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モンスター課の平穏な一日
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佐藤忠は思った。結局交通課とやっていることが変わらない気がすると。
忠は暴走族を追いかけていた。今までと違うのは暴走しているのが狼の獣人で追いかけている忠はパトカーではなく自分の足で走っているということだけだ。
パトカーは忠の横を並走している。
獣人達の前に飛び出した忠は大きく腕を広げて、三頭の狼をまとめて抱きとめる。
仲間が捕まったのを見て狼たちは足を止める。
そしてパトカーから歌が聞こえてきた。
同僚の山田恵子の能力は神話に出てくるサイレーン、ないしはローレライ、その歌を聞いたときとその後しばらく自我を喪失する。
本職の交通課が、こちらに一般車が来ないように手配しているからできることだ。
忠はいざという時には通信端末、そして時には耳栓になるイヤフォンを装着しているので卒倒せずに済んでいる。
歌い終えた山田恵子はパトカーから降りた。
獣人達は返信がとけて、全裸の少年少女に戻っている。
「暴走と言うより、猥褻物陳列剤で検挙しますか」
そう言って仰向けになって倒れている少年を指差す。
モンスター課は基本激務だ。
新たな力を手に入れたとき、合法的に使うより犯罪に走る短絡的な人間のほうが多い。
そして、そういう人間を取り締まろうと考える人間はものすごく少ない。
そのため数多くの犯罪者を割合からすれば恐ろしく少ない警察官でカバーしなければならない。
ましてや怪物化は若年層に多いためあっという間に文字通り暴走する。
山田恵子は警察学校時代に怪物化した。
本人は少年課を希望したが、実質仕事内容は、こうして暴走する少年少女を確保することなのである意味希望はかなっている。
応援のパトカーがやってきた。
総勢十数名の少年少女達をそれぞれに分けて署まで護送する。
山田恵子の歌の威力がきいているうちに頑丈な署内の留置場に送らねばならない。
少年少女たちを乗せたパトカーに忠を乗せるスペースはない。
結局忠は車道を走り続けた。
狼に変身していた少年少女達は全員従姉妹ないしはまた従姉妹の関係だった。
彼らの祖父母並びに曾祖父母は子だくさんだったらしい。
まさかこういう事態が起きるとは思っていなかったのだろうが、怪物化は近い血縁関係だと、同じようなものになることが多い。
全員同じ人間の子孫なら、同じ獣人になったわけだ。
全員特殊合金製の鎖で固定された状態で取り調べを受けている。
取り調べのベテラン刑事は実は普通の人間だ。
モンスター課も全員怪物化した人間だけで賄うことはできない。それほど怪物化した警察官は少ないのだ。
そして、怪物化した警察官がほぼ全員がかなり若すぎるのもそれに拍車をかけている。
モンスター課の設立、そして怪物化した警察官の採用が行われるようになったのは本当につい最近なのだ。
日の浅い組織に人材不足と言う壁が立ちはだかっている。
最近、まともに家に帰っていないなあと忠はため息をついた。
捜査一課のほうが騒がしい。
「ライフル立てこもり事件発生」
そんな言葉が聞こえてきた。
バタバタと走ってくる刑事達、彼らは一瞬ものほしげな顔をして忠を見た。
モンスター課のヘラクレス。そう忠は呼ばれていた。
忠の相手になる犯罪者は怪物化したものだけだ。どれほど凶悪な事件でも一般的な人間の犯罪者は普通の警察官が相手にする。モンスター課の設立における不文律だ。
忠の怪力やサイレーン恵子の歌で一発で鎮圧できるとしても彼らを使うわけにはいかない。
それでもついつい見てしまうのが人情というものなのだろう。
やれやれと忠はため息をつく。
やはりモンスター課は前途多難だ。
忠は暴走族を追いかけていた。今までと違うのは暴走しているのが狼の獣人で追いかけている忠はパトカーではなく自分の足で走っているということだけだ。
パトカーは忠の横を並走している。
獣人達の前に飛び出した忠は大きく腕を広げて、三頭の狼をまとめて抱きとめる。
仲間が捕まったのを見て狼たちは足を止める。
そしてパトカーから歌が聞こえてきた。
同僚の山田恵子の能力は神話に出てくるサイレーン、ないしはローレライ、その歌を聞いたときとその後しばらく自我を喪失する。
本職の交通課が、こちらに一般車が来ないように手配しているからできることだ。
忠はいざという時には通信端末、そして時には耳栓になるイヤフォンを装着しているので卒倒せずに済んでいる。
歌い終えた山田恵子はパトカーから降りた。
獣人達は返信がとけて、全裸の少年少女に戻っている。
「暴走と言うより、猥褻物陳列剤で検挙しますか」
そう言って仰向けになって倒れている少年を指差す。
モンスター課は基本激務だ。
新たな力を手に入れたとき、合法的に使うより犯罪に走る短絡的な人間のほうが多い。
そして、そういう人間を取り締まろうと考える人間はものすごく少ない。
そのため数多くの犯罪者を割合からすれば恐ろしく少ない警察官でカバーしなければならない。
ましてや怪物化は若年層に多いためあっという間に文字通り暴走する。
山田恵子は警察学校時代に怪物化した。
本人は少年課を希望したが、実質仕事内容は、こうして暴走する少年少女を確保することなのである意味希望はかなっている。
応援のパトカーがやってきた。
総勢十数名の少年少女達をそれぞれに分けて署まで護送する。
山田恵子の歌の威力がきいているうちに頑丈な署内の留置場に送らねばならない。
少年少女たちを乗せたパトカーに忠を乗せるスペースはない。
結局忠は車道を走り続けた。
狼に変身していた少年少女達は全員従姉妹ないしはまた従姉妹の関係だった。
彼らの祖父母並びに曾祖父母は子だくさんだったらしい。
まさかこういう事態が起きるとは思っていなかったのだろうが、怪物化は近い血縁関係だと、同じようなものになることが多い。
全員同じ人間の子孫なら、同じ獣人になったわけだ。
全員特殊合金製の鎖で固定された状態で取り調べを受けている。
取り調べのベテラン刑事は実は普通の人間だ。
モンスター課も全員怪物化した人間だけで賄うことはできない。それほど怪物化した警察官は少ないのだ。
そして、怪物化した警察官がほぼ全員がかなり若すぎるのもそれに拍車をかけている。
モンスター課の設立、そして怪物化した警察官の採用が行われるようになったのは本当につい最近なのだ。
日の浅い組織に人材不足と言う壁が立ちはだかっている。
最近、まともに家に帰っていないなあと忠はため息をついた。
捜査一課のほうが騒がしい。
「ライフル立てこもり事件発生」
そんな言葉が聞こえてきた。
バタバタと走ってくる刑事達、彼らは一瞬ものほしげな顔をして忠を見た。
モンスター課のヘラクレス。そう忠は呼ばれていた。
忠の相手になる犯罪者は怪物化したものだけだ。どれほど凶悪な事件でも一般的な人間の犯罪者は普通の警察官が相手にする。モンスター課の設立における不文律だ。
忠の怪力やサイレーン恵子の歌で一発で鎮圧できるとしても彼らを使うわけにはいかない。
それでもついつい見てしまうのが人情というものなのだろう。
やれやれと忠はため息をつく。
やはりモンスター課は前途多難だ。
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