風に溶けた詩

karon

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晩餐

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 晩餐はお酒が入るので子供だけで食べることになった。
 アリスはゆで卵とミルクスープとパンを食べていた。
 本来はチキンが出るはずだったのだがお客様が来たためアリス達の分はなくなった。
「つまんない」
 ゆで卵をかじりつきながらメアリーがぼやく。
「もっと素敵な方だったらよかったのに」
 お客様が風采の上がらないおじさんだったのが相当不満だったようだ。
「エイミー、もう食べないの?」
 エイミーはあまり食が進まないようだ。エイミーはあまり食欲があるほうではない。どこかぎこちなくスプーンを使っている。
「ママ」
 ぼそっと呟いた。
 母親はお客様と同じテーブルで食事をとる。普段ならエイミーの面倒を見るのは母親の仕事だった。
 アリスはチキンを食べ損ねたことが不満だった。
 アリスは食べ盛りなのだ。貯蔵されたすいぶんをぬかれきってカピカピになった腸詰を入れたスープが唯一の肉類だった生活が一週間続いていた。
 ずっと待ち望んでいた待望のチキンだったのだ。
 チキン以外のちゃんとしたお肉は冬しか食べることができない。寒いのは苦手だが食生活は豊かになる待望の季節だった。
 アリスはつまらなそうなメアリーと寂しそうなエイミーを並べて見ていた。
 ミルクスープはベーコンのかけらが入っている。
 パンだけは食べ放題だったが。
「エイミーもう食べないならリンゴを食べる?」
 デザートのリンゴを手にしてアリスが尋ねた。
 本来はそれをしなければならないはずの長女のメアリーは無言でぶすくされている。
 アリスは何を言っても無駄だと考えない不で皮をむいてエイミーにあたえた。
「よくそんなものを食べられるわ」
「食べないの?」
「アップルパイなら食べるけどただのリンゴなんか食べられないわよ」
 来客のためにいろいろと料理人をこき使っていたため自分たちの食事にしわ寄せを来たので余計に機嫌が悪い。
 メアリーは量より質のほうを重視する。手の込んだ料理を食べたがるのだ。
 そんなメアリーを心からアリスは鬱陶しく思っていた。
 エイミーはシャクシャクとリンゴを食べている。
 アリスも食事は一通り食べたので自分の分のリンゴを向いた。
 リンゴを食べる妹たちを思いっきり見下した目で見ているメアリー。まあ普段から身長のせいで見降ろされているのだが。
 最近のメアリーは普段に増して態度が悪い。そのうえ来客で今までの生活もどんどんしわ寄せがやってくるだろう。
 アリスはうんざりとため息をついた。
 そしてエイミーの口を拭いてやる。
「エイミーは口をゆすいできましょうね」
 口をゆすいで顔を洗わせる。さっさと眠らせてしまおう。
 アリスはエイミーの手を引いて水場に向かう。
 リネンのタオルで顔を拭いてやっているとデイジーがいきなりエイミーの顔をのぞき込んだ。
 そしてデイジーはエイミーの頭をなでてやる。
「デイジー?」
 デイジーは茫洋とした視線を森に向けた。
そしてデイジーはまたふいっと歩き去った。
デイジーはディアレストやリガードよりも猫のような行動をとる。
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