川を下る

karon

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迷子

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 上を見れば張り出した木の枝。とぎれとぎれに見える青い空が見える。足元は茂った草。
 さっきまでの登山道は消えていつの間にか獣道のような場所に来てしまった。
 過保護な兄推薦のカーキ色のジャケットで額の汗をぬぐう。きっちり丈夫なズボンとごつい靴。山は涼しいからと勧められたのだが汗が止まらない。それはもしかしたら背中の重量感のあるリュックが筋肉を発熱させているからかもしれない。
「噓でしょ、迷った?」
 雅弓が天を仰いだ。スマホを開くとアンテナは軒並みお亡くなりになっている。
 いざという時の荷物を背負っているため周辺の標識を確認するのはほかの仲間に頼んでいた。
「どっかで標識見落としたのかな」
 順子が深いため息をついた。順子はサファリ帽子に長そでの紺のシャツ、ベージュのパンツに運動靴。リュックは普通サイズ。前日雅弓の兄からわざわざ電話で指導を受けた結果だ。
「ええ、どうするのよ」
 恵美がキャンキャンとわめきだす。半そでのアニマルプリントのシャツにカーキ色のキュロット。
 荷物は肩にかけたポシェット一つだ。
 前日彼女のところにも雅弓の兄から電話があったが完全無視したらしい。
 足元に茂った草で靴下とキュロットの間の肌が痛々しく傷だらけになっている。
 そのことでキャンキャン泣きわめいたが自業自得と流された。
「大丈夫、クライマーのお兄ちゃんから山で迷った時の対策ちゃんと聞いてきたから」
 雅弓はそう言ってジャケットのメモ帳を出した。
 不意に恵美は背後を振り返る。
「やった、川がある」
 恵美は涼やかな水音を聞いた。そのまま何も考えずその場から走り出してしまう。
「ちょっと、恵美?」
 雅弓が止めたが、恵美の姿はもう見えない。
「どうしよう」
「川があるって言ってたけど」
「このメモによると川を見つけたら絶対にそれに沿って進むな、遭難する」
「え、まじ?」
 順子は顔を引きつらせる。
「どうするのよ恵美行っちゃったよ」
「どこに行ったんだろ、もう見えない、恵美ってそんなに足が速かったっけ」
 そして、川と言ったが水音は全く聞こえなかった。
「どうしよう」
「こうなったら、遭難しそうなときは、登れって書いてある、上に向かっていこう」
「恵美はどうするの?」
「追いかけて行っても二次遭難するだけだよ、上に登って正しい道を見つけてからならスマホも通じるかも」
 そう言って雅弓は上り坂になっている場所を進もうとした。獣道からすら外れているが進むしかない。
 
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