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終章
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祭壇の前に立つすらりとした女のシルエットだけが浮かび上がる。
その全身は透けるほど薄い真っ白なベールに包まれていた。
その姿を見たとき同じようにその場に立っていたヒローインを思い出しクローディスの胸は痛んだ。
その立ち姿はとてもヒローインに似ていた。もしそのベールをめくりあげればヒローインがいないだろうか。そんなことを夢想する。
多少似てはいるだろうが、それはヒローインではない。ヒローインは失われてしまった。自分が台無しにしてしまったのだ。
どうして、あの時茂みに倒れこんだ二人をその場で糾弾しなかったのだろう。
自分は怖かったのかもしれない。ほかの男にあられもない姿を見せるヒローインの姿を直視することが。
だけどもしあの時勇気を振り絞ってそうしていたらそこにいたのはヒローインではなくただ自分をからかうための狂言だったとわかったのに。
そして恐る恐るその女性の前に立ちベールをめくりあげた。
にっこりと微笑むヒローインがいた。
思わず背後を振り返るとしてやったりとばかりににんまりと笑うレイナートの姿がある。
しばらく目をむいていたが、ペドロは苦笑してやれやれと拍手を始めた。
「ヒローイン」
「貴方の身柄は私の婿として、こちらで預かりますの、よろしくて」
ヒローインは笑顔を浮かべたままそう言った。
「もちろん、かまわないとも愛しい人」
クローディスはひっしとヒローインを抱きしめた。
婚礼の鐘を聞きながら、ビアトリスとベネディクトはしばし無言でたたずんでいた。
「やっぱり納得いかない気がするわ」
ビアトリスが口をとがらせる。
「しかし、ヒローインが良しと言ったのだろう、ならばそれで良しとするべきかと」
「私なら、あんな無礼な物言いをした男なんて絶対許さないわ」
やれやれとベネディクトはビアトリスの肩を抱く。
「まったく君は本当に執念深いな」
「当然よ、笑って許せる侮辱ではなかったわ」
いまだに憤懣がたまったままという顔を見てベネディクトはやれやれとため息をつく。
「どうやら申し込んだ決闘はうやむやとなりそうだな、このままあいつの首をとってしまったらそれこそヒローインが悲しむ」
「本当に、やっぱり首をさっさととるべきだったわ」
「それは本当に申し訳ない」
ベネディクトは苦笑する。
「そう言えば、我々の約束はどうなったのでしょうな」
ビアトリスの顔に朱が上った。
「私は別にうやむやにするつもりはないわよ」
「ま、しばらく時間を置きましょうか、蒿立て続けに婚礼ではレイナート殿の財布が痛いことになりそうだ」
「そんなことは無くてよ、私の実の両親が残してくれた財産だってあるんだし」
キャンキャンとなく子犬を見ているようにベネディクトは笑った。
そのころ、洲巻にされたヨハンは連行されたもののいつまでもその姿のまま放置されていた。
その全身は透けるほど薄い真っ白なベールに包まれていた。
その姿を見たとき同じようにその場に立っていたヒローインを思い出しクローディスの胸は痛んだ。
その立ち姿はとてもヒローインに似ていた。もしそのベールをめくりあげればヒローインがいないだろうか。そんなことを夢想する。
多少似てはいるだろうが、それはヒローインではない。ヒローインは失われてしまった。自分が台無しにしてしまったのだ。
どうして、あの時茂みに倒れこんだ二人をその場で糾弾しなかったのだろう。
自分は怖かったのかもしれない。ほかの男にあられもない姿を見せるヒローインの姿を直視することが。
だけどもしあの時勇気を振り絞ってそうしていたらそこにいたのはヒローインではなくただ自分をからかうための狂言だったとわかったのに。
そして恐る恐るその女性の前に立ちベールをめくりあげた。
にっこりと微笑むヒローインがいた。
思わず背後を振り返るとしてやったりとばかりににんまりと笑うレイナートの姿がある。
しばらく目をむいていたが、ペドロは苦笑してやれやれと拍手を始めた。
「ヒローイン」
「貴方の身柄は私の婿として、こちらで預かりますの、よろしくて」
ヒローインは笑顔を浮かべたままそう言った。
「もちろん、かまわないとも愛しい人」
クローディスはひっしとヒローインを抱きしめた。
婚礼の鐘を聞きながら、ビアトリスとベネディクトはしばし無言でたたずんでいた。
「やっぱり納得いかない気がするわ」
ビアトリスが口をとがらせる。
「しかし、ヒローインが良しと言ったのだろう、ならばそれで良しとするべきかと」
「私なら、あんな無礼な物言いをした男なんて絶対許さないわ」
やれやれとベネディクトはビアトリスの肩を抱く。
「まったく君は本当に執念深いな」
「当然よ、笑って許せる侮辱ではなかったわ」
いまだに憤懣がたまったままという顔を見てベネディクトはやれやれとため息をつく。
「どうやら申し込んだ決闘はうやむやとなりそうだな、このままあいつの首をとってしまったらそれこそヒローインが悲しむ」
「本当に、やっぱり首をさっさととるべきだったわ」
「それは本当に申し訳ない」
ベネディクトは苦笑する。
「そう言えば、我々の約束はどうなったのでしょうな」
ビアトリスの顔に朱が上った。
「私は別にうやむやにするつもりはないわよ」
「ま、しばらく時間を置きましょうか、蒿立て続けに婚礼ではレイナート殿の財布が痛いことになりそうだ」
「そんなことは無くてよ、私の実の両親が残してくれた財産だってあるんだし」
キャンキャンとなく子犬を見ているようにベネディクトは笑った。
そのころ、洲巻にされたヨハンは連行されたもののいつまでもその姿のまま放置されていた。
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