寓意による遺言

karon

文字の大きさ
6 / 11

しおりを挟む
 図書館でピックアップした本を借りることができた。
 早速一通り読んでみる。
 まあ、教養本としては面白いだろうか。例えばほとんどの日本人が知らないこと、ミレーの晩鐘と種まく人、どちらが宗教画でしょうかと聞かれたらほとんどの人が、晩鐘を選ぶだろう。
 残念ながら、答えは外れ、種まく人が宗教画だったりする。
 種はいわゆる教義、そして種をまく人とはそれを布教する宣教師なのだとか。
 そして、解るかそんなもんと思われるのは祈る女の膝にじゃれる猫。これは悪魔なのだそうだ。どう考えてもただの風景画だが、祈りを妨害する悪魔の象徴として猫が書かれているらしい。
 ま、確かに猫を魔女狩りで火に投げ込んだという歴史はあるけど、うーんとなってしまう。
 この本には姉貴の言っていた犬と猿も書いてあり、ほぼそのまんまだった。
 最後まで読了したのだが、残念ながら、参考になりそうなものを見つけることができなかった。
 蝶とかの象徴は、死後の魂。個人を特定できるもんじゃねえ。
 鏡は虚栄と書いてある。そして扇はなかった。
 もちろん、すべての象徴が書かれているわけではないだろう。とりあえず、そういう裏の意味があるというのは本当だとわかっただけで収穫といえるような気もあるようなないような。
 鏡、扇、蝶。
 この三つで何が表現できるのか。あるいはこのうちどれかがはずれなのだろうか。
 とりあえず、他の本を探す。もしくは二階堂の同じゼミを受けていた教授なり同期なりを当ってみるというのはどうだろう。
 もしあれが暗号であるならば、それを読み取れるとしたらそのあたりを狙っていたと考えられる。
 そういえば、そうした連中はどうしたんだろう。
 俺は二階堂の通っていた大学の住所を確かめた。
 いきなり言ってみるしかないだろう。たぶん誰かしらいるかもしれない。

 俺はいろいろ焦っている。どうも警察はより多く姉貴を疑っているという話を聞いたのだ、焦らないはずがない。
 何とか、同じゼミを受けていた一人を探し当てた。
 ちょっと線の細い、今日見て明日忘れそうな顔をした男だった。
 いわゆる灰汁のないのっぺりとした顔。それにあとちょっとで七三分けになりそうな髪型をしていた。
「ああ、二階堂ねえ」
 多少の同情の視線を感じた。
「あいつ、家は金持ちだしそこそこルックスはいいしでまあ、もてたんだけどね、だけどすぐに浮気されたって言って女は別れるわけ、それを何度も繰り返せばまあ、学内であいつと付き合おうなんて女はいなくなったわ」
 以外でもない私生活を教えてくれた。
「それでも、まあ、今度の事件が起こるまではそこまでひどかったのかということはわからなかったわけ。まあ教授が怒るの怒らないのってねえ」
 うんうんと腕を組んで滔々と語ってくれる、彼はそれ穂とあの腐れ外道の死を悼んでいるわけではないらしい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...