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王宮からの使者
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僕と港で働く皆さんは呆然としてやたら豪華絢爛な方たちを見送った。
船から馬車が下りてきて、さらに馬もつるされて降りてきたのには驚いた。
その馬車はとてつもなく大きくておそらく対面交通ができない。あの派手なおじさま方が全員乗り込むことができたのもその大きさ故。
通りの向こうで、怒号や悲鳴が聞こえてきたが、僕たちは黙ってその光景を見続けることしかできなかった
「なんだったんだ、あれ」
さっきまで漁船に乗っていたらしいおじさんがそう呟いた。
訳が分からないなりに僕はするべきことをした。
夕飯を作って食べたのだ。
頭とはらわたを取り除き、うろこをこそいだ魚をフライパンでこんがりと焼いた。
付け合わせの野菜サラダ。パンというメニューだ。本当はスープも作るつもりだったがなんだか気疲れしていたのでやめた。
なんかしら起こるんだろうなあ、でも、僕の関係のないところで起きてほしいなあ。
もちろんそんなささやかな願いが叶うわけはなかった。
翌日、この街の支配者である領主様のお迎え馬車が僕の家の玄関に待っていた。
本日、学校はお休みなんだろうな。
そうため息をついて僕は馬車に乗り込んだ。
僕は実に座り心地のいい馬車の椅子に腰かけた。どうせ帰りは徒歩なんだ今くらいこの座り心地を楽しんでもまあいいんじゃないかな。
僕はそう思いつつ目を閉じた。
少しだけうたたねした後、領主様のお屋敷に着いた。
以前と同じように書斎に通された。
「とりあえず、まあ、お茶でもどうぞ」
本日は小さなテーブルと椅子にお茶とお茶菓子が用意されている。
僕はお茶を一口だけ飲んだ。今まで飲んだことのない味だった。僕の今まで飲んできたお茶と味が変わっているが、たぶん僕の飲んだお茶の製造元と違うのだろう。
お値段の差も相当すごそうだ。しかし、僕なんかに出すあたり、多分一番上等のお茶ではないんだろう。
お茶菓子は小さなクッキーだ、アーモンドのスライスが上に散っている。なんとなく学校に行く途中のお菓子屋さんで見た気がする。
「君は食べたことがあるかな、学校の前の商店街の菓子店の物だ、市民の経済を回すのも私の仕事だよ」
甘いものは好きではないのであの店に入ったことはない、たまに横目で見たことがあるだけだ。
「今日の話というのはな」
僕がポリポリとクッキーをかじっているとおもむろに領主様が話し始めた。
「昨日王宮から使者が来てな」
そこまで言ってしばらく言いよどむ。
僕は猛烈に嫌な予感がした。王宮からの使者と言われてあの巨大な船から降りてきたやたら豪華絢爛な馬車の人たちを思い出した。
「彼らの要求は我らの武装を引き渡すようにと命じてきた」
言われたことをしばらく反芻していた。
「できるんですか?」
僕は素朴な疑問を呟く。
いや、この街に住む者はそれぞれ武装を持っているけど、僕は自分の腕輪を見た。
子の腕輪は外すことができない。試してみたが駄目だった。破壊するのは僕自身が汚しそうだったので試していない。
「その要求を呑むわけにはいかない」
そう領主様ははっきりといった。しかし王宮からの要求を拒むのも。
僕の背筋に冷たい汗が伝う。
「君の反応が街の外の人間の物なんだろうな」
領主様は何故か満足げに笑った。
船から馬車が下りてきて、さらに馬もつるされて降りてきたのには驚いた。
その馬車はとてつもなく大きくておそらく対面交通ができない。あの派手なおじさま方が全員乗り込むことができたのもその大きさ故。
通りの向こうで、怒号や悲鳴が聞こえてきたが、僕たちは黙ってその光景を見続けることしかできなかった
「なんだったんだ、あれ」
さっきまで漁船に乗っていたらしいおじさんがそう呟いた。
訳が分からないなりに僕はするべきことをした。
夕飯を作って食べたのだ。
頭とはらわたを取り除き、うろこをこそいだ魚をフライパンでこんがりと焼いた。
付け合わせの野菜サラダ。パンというメニューだ。本当はスープも作るつもりだったがなんだか気疲れしていたのでやめた。
なんかしら起こるんだろうなあ、でも、僕の関係のないところで起きてほしいなあ。
もちろんそんなささやかな願いが叶うわけはなかった。
翌日、この街の支配者である領主様のお迎え馬車が僕の家の玄関に待っていた。
本日、学校はお休みなんだろうな。
そうため息をついて僕は馬車に乗り込んだ。
僕は実に座り心地のいい馬車の椅子に腰かけた。どうせ帰りは徒歩なんだ今くらいこの座り心地を楽しんでもまあいいんじゃないかな。
僕はそう思いつつ目を閉じた。
少しだけうたたねした後、領主様のお屋敷に着いた。
以前と同じように書斎に通された。
「とりあえず、まあ、お茶でもどうぞ」
本日は小さなテーブルと椅子にお茶とお茶菓子が用意されている。
僕はお茶を一口だけ飲んだ。今まで飲んだことのない味だった。僕の今まで飲んできたお茶と味が変わっているが、たぶん僕の飲んだお茶の製造元と違うのだろう。
お値段の差も相当すごそうだ。しかし、僕なんかに出すあたり、多分一番上等のお茶ではないんだろう。
お茶菓子は小さなクッキーだ、アーモンドのスライスが上に散っている。なんとなく学校に行く途中のお菓子屋さんで見た気がする。
「君は食べたことがあるかな、学校の前の商店街の菓子店の物だ、市民の経済を回すのも私の仕事だよ」
甘いものは好きではないのであの店に入ったことはない、たまに横目で見たことがあるだけだ。
「今日の話というのはな」
僕がポリポリとクッキーをかじっているとおもむろに領主様が話し始めた。
「昨日王宮から使者が来てな」
そこまで言ってしばらく言いよどむ。
僕は猛烈に嫌な予感がした。王宮からの使者と言われてあの巨大な船から降りてきたやたら豪華絢爛な馬車の人たちを思い出した。
「彼らの要求は我らの武装を引き渡すようにと命じてきた」
言われたことをしばらく反芻していた。
「できるんですか?」
僕は素朴な疑問を呟く。
いや、この街に住む者はそれぞれ武装を持っているけど、僕は自分の腕輪を見た。
子の腕輪は外すことができない。試してみたが駄目だった。破壊するのは僕自身が汚しそうだったので試していない。
「その要求を呑むわけにはいかない」
そう領主様ははっきりといった。しかし王宮からの要求を拒むのも。
僕の背筋に冷たい汗が伝う。
「君の反応が街の外の人間の物なんだろうな」
領主様は何故か満足げに笑った。
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