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天羽2
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※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
~前回の適当なあらすじ~
パシラレ男子天羽は校舎裏に引きずり込まれた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「俺達、今金なくて困ってるんだよね。天羽君お金貸してくんない?」
進級早々ついてないことばかりだ。
今まさに先輩達にカツアゲされそうになっている。
「ぼ、僕、現金あまり持ってな――」
ガッと足で壁ドンされて肝が冷える。
「天羽君さ、天羽グループの会長の孫で、現社長の息子だよね。お金腐るほどもってるっしょ?」
天羽グループは経営トップを一族で固めたガッチガチの同族経営グループだ。
だがしかし、皆が皆仲がいいわけではない。
穏便に後継者争いが済むわけもなく、天辺のそこはもう、睨み合いの冷戦状態で頭の中ではいつも血の雨が降っている。そんな組織だ。
僕は確かに会長の孫でグループ会社の代表取締役兼社長の息子だが、気が弱く、早々に後継者争いからは戦線離脱したため、年の離れた兄弟達からは無害として可愛がられている。
「僕は……天羽でも底辺なので――。先輩達の方がお金をお持ちではないでしょうか!?」
世羅学園は設備が整っているだけあり、学費が異常に高く、一定以上の富裕層しか入学出来ない。
おこづかいとして毎月多額の資金を仕送りされる生徒達が、不用意に多額の現金を所持しなくて済むように、学園側は通常学生証で決済されるよう設備を整えている。そのため、日常生活で現金がなくて困ることなどまずない。
むしろ、現金を持っている学生の方が珍しい。
そんな彼らがレアな現金をカツアゲしようとするこの行為の大抵の目的は、出せない現金の変わりに……といった悪趣味な建前を掲げて、憂さ晴らしするための人間サンドバックが欲しいだけなのだ。
「ああ?」
「ひぃぃっ、ごめんなさい!」
「金がないなら――――、……………………体でもいいぜ?」
「……へ?」
思考が真っ白に染まる。
人間サンドバックか、やはり人間サンドバックが目的か!
殴られるのは嫌だ!!
「お前、男の癖に肉付きいいよな。何か美味そうだし」
「だな、それで許してやるよ」
「!!?」
先輩達が僕の学ランの襟を掴み、ブチブチっと音を立てて制服を引きちぎる。
「ひっ」
「色シッロ!さすが箱入り……」
「柔らかそうな肉――」
先輩達の方からじゅるりと音が聞こえた。
肉!? 今肉って言った!? 美味そうって、僕を食べる気ですか!? サンドバックなら制服を引きちぎる必要ないよね!?
不穏な言葉を放つ先輩達が僕に手を伸ばしたその時、1つの影が僕と先輩達の間を遮る。
先輩達の前に立ちはだかるその姿を前にして、僕は1つの既視感を覚えた。
あれ? どっかで見たことある光景?
「止めなよ! 嫌がってるじゃないか!」
そう言って先輩達を睨むその背を前に、1つの記憶がまるで走馬灯のようにフル回転で僕の頭の中を駆け巡り、騒がしい少女の声が脳内に響きわたった。
――ぎゃーっ! 学ラン素敵っ!――
…………
――ぐへへ、海様エッロ!――
……………………
――あ、兄ぃ。コンビニでアイス買ってきて――
――自分で買ってこいよ!――
――今あたし、手が離せないのよ! 陸様との蜜月だから~。きゃーっ――
――何が蜜月だ! それ、年齢制限無いだろ!――
――確かにないけど、思わせぶりなのよね。妄想が滾る!――
――滾るって……お前ほんとに大丈夫か?――
――まあ、いいじゃない。主人公は私と同じ健全な女の子なんだし――
――健全ねぇ? 男子部に主人公の女の子が入学ってだけで兄ちゃんそのゲームに不信感しかねぇよ――
そうだ、僕はそいつの兄ちゃんだった。
その世界ではこの世界に酷似した『ヤンキーパラダイス』という、登場人物のほとんどがヤンキーという異色の乙女ゲームがあった。
うそ……僕、もしかして『ヤンパラ』に転生してる――!?
