星の流れたその先に

karon

文字の大きさ
14 / 22

同業者

しおりを挟む
 これは何事?
 アリサは自分の状況がわからなかった。王宮に勤める武装女官候補であったにもかかわらずこの体たらく。
 不覚としか言いようがない。
 ザイーフ人に取り囲まれていた。それも屈強そうな明らかに戦闘職とわかる部門の人間だと分かるような手合いに。
「あの?」
 いかにも可愛らしい少女らしい首の傾げ方を披露してみた。いかにも保護欲を誘う稚い少女のふりをして。
「その芝居はやめた方がいい」
 真ん前に立っている男が言った。
「おかしいですか?」
「普通の女の子ならこの状況でならもう泣いている」
 そりゃそうだと思ったアリサは周囲を伺う。人通りはないわけではないようだが思いっきり遠巻きにしている。屈強な男に取り囲まれたか弱そうな少女を見捨てる気満々だ。
「何か?」
 アリサはそう言って相手を観察する。異人種の質の悪いところは顔の見分けがつけにくいところだ。周りを取り囲む男達に血縁関係があるのかと言いう検討すら付けられない。
「いや、異国の同業者は偉く毛色が違うな」
 確かに色だけで見れば正反対だ。肌は浅黒く髪は漆黒、アリアの雪のような白い肌と銀髪では。
「ああ、ありがとうございます」
 アリアはにっこりと笑った。
「演技指導ありがとうございます。私はこの見た目で油断させてからやるスタイルなもので」
 何をやるのかは想像してもらうしかないが。
「確かにな、つまりバレバレの状態ではどうしようもないか」
 アリサはほんのりと笑う。
 そしてアリサの袖口から針が一本飛び出した。素早く繰り出されたそれに思わず飛びのく。
「かすりましたわね、本気なら死んでいましたよ」
 針先には血がついていた。針一本なら鎧の隙間でも貫通する。そしてそれに毒が仕込んであれば。
「たとえ、不利でも最低は一人は仕留めろと教育されております」
 至近距離ならさすが、遠距離ならばねの力で打ち出すこともできる。
「可愛くない女だな」
「商売敵に可愛いなんて思われたら終わりでしょ」
 アリサはそう言っていなす。
 アリサのようなのが特殊なだけで、サフラン商会の傭兵たちはわかりやすく傭兵な人たちの方が多い。
「アリサに絡まないでよね」
 ネリーが事態を見て慌ててアリサとザイーフ人たちとの間に割って入る。
「あの、大丈夫ですよ」
「こんな小さな女の子に絡むなんて」
 いやそこまで小さくないとアリサは言いたかったがそれ以上は言えなかった。
「あら、どうなさいましたのサダム殿」
 奥様、シンシアがにっこりと笑う。
「アリサ、この方は旦那様がお仕事の取引相手のサダム殿ですの、覚えておいてくださいな」
「はい、奥様」
「アリサ、変なことをされたらすぐに声を上げるのよ、何か武器を用意しましょうか」
 武器なら持っていると言おうと思ったがネリーがどれほど情報があるのか、とりあえず旦那様ことカーライル様に相談だな。
 アリサは今後の予定を立てた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

聖女になんかなりたくない! 聖女認定される前に…私はバックれたいと思います。

アノマロカリス
恋愛
この作品の大半はコメディです。 侯爵家に生まれた双子のリアナとリアラ。 姉のリアナは光り輝く金髪と青い瞳を持つ少女。 一方、妹のリアラは不吉の象徴と言われた漆黒の髪に赤い瞳を持つ少女。 両親は姉のリアナを可愛がり、妹のリアラには両親だけではなく使用人すらもぞんざいに扱われていた。 ここまでは良くある話だが、問題はこの先… 果たして物語はどう進んで行くのでしょうか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

《完結》悪役聖女

ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

処理中です...