たとえるならばそれは嵐

karon

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再就職

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「馬鹿かあんたら」
 そう怒鳴りつけている女の後ろ姿。
 ああ、そうだ、確か名前は風花、料理店の娘で、今は店を切り盛りしているらしい。ようやく思い出した。
 鈿花はずきずきと痛む頭を抱えながら起き上がる。
「大丈夫なの、倒れたって」
 振り返った風花に鈿花は小さく首を振っていた。
「夢を見てたわ、月姫のところで、勉強を習ったり、佶家の護衛達と戦ったり、あのころの夢を」
 鈿花はそう呟くと風花はますます顔をしかめる。
「そう、ろくに説明もせずにあそこに連れて行ったなんて、そりゃ倒れるわよ」
 ぎろっと風花が、元と李恩を睨みつけた。
「それはそうと、これからどうするの?」
「わからない」
 囚われの身から急に自由になれた。だけど家族はもういない、天涯孤独の身の上になったことを自覚したばかり、そんな鈿花にこれからの展望を考えるなど荷が重かった。
「よかったら、うちに来てくれていいのよ、最近お客も多いし、手伝いの人を雇おうかと思っていたところなんだから」
「そうか、それもいいかもね」
 候補の一つとして考えておこう。
「とりあえず、一度王宮に戻るわ」
 今後のことを考えると、一度王宮に戻らずそのまま風花に雇われるのも問題になる気がした。
「あの、さ俺らも悪気があったわけじゃなくて」
 元がおどおどと口を開く。
「言いずらい気持ちはわからないでもないから、言われても信じられない気もしただろうし」
 そんな質の悪い嘘をつく連中だとも思っていないが。
「王宮であいさつしたら、一度こっちに戻るし、その時に話そう」
 鈿花はそう言って、よろけながら立ち上がる。
 どうやら店の奥の従業員用の食堂に運び込まれていたようだ。
「じゃ、一度戻ろうか」
 そう言って、元と李恩を見た。
「一応身元引受人だし、勝手に就職しちゃまずいでしょ」

 王宮に戻ると、なんだか偉そうな初老の女官が鈿花を待ち受けていた。
「何をしていましたか?」
「いえ、街で食事を」
 なんとなく威圧感を感じて鈿花は後ずさる。
「本日は貴女に、任命書を手渡さねばなりません」
 いきなり言われて、理解ができなかった。
「王宮付きの舞姫として採用が決まりました」
 思わず眼玉を落としそうになる。
「あの、どうしてでしょうか」
「貴妃様が、自分のせいで、何やら縁を切られたそうだと、それで王に頼んでくださったのです、貴妃様の慈悲に感謝しなさい」
 実は就職が決まりそうだったのですがと言いずらい雰囲気だ。
 王宮で雇われた舞姫がどういう職務なのかちょっとわからないが、今までより待遇はいいだろうと鈿花は覚悟を決めた。
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