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それからぼくたちは話をしました。この人は、せいぎのみかたの仕事をしていて、この町にはパトロールのために来ているのだそうです。そして、ぼくのお父さんが働いている会社にも行く予定なのだとか。

ぼくは、お父さんの仕事場に行くのは初めてなのでワクワクしました。でも、お父さんに見つかるのはちょっとこわいです。

ぼくは、自分のお父さんのことを話しました。すると、せいぎのみかたの人はうなずいて言いました。

「りょうたくんのお父様とは知り合いですし、事情を説明すればわかっていただけると思いますよ」

「ほんとうに?」

「はい。でも、まずは私の方からお願いしてみましょう。それでダメだったら諦めてくださいね」

そして、お父さんの会社の前に着きました。せいぎのみかたがドアを開けると、中に入りました。ぼくもついていきます。

受付の人に話しかけて、お父さんのところへ案内してくれないかと頼みました。すると、その人は首を横に振って言いました。

「申し訳ありませんが、部外者を社内に入れることはできません」

「そこを何とかなりませんか?」

「なりませんね。さあ、帰った帰った」

けんもほろろに追い払われそうになりましたが、その時です。奥の方から声が聞こえてきました。それは、聞き慣れたお父さんの声でした。

ぼくは嬉しくなって走り出しました。お父さんの姿が見えたので、思いっきりジャンプしました。でも、お父さんは受け止めてくれないので、そのまま転びました。

すると、お父さんは慌てて駆け寄ってきて、抱き起こしました。ぼくは泣きべそをかきながら言いました。

「ねえ、聞いてよ。ぼくね、電車の中で具合が悪くなったんだけど、この人が助けてくれたんだよ」

「そうなのか?」

お父さんはせいぎのみかたに問いかけました。せいぎのみかたが答える前に、ぼくは急いでリュックサックの中からお菓子を取り出しました。

「これ、ぼくが選んだお菓子なんだ!」

「ありがとう。せっかくだからいただこうか」

お父さんは、お菓子を食べ始めました。ぼくはその様子をじっと見つめます。すると、お父さんは言いました。

「美味しいぞ」

「えっ? ぼくが作ったわけじゃないのに、何でわざわざそんなことを言うの?」

「お前が一生懸命選んでくれたんだろう?」

「ま、まあね」

「それなら、美味しいさ」

「ふーん」

「それより、こんなところで何をしていたんだ?」

「えっと……」

ぼくが戸惑っていると、せいぎのみたが間に割って入りました。そして、ぼくの代わりに説明を始めました。

「実は、りょうたくんが電車で具合が悪くなってしまったんです。それで私がここまで連れてきたんです」

「なるほど」

「それで、りょうたくんですが、お父様に会いたがっていたんです」

「俺に?」

「はい。それで、お仕事場を見せてあげてもいいですか?」

せいぎのみかたは頭を下げて言いました。

「お願いします」

お父さんは少し考えてから言いました。

「わかった。見せてやろう」

「やった! 」

ぼくは喜びました。
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