その世界の僕には妹がいた。その妹はよくそれをプレーしていたのだ。
確か主人公の名は――
「琴吹……輝?」
僕がその名を呟くと、名前を呼ばれた彼女は僕の方を見て優しく微笑んだ。
~前回の適当なあらすじ~
パシラレ男子天羽は校舎裏に引きずり込まれた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「俺達、今金なくて困ってるんだよね。天羽君お金貸してくんない?」
進級早々ついてないことばかりだ。
今まさに先輩達にカツアゲされそうになっている。
「ぼ、僕、現金あまり持ってな――」
ガッと足で壁ドンされて肝が冷える。
「天羽君さ、天羽グループの会長の孫で、現社長の息子だよね。お金腐るほどもってるっしょ?」
天羽グループは経営トップを一族で固めたガッチガチの同族経営グループだ。
だがしかし、皆が皆仲がいいわけではない。
穏便に後継者争いが済むわけもなく、天辺のそこはもう、睨み合いの冷戦状態で頭の中ではいつも血の雨が降っている。そんな組織だ。
僕は確かに会長の孫でグループ会社の代表取締役兼社長の息子だが、気が弱く、早々に後継者争いからは戦線離脱したため、年の離れた兄弟達からは無害として可愛がられている。
「僕は……天羽でも底辺なので――。先輩達の方がお金をお持ちではないでしょうか!?」
世羅学園は設備が整っているだけあり、学費が異常に高く、一定以上の富裕層しか入学出来ない。
おこづかいとして毎月多額の資金を仕送りされる生徒達が、不用意に多額の現金を所持しなくて済むように、学園側は通常学生証で決済されるよう設備を整えている。そのため、日常生活で現金がなくて困ることなどまずない。
むしろ、現金を持っている学生の方が珍しい。
そんな彼らがレアな現金をカツアゲしようとするこの行為の大抵の目的は、出せない現金の変わりに……といった悪趣味な建前を掲げて、憂さ晴らしするための人間サンドバックが欲しいだけなのだ。
「ああ?」
「ひぃぃっ、ごめんなさい!」
「金がないなら――――、……………………体でもいいぜ?」
「……へ?」
思考が真っ白に染まる。
人間サンドバックか、やはり人間サンドバックが目的か!
殴られるのは嫌だ!!
「お前、男の癖に肉付きいいよな。何か美味そうだし」
「だな、それで許してやるよ」
「!!?」
先輩達が僕の学ランの襟を掴み、ブチブチっと音を立てて制服を引きちぎる。
「ひっ」
「色シッロ!さすが箱入り……」
「柔らかそうな肉――」
先輩達の方からじゅるりと音が聞こえた。
肉!? 今肉って言った!? 美味そうって、僕を食べる気ですか!? サンドバックなら制服を引きちぎる必要ないよね!?
不穏な言葉を放つ先輩達が僕に手を伸ばしたその時、1つの影が僕と先輩達の間を遮る。
先輩達の前に立ちはだかるその姿を前にして、僕は1つの既視感を覚えた。
あれ? どっかで見たことある光景?
「止めなよ! 嫌がってるじゃないか!」
そう言って先輩達を睨むその背を前に、1つの記憶がまるで走馬灯のようにフル回転で僕の頭の中を駆け巡り、騒がしい少女の声が脳内に響きわたった。
――ぎゃーっ! 学ラン素敵っ!――
…………
――ぐへへ、海様エッロ!――
……………………
――あ、兄ぃ。コンビニでアイス買ってきて――
――自分で買ってこいよ!――
――今あたし、手が離せないのよ! 陸様との蜜月だから~。きゃーっ――
――何が蜜月だ! それ、年齢制限無いだろ!――
――確かにないけど、思わせぶりなのよね。妄想が滾る!――
――滾るって……お前ほんとに大丈夫か?――
――まあ、いいじゃない。主人公は私と同じ健全な女の子なんだし――
――健全ねぇ? 男子部に主人公の女の子が入学ってだけで兄ちゃんそのゲームに不信感しかねぇよ――
そうだ、僕はそいつの兄ちゃんだった。
その世界ではこの世界に酷似した『ヤンキーパラダイス』という、登場人物のほとんどがヤンキーという異色の乙女ゲームがあった。
うそ……僕、もしかして『ヤンパラ』に転生してる――!?
その世界の僕には妹がいた。その妹はよくそれをプレーしていたのだ。
確か主人公の名は――
「琴吹……輝?」
僕がその名を呟くと、名前を呼ばれた彼女は僕の方を見て優しく微笑んだ。
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