たとえるならばそれは嵐

karon

文字の大きさ
47 / 73

相談事

しおりを挟む
 妃付きの仕事は基本的に暇ではない。その暇をやりくりして鈿花は元に会いに行った。
 奇麗な妓女が会いに来て、同僚たちの冷やかす視線を感じたのか。少々居心地悪そうだ。
「これなんだけどね」
 鈿花は懐にしまっておいたもの、野菜に交じっていた鈴蘭の葉っぱを見せる。
「よく混じっているのよ」
 葱科の野菜とよく似ているが、匂いを嗅いでみて元は顔をしかめた。
「鈴蘭だな」
「水仙の葉っぱもよく混じっていたわ」
 貴妃の食糧庫によく紛れているという話を聞いて元は顔を歪めた。
「いつからだ?」
「入内直後から始まったと言っていたわ」
「本当なの」
 なぜか声が後ろから聞こえた。
「うん、焚きつけに使ったのが夾竹桃の枝で、危うい目にあったとも言っていたわね」
 夾竹桃の枝は燃やすと毒気を吐き出す。
 後ろから聞こえてきた声にこたえてから思わず鈿花は背後を振り向いた。
 いつのまにかやってきていた陽輝だった。その目が座っている。
 思わず冷や汗が流れた。
 相談するつもりだったので、話してもいいとは思っていたが、陽輝に伝えてしまうのは年長者としてどうだろうかと思い聞いてしまった後にもかかわらず何とかごまかせないだろうかと悩む。
「それ、姉さんの話だよね」
 そうです、貴女の姉の崔月姫の話ですと肯定してしまうのは何となくはばかられる。
「姉さん、殺されそうになっているの」
 表情はない。それが何とも恐ろしい。
 姉を心から信奉しているのを知っているからなおさらだ。
「続きをどうぞ、柳」
 鈿花はため息をついて、現在貴妃の置かれている状況を話した。
「何とか姉さんと話す時間をとれない、直接聞きたいんだけど」
「いや、それはちょっと」
 たとえ弟といえど無断で貴妃の部屋に入れたら何らかの懲罰があると思われる。
「あたしができるだけ連絡を密にするから」
 とにかく落ち着いてほしい。
「あの、大丈夫なの」
 鈿花は小声で元に尋ねてみた。
「あいつは、心に蛇を飼っているから」
 何かがあったらしい。鈿花はむしろかつて縦横無尽に暴れまくる月姫の後ろで何とか掣肘しようとしている陽輝の姿しか思い出せないが。
「二人まとめて暴れだしたら、恐ろしいなんてもんじゃないぞ」
 遠い目をした元を見て、何があったと問い詰めたくなったが途中で聞くのも怖くなった。
 しょせん陽輝は月姫の弟なのだから。
「ああ、確かにあの時はな」
 鈿花が思い出せるのはごつごつした馬車の床。造りが極めて雑だったこと。
 そこに荷物のように転がされ馬車はどんどん進んでいった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

処理中です...