47 / 54
試合、それは悲しく
しおりを挟む
対戦相手をカラは見た。軽く目をこすってみる。
しかし、その対戦相手は変わらず目の前にいた。
「まじ?」
「俺も信じられん」
タロも同意する。
目の前の光景は、カラとタロのの常識から大きく外れたものだった。
見る影もなくやつれた女達が、目の前で整列していた。
そして、背後のカラの鍛えた女達を見やる。
タロの丹精込めた食事と二日間の休息により、栄養が隅々にまでいきわたってつやつやと輝いている。
そして、きっちり洗濯をした運動着から覗く手足は引き締まり、身のこなしも敏捷そうだ。
対して、相手方を見れば、ぎすぎすというオノマトペが聞こえてきそうだ。後は何だろう、ぱさぱさだろうか。
なんだか見る影もなくやつれている。そのやせ細った顔の中目だけがぎらぎらと不穏な光を放つ。
はっきり言って不気味だ。
「あれは一体?」
「栄養不足というより、栄養の偏りかなあ」
少々パサつき気味なのはビタミン不足かもしれないとタロは推測する。
「明らかに睡眠不足もありますね、大丈夫なんでしょうか」
ぎらついた目はうっすらと充血している。
なんだかホラー、それもゾンビ物を思い出した。
割と状態のいいゾンビのようだ。
「まさかと思うが、まさか20世紀の初頭の精神論か?」
身体を鍛えるという概念あたりは前時代的だと思っていたが、そこまで古いとは思ってなかった。
「勝負が見えすぎている」
カラは絶望のあまり立ちくらみをおこしていた。
カラが絶望したのは、あまりにも楽に勝てる相手だったからだ。この状態の相手に勝ったとしてもとても自慢にはならない。
「あれだな、元気いっぱいの子供と杖ついてる老人の徒競走みたいな感じか?」
タロのたとえが的確過ぎた。
「なんだろう、この無力感」
あれほど知恵を絞ったのに、それが全部水泡に帰したような、徒労という言葉が、これほどふさわしい場面もそうないというか。
がっくりと肩を落とすからにタロが慰めるように手を置いた。
あまりにもカラが哀れだった。
カラが鍛えた相手は、それはもう軽快に障害物を超えていく。
動きに切れがいい。
そして相手方は、悲しいことに完走者が一人もいなかった。
完走の前に全員倒れ、立ち上がることなく終わった。
「目安にもならなかったな」
「うん」
もっといい勝負をさせてやりたかった、こんな勝ち方、何のカタルシスもない。
「どうするんだよなあ」
少なからず予算も使っているはずだ。カラは悪くない、まったくもって悪くないけれど、やっぱりやるだけ無駄な試合な気がした。
しかし、その対戦相手は変わらず目の前にいた。
「まじ?」
「俺も信じられん」
タロも同意する。
目の前の光景は、カラとタロのの常識から大きく外れたものだった。
見る影もなくやつれた女達が、目の前で整列していた。
そして、背後のカラの鍛えた女達を見やる。
タロの丹精込めた食事と二日間の休息により、栄養が隅々にまでいきわたってつやつやと輝いている。
そして、きっちり洗濯をした運動着から覗く手足は引き締まり、身のこなしも敏捷そうだ。
対して、相手方を見れば、ぎすぎすというオノマトペが聞こえてきそうだ。後は何だろう、ぱさぱさだろうか。
なんだか見る影もなくやつれている。そのやせ細った顔の中目だけがぎらぎらと不穏な光を放つ。
はっきり言って不気味だ。
「あれは一体?」
「栄養不足というより、栄養の偏りかなあ」
少々パサつき気味なのはビタミン不足かもしれないとタロは推測する。
「明らかに睡眠不足もありますね、大丈夫なんでしょうか」
ぎらついた目はうっすらと充血している。
なんだかホラー、それもゾンビ物を思い出した。
割と状態のいいゾンビのようだ。
「まさかと思うが、まさか20世紀の初頭の精神論か?」
身体を鍛えるという概念あたりは前時代的だと思っていたが、そこまで古いとは思ってなかった。
「勝負が見えすぎている」
カラは絶望のあまり立ちくらみをおこしていた。
カラが絶望したのは、あまりにも楽に勝てる相手だったからだ。この状態の相手に勝ったとしてもとても自慢にはならない。
「あれだな、元気いっぱいの子供と杖ついてる老人の徒競走みたいな感じか?」
タロのたとえが的確過ぎた。
「なんだろう、この無力感」
あれほど知恵を絞ったのに、それが全部水泡に帰したような、徒労という言葉が、これほどふさわしい場面もそうないというか。
がっくりと肩を落とすからにタロが慰めるように手を置いた。
あまりにもカラが哀れだった。
カラが鍛えた相手は、それはもう軽快に障害物を超えていく。
動きに切れがいい。
そして相手方は、悲しいことに完走者が一人もいなかった。
完走の前に全員倒れ、立ち上がることなく終わった。
「目安にもならなかったな」
「うん」
もっといい勝負をさせてやりたかった、こんな勝ち方、何のカタルシスもない。
「どうするんだよなあ」
少なからず予算も使っているはずだ。カラは悪くない、まったくもって悪くないけれど、やっぱりやるだけ無駄な試合な気がした。
1
あなたにおすすめの小説
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる