25 / 54
別方向を見てみよう。
しおりを挟む
翌日、献立を書いていたタロが話を聞きたがった。
「たいしたことはしてませんよ、ちょっと腹筋運動のやり方を教えただけです」
「え、それだけ?」
「後はお菓子を減らすように指導しました、それだけです」
当たり前すぎる対処法にタロは少し気落ちした。
「王道こそ正道です」
カラはそう言って、献立表を覗き込む。
「腹筋運動をして、それが終わったら少しだけお菓子を食べていいと指導したんです、筋トレをすると、筋肉が損傷するんですよね、その直後に食べたものは、筋肉のほうに回るので、脂肪になりにくいんですよね」
「ああ、そういうもんなんだ」
「筋肉の維持のため、ワークアウトの後、甘い飲み物は定番ですね」
筋肉に甘いものは厳禁だと思っていたが、意外な話を聞いた。
「ああ、そういえば蜂蜜レモン」
タロは体育会系部活の定番おやつを思い出す。
野球部のマネージャーなんかが作るんだよな、疲労回復効果のあるクエン酸と筋肉維持に役立つ糖分を含んだ蜂蜜、結構合理的なおやつだったんだな。
しみじみと懐古の情に浸りつつ、蜂蜜レモンの味を思い出していた。
「あ、これいいんじゃないか、蜂蜜レモン、運動が終わった後のおやつに用意しておけば、それも体質改善の一環だよな」
「確かに、疲労回復効果はあるかもしれないけれど、蜂蜜はともかくレモンに相当するものって何ですかね」
栽培していたのは野菜が主で、果物はあまり詳しくない。
「確か、アララスとかいうパイナップルみたいなのが、あれはだいぶ酸っぱかった。確か酢の代わりに使うらしいが」
「手に入るかな」
蜂蜜レモンに、もしなるなら、少しだけ食べてみたい気がした。
子供の頃、一緒に通っていた教室で、友達が分けてくれたのを思い出す。
「筋肉増強するのはいいけど、脂肪はどこに行くんだ?」
タロが素朴な疑問を呈した。
「それは、ぶっきんが付けば、腹筋がお腹周りを締め上げるので、脂肪も抑え込まれることになるかな」
「そうなの?」
「ほら、栄養失調の人がお腹だけポッコリしてるのを見たことないかな、あれは腹筋が無くなって、腹圧で内臓が飛び出しているの、腹筋なしで締まったウエストはあり得ないから」
「なるほどね、つまり、食事制限だけしても、帰って身体がたるんで終わるわけだ」
「その通り」
「わかります、さぞやご苦労されたでしょう」
恰幅のいい、かつての自分のような料理長を前にして、タロはいろいろと話を合わせつつ、見解を広めていた。
仕事内容に関する話を聞きながら、献立を考える。
最終的にこの人とスタッフで作れるようじゃなきゃ困るからなあ。
今後のこともかかっているのだ。相手の実力を測るのも仕事の一つになる。
「こちらにもこんな話がありましてねえ」
江戸時代に本当にあった、江戸城料理版の話をする。
「美味しいものはいくらでも作れるが、とその料理人は言ったんですよ」
江戸城の賄の漬物が異様にまずい、あまりのまずさに上に苦情を言ったところ、家老が料理人を呼び出して話を聞くと。
という話だ。
「美味しくはいくらでも作れる、しかし美味しい漬物を作ったらあいつらはここを先途と食べまくり、今でもギリギリの食費が到底足りなくなる。まずく作るのは食費を抑える工夫だといったんですよ」
料理長なしみじみと頷く。
「彼の苦悩が手に取るようにわかる」
「ええ、上に立つものはいつだってそういうもんです」
タロは巧みにおだてながら相手の口を軽くする。
最もタロは江戸幕府の話をするつもりはなかった、何しろ幕府という、日本人以外の地球人には理解不能な特殊な政治形態をこの世界の人間が分かるはずがなかったからだ。
「じゃ、設備と作業ルー店に関してやはり大変なご苦労が」
いかにも同情するという風に話を持っていけば面白いように話を続ける。
とにかく話をさせる。個人商店の盛り上げ役をやっていた時のスキルを存分に生かす仕様だった。
「たいしたことはしてませんよ、ちょっと腹筋運動のやり方を教えただけです」
「え、それだけ?」
「後はお菓子を減らすように指導しました、それだけです」
当たり前すぎる対処法にタロは少し気落ちした。
「王道こそ正道です」
カラはそう言って、献立表を覗き込む。
「腹筋運動をして、それが終わったら少しだけお菓子を食べていいと指導したんです、筋トレをすると、筋肉が損傷するんですよね、その直後に食べたものは、筋肉のほうに回るので、脂肪になりにくいんですよね」
「ああ、そういうもんなんだ」
「筋肉の維持のため、ワークアウトの後、甘い飲み物は定番ですね」
筋肉に甘いものは厳禁だと思っていたが、意外な話を聞いた。
「ああ、そういえば蜂蜜レモン」
タロは体育会系部活の定番おやつを思い出す。
野球部のマネージャーなんかが作るんだよな、疲労回復効果のあるクエン酸と筋肉維持に役立つ糖分を含んだ蜂蜜、結構合理的なおやつだったんだな。
しみじみと懐古の情に浸りつつ、蜂蜜レモンの味を思い出していた。
「あ、これいいんじゃないか、蜂蜜レモン、運動が終わった後のおやつに用意しておけば、それも体質改善の一環だよな」
「確かに、疲労回復効果はあるかもしれないけれど、蜂蜜はともかくレモンに相当するものって何ですかね」
栽培していたのは野菜が主で、果物はあまり詳しくない。
「確か、アララスとかいうパイナップルみたいなのが、あれはだいぶ酸っぱかった。確か酢の代わりに使うらしいが」
「手に入るかな」
蜂蜜レモンに、もしなるなら、少しだけ食べてみたい気がした。
子供の頃、一緒に通っていた教室で、友達が分けてくれたのを思い出す。
「筋肉増強するのはいいけど、脂肪はどこに行くんだ?」
タロが素朴な疑問を呈した。
「それは、ぶっきんが付けば、腹筋がお腹周りを締め上げるので、脂肪も抑え込まれることになるかな」
「そうなの?」
「ほら、栄養失調の人がお腹だけポッコリしてるのを見たことないかな、あれは腹筋が無くなって、腹圧で内臓が飛び出しているの、腹筋なしで締まったウエストはあり得ないから」
「なるほどね、つまり、食事制限だけしても、帰って身体がたるんで終わるわけだ」
「その通り」
「わかります、さぞやご苦労されたでしょう」
恰幅のいい、かつての自分のような料理長を前にして、タロはいろいろと話を合わせつつ、見解を広めていた。
仕事内容に関する話を聞きながら、献立を考える。
最終的にこの人とスタッフで作れるようじゃなきゃ困るからなあ。
今後のこともかかっているのだ。相手の実力を測るのも仕事の一つになる。
「こちらにもこんな話がありましてねえ」
江戸時代に本当にあった、江戸城料理版の話をする。
「美味しいものはいくらでも作れるが、とその料理人は言ったんですよ」
江戸城の賄の漬物が異様にまずい、あまりのまずさに上に苦情を言ったところ、家老が料理人を呼び出して話を聞くと。
という話だ。
「美味しくはいくらでも作れる、しかし美味しい漬物を作ったらあいつらはここを先途と食べまくり、今でもギリギリの食費が到底足りなくなる。まずく作るのは食費を抑える工夫だといったんですよ」
料理長なしみじみと頷く。
「彼の苦悩が手に取るようにわかる」
「ええ、上に立つものはいつだってそういうもんです」
タロは巧みにおだてながら相手の口を軽くする。
最もタロは江戸幕府の話をするつもりはなかった、何しろ幕府という、日本人以外の地球人には理解不能な特殊な政治形態をこの世界の人間が分かるはずがなかったからだ。
「じゃ、設備と作業ルー店に関してやはり大変なご苦労が」
いかにも同情するという風に話を持っていけば面白いように話を続ける。
とにかく話をさせる。個人商店の盛り上げ役をやっていた時のスキルを存分に生かす仕様だった。
1
あなたにおすすめの小説
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる