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再会は突然に

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 美蘭は焦っていた。
 開ける場所がどこかわからないのだ。
 壁に偽装した扉の見分けがつかない。このままでは先程先頭不能にした相手が復活してくるかもしれない。さもなければ、他の追手が来るかもしれない。
「どうして開かないのよ」
 壁を乱暴に蹴飛ばす。
 八つ当たりしても何の役にも立たないが、気分だけは晴れる。
「お前、何しているんだ」
 唐突に声をかけられて思わず肩をすくませる。
「陛下?」
 なんでこんなところにいるのかわからないが、名目上の夫であり主君である男がそこにいた。
「いや、その前にその格好」
 美蘭は肌着一枚だ。
 その肌着は合わせが浅いので、歩くたびに足が見える。
「なんでそんな恰好で歩いている」
「動きにくいんで脱ぎました」
 美蘭はそうはっきりと言った。
 王は頭痛をこらえるように目を閉じた。
 髪はほどけ、化粧も剥げ落ち、半端に頬あたりに残っている。
「後、花瓶で殴られました、その時水がかかったのでこういうありさまになってしまいお見苦しいさまをお見せして申し訳ありません」
「何か、言いたいことはあるんだが、何を言っていいかわからない」
 ぐりぐりとこめかみをもむ。
 自分の一枚羽織っている上着を脱いで渡す。
「さっさと羽織れ」
 羽織ったところ美蘭の膝までしかなかったがそれでもないよりはましな状況になった。
「それで、状況は?」
 聞いてきたので美蘭は素直に答えた。
「縛られて軟禁されてましたが、すきを見て相手を縛りなおして逃亡しました。その後、いるはずのない男と会いましたが、蹴りつぶして逃亡し、ここまで来ました」
「何者だ、お前」
 一般家庭の娘だったはずだと王は首をひねった。
 後宮の妃達の身上書はいろいろごねられたがとにかく手に入れていた。
 しかし、王は妃達の本名を知らない、そのため誰が誰なのかは全く分からなかった。
 その中で唯一これだろうと見当をつけられたのが勿忘草だった。
 下級官吏の娘。本当に何故紛れ込んだんだろうと疑問に思う。
「それで、誰がいた」
 美蘭は一瞬口ごもったが、いずれ分かることだとあきらめた。
「石竹、桜、睡蓮、桂花……」
 言いにくそうに名前だけをこたえる。
「そうか、本名で脅迫状が届いたのだが、誰が誰かわからなかった」
 そう言いながら二人は連れ立って歩き出した。
「とりあえず、お前は私のそばにいろ、極力離れるな」
 王は剣を腰に佩いていた。
 どうやら美蘭を外に送ってくれるつもりはないようだ。
「このまま決着をつけるつもりですか」
 王が軍部に所属していたことは、一応役人の娘として知っていた。
 だがこのまま王がこの場にいた全員を皆殺しにして終わるのはできればやめてほしいところだと思った。
「ここにいるのは、王だけですか?」
「いや。他の部下も潜んでいる」
「もしかして、私がのしたのは」
 嫌な予感に冷や汗をかいた。
「それは大丈夫だろう、いくら何でもお前に後れを取るような使えないのは来ていない」
 そう答えて王は足を進めた。

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