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暗中模索
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荷車に死体が折り重なって積まれていた。
その傍らに、泣きはらした家族と思われる一団が歩いていく。
消耗した街の暮らしでは、ここ数年まともな葬式を上げた記憶がないが、今回に限っては常にないほど人が死んだ。
すでに腐敗が始まっているのか、すえた臭いも漂ってくる。埋葬を急がねばならない。
折れた足で、陽輝の方にすがっている月姫の姿に注目する者はいなかった。
いつもならサクサク進める道をのろのろと歩む。薄々ではあるが、もはやまともな形にこの足は戻らないであろう。
深く深く掘られた穴に、死体を投げ込む音がした。
合間合間に土を落とし、死体の間を埋めていく。
「月姫」
埋葬を見守っていた女が振り返る。
「さっき、香樹を埋めたわ」
月姫の身体がかしいだ。
「何があったの」
危険な役割を買って出たが、それでも危なくなったら逃げろと言っておいたはずだ。
「私達は囮役が終わった後に隠れ場所に匿われる手筈になっていたわ」
二番目に危険な仕事を頼むことになったので、役割が終わり次第比較的安全な場所に逃がすことになっていた。
一番危険なのが、大将首をとるために突っ込んだ月姫とその仲間達、愚連隊だったが、生き延びることをあきらめた覚悟の突撃だった。
「香樹は逃げなかったの。それどころか、落ちた賢を拾って突っ込んでいった。そして誰かを刺したところで、背後から斬られた」
香樹の着ていたくすんだ色の着物が真っ赤に染まっていたことを呟く。
返り血と自分自身の血で染まった真紅の着物を着て、幸寿は笑った。
「あの最初に焼き払われた区画に、幸寿の恋人が住んでいたって知ってた?」
月姫は知らなかった。男子と暴れまわることが多く、それ以外は家庭問題に忙殺されていた月姫は女達の噂話に興じる暇などなかった。
「香樹は、最初から生き延びるつもりなどなかったの、彼を殺したのが誰かわからないから、適当に奴らの中の誰かを殺して、それから死ぬつもりだった」
香樹は刺されながらもまだ、誰かを刺そうとあがいたという。倒れるその時まで。
「知っていたら」
香樹が来てめてはいけない覚悟を決めていたことに気づいていれば、あんな危険な役割を自分は割り振っただろうか。
「考えても無駄よ、香樹は、どこにいて何をやっていても、同じことをしたわ、生きていてもその心はもう死んでいたんでしょう」
この国では花嫁は赤い衣装をまとう。血染め赤い衣で香樹は冥府に嫁いでいった。
そこまで聞いて、限界だったのだろう。再び月姫は倒れた。
次に目を覚ました時には、同じように生き延びた愚連隊の仲間達が軍隊に連行されていったと聞かされた。
彼らは頑として月姫の名前だけは出さなかったという。
月姫はただ茫然としていた。すべてが自分の手の届かないところで進んでいく。無力感にさいなまれうつうつと過ごしていた。
それからほどなく父が亡くなった。
家族を支えていた月姫が倒れ、反乱軍は去ったものの、食料状況や治安など生活環境は一向に改善しないまま困窮していた家族の中で一番弱いものが死んだようだ。
月姫に代わって、家族を支えようと陽輝も頑張っていたが、物事には限界がある。
何とか近所の協力のもと簡素な葬儀を執り行った後日、転機は訪れた。
妃になれとの要請。なんの冗談かと思ったが、父親が名家の生まれだったが宮中にて何かをやらかして追い出されたらしい。家に適当な妃になれる娘がいないと言われた。
身体を損ない、弟の足手まといにしかなれない自分だ。妃になれば最低限の自分の生活と、今後の弟の支度金ぐらいは出る。
それくらいしか考えられなかった。
涙目で止める弟を振り切ってその話に乗った。
その傍らに、泣きはらした家族と思われる一団が歩いていく。
消耗した街の暮らしでは、ここ数年まともな葬式を上げた記憶がないが、今回に限っては常にないほど人が死んだ。
すでに腐敗が始まっているのか、すえた臭いも漂ってくる。埋葬を急がねばならない。
折れた足で、陽輝の方にすがっている月姫の姿に注目する者はいなかった。
いつもならサクサク進める道をのろのろと歩む。薄々ではあるが、もはやまともな形にこの足は戻らないであろう。
深く深く掘られた穴に、死体を投げ込む音がした。
合間合間に土を落とし、死体の間を埋めていく。
「月姫」
埋葬を見守っていた女が振り返る。
「さっき、香樹を埋めたわ」
月姫の身体がかしいだ。
「何があったの」
危険な役割を買って出たが、それでも危なくなったら逃げろと言っておいたはずだ。
「私達は囮役が終わった後に隠れ場所に匿われる手筈になっていたわ」
二番目に危険な仕事を頼むことになったので、役割が終わり次第比較的安全な場所に逃がすことになっていた。
一番危険なのが、大将首をとるために突っ込んだ月姫とその仲間達、愚連隊だったが、生き延びることをあきらめた覚悟の突撃だった。
「香樹は逃げなかったの。それどころか、落ちた賢を拾って突っ込んでいった。そして誰かを刺したところで、背後から斬られた」
香樹の着ていたくすんだ色の着物が真っ赤に染まっていたことを呟く。
返り血と自分自身の血で染まった真紅の着物を着て、幸寿は笑った。
「あの最初に焼き払われた区画に、幸寿の恋人が住んでいたって知ってた?」
月姫は知らなかった。男子と暴れまわることが多く、それ以外は家庭問題に忙殺されていた月姫は女達の噂話に興じる暇などなかった。
「香樹は、最初から生き延びるつもりなどなかったの、彼を殺したのが誰かわからないから、適当に奴らの中の誰かを殺して、それから死ぬつもりだった」
香樹は刺されながらもまだ、誰かを刺そうとあがいたという。倒れるその時まで。
「知っていたら」
香樹が来てめてはいけない覚悟を決めていたことに気づいていれば、あんな危険な役割を自分は割り振っただろうか。
「考えても無駄よ、香樹は、どこにいて何をやっていても、同じことをしたわ、生きていてもその心はもう死んでいたんでしょう」
この国では花嫁は赤い衣装をまとう。血染め赤い衣で香樹は冥府に嫁いでいった。
そこまで聞いて、限界だったのだろう。再び月姫は倒れた。
次に目を覚ました時には、同じように生き延びた愚連隊の仲間達が軍隊に連行されていったと聞かされた。
彼らは頑として月姫の名前だけは出さなかったという。
月姫はただ茫然としていた。すべてが自分の手の届かないところで進んでいく。無力感にさいなまれうつうつと過ごしていた。
それからほどなく父が亡くなった。
家族を支えていた月姫が倒れ、反乱軍は去ったものの、食料状況や治安など生活環境は一向に改善しないまま困窮していた家族の中で一番弱いものが死んだようだ。
月姫に代わって、家族を支えようと陽輝も頑張っていたが、物事には限界がある。
何とか近所の協力のもと簡素な葬儀を執り行った後日、転機は訪れた。
妃になれとの要請。なんの冗談かと思ったが、父親が名家の生まれだったが宮中にて何かをやらかして追い出されたらしい。家に適当な妃になれる娘がいないと言われた。
身体を損ない、弟の足手まといにしかなれない自分だ。妃になれば最低限の自分の生活と、今後の弟の支度金ぐらいは出る。
それくらいしか考えられなかった。
涙目で止める弟を振り切ってその話に乗った。
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