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悪い夢

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 緑滴る森の手前に小さな小川があり、子供達はそれを飛び越えていく。
 森の入り口近くなら、大人に遊んでいいと言われていたのだ。
 だけど奥に行ってはいけない、手前の、村が見える場所だけ。
 子供たちはどんどん川を飛び越えていく。一人の少女が、川を飛び越えようとして、河の真ん中に見事に落っこちた。
 水しぶきが上がり、少女は茫然と川の真ん中に立ち尽くす。
 周りの子供達も何やら慌てて、少女を指さして騒ぎ始めた。

 カラは薄闇の中目を覚ました。二番目に嫌な夢を見た。
 一番嫌な夢はカラが死んだときの夢だ。
 ありえない方向から見える自分の手と、バチバチと火花が散っている。そしてすべてが真っ白に染まった。
 幼い頃から自分の周囲にない物の夢を見る。
 周辺は木と石で作られた建物しかないのに、見たこともない白亜の建物。そして明らかに周辺の人間とは人種の違う人達と会話したりしている自分の夢。
 それらを少しずつ集めて検証した結果、それは前世の夢を見ているという結果になった。
 そして、村の教会で、前世の記憶を持つ人がほかにもいるという話を聞いて、カラは村の長に話を聞いてもらうことにした。
 カラの前世はどうやら今いる世界と異なる世界らしい。その異世界の知識をもたらす転生者はとても優遇されていると村の長は言った。
 その結果、カラは本来なら許されない街の学校へ通うことができた。
 また、他の転生者から話を聞くこともでき、いろいろと前途に希望を膨らませたのだが、結局それは挫折した。
 カラの知識はあまりにも漠然としすぎており、まったく使い物にならないということがわかったからだ。
 便利な知識をもたらしてくれる転生者というものに周囲は憧れに似た気持ちを抱いていたが、カラが使い物にならないと聞くと、期待した分、からの評価は下がり、結局、陰で、残念な転生者と呼ばれながら生きていくことになった。

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