7 / 33
第六章
しおりを挟む
「さて、大船に乗った気になって気安く」
ペドロは太陽の神の仮装をし日輪の仮面をはめた。
「これで私はクローディスを名乗りヒローインを口説いておこう、そして仮装を解いてヒローインに求婚するがいい、さすればヒローインもうなずこう」
クローディスは目立たない仮想をして覆面をつけていた。
「むろん貴方様を信じておりますが」
クローディスは覆面の下からでも困惑の表情を浮かべていた。
仮面舞踏会。つまり複数の男女が仮面をつけて共に踊る。
「あらかじめヒローインの身に着ける衣装の情報は手に入れていた。それにあの姉妹のような従姉妹は常にお揃いの格好をしており、色味が淡い方がヒローインといつもきまっているとこの城に勤める女中から聞き取っていた。
そして、舞踏会に向かう。使用人が太鼓をたたいて入場を知らせた。そして誰が誰だかわからないように会えてばらばらに会場に入った。
そして薄い緑のドレスを着た少女と緋色のドレスを着た少女が二人並んでいるのを見た。レースのベールをすっぽりとかぶり顔が確認できないようにしている。
レースからこぼれる髪色を確認すれば緑のドレスがヒローインだろう。
楽団が円舞曲を演奏し始める。
レイナートとアントニオの兄弟はそれぞれ仮面をつけてそれを見守っていた。
「お嬢さんお相手をお願いしてもよろしいか」
ヒローインは差し出された手を取った。
そして、ヒローインは最初のステップを踏んだ。
「どうぞこの時はお相手させていただきます」
クルリクルリと二人は回る。
「この手を離したくないものだ」
「この手は様々なことに使うものずっと話さないでは困りますわ」
「貴女の方こそ私の手を取ってくださらない?」
「それはそれ、私の気が向いたならそうしましょう」
ヒローインはベールの向こうでどのような表情を浮かべているのか。思わずペドロはその顔を覗き込みそうになった。
「私の答えが聞きたく場その仮面をとった後にしてくださいませ。まさかそんなに広がった顔をしているわけではないでしょうね」
ヒローインは大きな仮面に笑った。
その時ポラチョはヒローインとビアトリスの小間使いを口説いていた。
マーゴットと呼ばれるその小間使いはヒローインとビアトリスよりやや年かさだが器量よしの部類に入る。
「貴女のようなきれいな方に会えるなんてもはやわが幸運は天の恵みを感謝するほど」
「いやですわ、私はあなた思っているよりちょっと欠点が多いのですわ」
二人は踊りながら楽しげにやり取りを繰り返した。
「きっと可愛らしいと思いますが」
「あら、祈りの時声が大きすぎると言われますわ」
「神様はきっと貴女に恵みをもたらしますよ、その美しい祈りにこたえないはずない」
くすくす笑いとともに二人は回る。クルクルと。
アントニオは小間使いの一人アリシラと踊り始めた。
「あらあらどなたかしら」
踊りの縁戚ということで普段はおとなしやかなアリシラも今日は陽気だ。
「どうなさいましたの、こんなところで」
「おや、私が誰かお分かりか」
アリシラは目を伏せる。
「手を見れば一目瞭然。こんな皺の浮いた手は城主様の弟君しかいらっしゃらない」
「おや、本当にこんな手をしたものがこの城にもう一人もいないのか?」
「ですがそんなふうに首を傾ける癖を持った方は一人だけです」
クルクルと人は回る。
ペドロは太陽の神の仮装をし日輪の仮面をはめた。
「これで私はクローディスを名乗りヒローインを口説いておこう、そして仮装を解いてヒローインに求婚するがいい、さすればヒローインもうなずこう」
クローディスは目立たない仮想をして覆面をつけていた。
「むろん貴方様を信じておりますが」
クローディスは覆面の下からでも困惑の表情を浮かべていた。
仮面舞踏会。つまり複数の男女が仮面をつけて共に踊る。
「あらかじめヒローインの身に着ける衣装の情報は手に入れていた。それにあの姉妹のような従姉妹は常にお揃いの格好をしており、色味が淡い方がヒローインといつもきまっているとこの城に勤める女中から聞き取っていた。
そして、舞踏会に向かう。使用人が太鼓をたたいて入場を知らせた。そして誰が誰だかわからないように会えてばらばらに会場に入った。
そして薄い緑のドレスを着た少女と緋色のドレスを着た少女が二人並んでいるのを見た。レースのベールをすっぽりとかぶり顔が確認できないようにしている。
レースからこぼれる髪色を確認すれば緑のドレスがヒローインだろう。
楽団が円舞曲を演奏し始める。
レイナートとアントニオの兄弟はそれぞれ仮面をつけてそれを見守っていた。
「お嬢さんお相手をお願いしてもよろしいか」
ヒローインは差し出された手を取った。
そして、ヒローインは最初のステップを踏んだ。
「どうぞこの時はお相手させていただきます」
クルリクルリと二人は回る。
「この手を離したくないものだ」
「この手は様々なことに使うものずっと話さないでは困りますわ」
「貴女の方こそ私の手を取ってくださらない?」
「それはそれ、私の気が向いたならそうしましょう」
ヒローインはベールの向こうでどのような表情を浮かべているのか。思わずペドロはその顔を覗き込みそうになった。
「私の答えが聞きたく場その仮面をとった後にしてくださいませ。まさかそんなに広がった顔をしているわけではないでしょうね」
ヒローインは大きな仮面に笑った。
その時ポラチョはヒローインとビアトリスの小間使いを口説いていた。
マーゴットと呼ばれるその小間使いはヒローインとビアトリスよりやや年かさだが器量よしの部類に入る。
「貴女のようなきれいな方に会えるなんてもはやわが幸運は天の恵みを感謝するほど」
「いやですわ、私はあなた思っているよりちょっと欠点が多いのですわ」
二人は踊りながら楽しげにやり取りを繰り返した。
「きっと可愛らしいと思いますが」
「あら、祈りの時声が大きすぎると言われますわ」
「神様はきっと貴女に恵みをもたらしますよ、その美しい祈りにこたえないはずない」
くすくす笑いとともに二人は回る。クルクルと。
アントニオは小間使いの一人アリシラと踊り始めた。
「あらあらどなたかしら」
踊りの縁戚ということで普段はおとなしやかなアリシラも今日は陽気だ。
「どうなさいましたの、こんなところで」
「おや、私が誰かお分かりか」
アリシラは目を伏せる。
「手を見れば一目瞭然。こんな皺の浮いた手は城主様の弟君しかいらっしゃらない」
「おや、本当にこんな手をしたものがこの城にもう一人もいないのか?」
「ですがそんなふうに首を傾ける癖を持った方は一人だけです」
クルクルと人は回る。
0
あなたにおすすめの小説
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
誰からも食べられずに捨てられたおからクッキーは異世界転生して肥満令嬢を幸福へ導く!
ariya
ファンタジー
誰にも食べられずゴミ箱に捨てられた「おからクッキー」は、異世界で150kgの絶望令嬢・ロザリンドと出会う。
転生チートを武器に、88kgの減量を導く!
婚約破棄され「豚令嬢」と罵られたロザリンドは、
クッキーの叱咤と分裂で空腹を乗り越え、
薔薇のように美しく咲き変わる。
舞踏会での王太子へのスカッとする一撃、
父との涙の再会、
そして最後の別れ――
「僕を食べてくれて、ありがとう」
捨てられた一枚が紡いだ、奇跡のダイエット革命!
※カクヨム・小説家になろうでも同時掲載中
※表紙イラストはAIに作成していただきました。
結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤
凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。
幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。
でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです!
ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】見えてますよ!
ユユ
恋愛
“何故”
私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。
美少女でもなければ醜くもなく。
優秀でもなければ出来損ないでもなく。
高貴でも無ければ下位貴族でもない。
富豪でなければ貧乏でもない。
中の中。
自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。
唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。
そしてあの言葉が聞こえてくる。
見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。
私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。
ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。
★注意★
・閑話にはR18要素を含みます。
読まなくても大丈夫です。
・作り話です。
・合わない方はご退出願います。
・完結しています。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる