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4.GAME 0.ver.

???

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「――おかしい。超電磁パルス、ピースブリンガーによる聖遺物無効は絶対だ、どんなに強大な防護魔法でも破ることはできないはず。それなのに……」

 古今東西ありとあらゆる聖遺物がそのかつての威厳も尊厳もなく、まるで、動物の皮を剥ぎ取り剥製にした旧時代の惨たらしさの象徴のように飾り立てられた広い部屋。

 そう、この部屋にあるのは、たかがゲームが形作る仮想現実の偽物ではない。

 正真正銘、本物の聖遺物。

 だが今は。

 光を当てられ、額に入れられ、ショーケースに閉じ込められ、理路整然と収められて輝かしい伝説の成れの果ては見世物へと落ちぶれている。

 その残虐じみた博物の中心で、ぼそりと一人の男が呟いた。

 その狼狽の滲む声を聞く者は誰もいない。

 これだけのオリジナルを掻き集めても、私達が探し求める物はとうとう見つからなかった。

 真の奇蹟を為す聖遺物を。

 だからこそ、【イマジンコード】にて顕現される幻想に全てをかけたというのに。

「あの聖遺物は何だ? 何をした?」

 ナンバー・コーデックス・夕霧・ゼロゼロスリーナインに我々が調整したあの聖遺物の性能は完璧だった。

 0.5秒という制約付きながら、この機械と魔法によって形成されし外殻において最強の聖遺物。

 どんな聖遺物だろうと関係ない。それが魔力で顕現したならそれは全てがピースブリンガーの効果の範囲内だ。

 最新鋭の破滅からヒトの文明を守った伝説の聖遺物は、あの聖剣にすら匹敵するはずだった。

 それを、あのスポンサーすら付いてない無名のランカーごときが倒しただと?

 あり得ない、あの対戦はただの調整に過ぎなかった。

 暗い部屋に浮かぶホログラムディスプレイであの対戦のアーカイブを見ているが、あの聖遺物がピースブリンガーの影響を受けている様子はない。

「……あれは本当に聖遺物なのか」

 もし、私の疑念が正しければ。

 私の他愛ない妄言だと、私自身がその疑念を否定したがっている。

 しかし。

「……もしかして、あの魔剣は」


        ーー???
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