に子供一人無理やりひっぱられていくしかありませんよ
「三人とも来てもらおう」
逆らった清秋が殴り倒された。あたしたちも逆らえばああなるという見せしめだな。
そしてそれなりに立派なお屋敷に通されたのだけれど、見事に男性使用人のガラが悪い。
内なら即刻首になる顔だ。
客商売なのでお客様に不快にさせることは極力避ける。
まあ、もしかしたらこの国ではいろいろ社会が不安定なのであえて強面を多く採用しているのかもしれないが。
お嬢様は血の気の引いた顔で小刻みに震えている。だからあえて言う。
「お嬢様、落ち着いてください、冷静さを失ったら負けです」
それでも最後の息を引き取るまで生き延びるのをあきらめない。
ぐずぐず泣いている暇はない。
あたしはまっすぐ前を見た。
「それが佶家の嫁かい」
しゃがれた声がした。
目の前には妖怪がいた。
物凄く長生きした女性が、妓女でもためらうであろう厚化粧をしている。
「それで、ちょっと私の言うことを聞いてくれれば悪いようにしないよ」
どう考えても悪いことしかなさそうなんですが。
「私に何をしろと?」
お嬢様、発言に気を付けて。
「いったいあの婆さん何者?」
とりあえず清秋に聞いてみることにした。
そう当たり前のことだ。つまりこんな廃屋に隠れていたとしてもいずれ追い詰められる。
「愛亜、これからどうするの」
「そうですねえ、まず手紙を書かなければなりませんが、筆も紙もないのでどうしようもないです」
どうやったらこの国で旦那様にこの事態を知らせるか。まさか嫁いだ当日没落するとは思わなかったから情報を集めている暇もなかった。
「愛亜、あの方を救って差し上げられないかしら」
「無理言わないでください、国が相手ですよ」
何を言ってるんだこのお嬢様、自分が生き残れるかも怪しい状況で、そんな無理難題口にする前にダメに決まっているだろう。
「お嬢様、まず自分の身を救ってからようやく人を救えるのですよ」
今あたしたちが明日すら生き延びられるか怪しいような状況でどうしようというのか。
「こんなところにいたぞ」
しまった。見つかった。
土地勘がない場所で逃げ切れる可能性のほうが少ないのは分かっていた。
それにこの清秋ってのはそれほど頼りになるものじゃないのも分かっていた。それでも万が一の可能性を信じていたかった。
「お嬢様」
思わずそう呼んだけれど、あの人が頼りにならないのは分かり切っている。
か弱い女二人に子供一人無理やりひっぱられていくしかありませんよ
「三人とも来てもらおう」
逆らった清秋が殴り倒された。あたしたちも逆らえばああなるという見せしめだな。
そしてそれなりに立派なお屋敷に通されたのだけれど、見事に男性使用人のガラが悪い。
内なら即刻首になる顔だ。
客商売なのでお客様に不快にさせることは極力避ける。
まあ、もしかしたらこの国ではいろいろ社会が不安定なのであえて強面を多く採用しているのかもしれないが。
お嬢様は血の気の引いた顔で小刻みに震えている。だからあえて言う。
「お嬢様、落ち着いてください、冷静さを失ったら負けです」
それでも最後の息を引き取るまで生き延びるのをあきらめない。
ぐずぐず泣いている暇はない。
あたしはまっすぐ前を見た。
「それが佶家の嫁かい」
しゃがれた声がした。
目の前には妖怪がいた。
物凄く長生きした女性が、妓女でもためらうであろう厚化粧をしている。
「それで、ちょっと私の言うことを聞いてくれれば悪いようにしないよ」
どう考えても悪いことしかなさそうなんですが。
「私に何をしろと?」
お嬢様、発言に気を付けて。
「いったいあの婆さん何者?」
とりあえず清秋に聞いてみることにした。
2
あなたにおすすめの小説
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。
子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。
――彼女が現れるまでは。
二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。
それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる