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19. 夢幻結界

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「ちょ、ちょっと何するのよ!監視カメラがついてるから止めなさい」
シルバーは僕の胸を押して距離を取る。

「ゴメン……」
僕は謝った。

「もう……」

「……」

沈黙が続く。気まずい空気だ。

「……」

「……」

暫くして地下59階層に辿り着いた。

「ここが私が普段住んでいる地下59階層よ」

「へぇー」

僕たちはエレベーターを降りると、そのまま歩き出した。目の前には広大な空間が広がっていた。天井が高いため圧迫感は少ない。地上が夜のためか天井はプラネタリウムのように星空で満たされている。辺りを見回すと、様々な店があった。コンビニやレストラン、衣料品店、雑貨屋、書店、レンタルビデオショップ、スーパーマーケットなどがある。

「この辺りは商業施設が立ち並んでいて、このエリアだけで一通りの買い物ができるわ」

「そうだな」

「こっちよ」

シルバーについて歩く。

「この先は?」

「この先には歓楽街があるのよ。飲食店がたくさんあって、いつも賑やかなのよ」

「へぇ、楽しみだな」

僕たちは飲食店が立ち並ぶ場所にやってきた。飲み屋やスナック、お洒落なオープンカフェやバーなどもある。

「私が住んでいる宿はこの近くにあるの。ほら、見えてきたでしょ」

彼女が指差す方向を見ると、大きな看板に『INN』と書かれていた。どうやらホテルらしい。シルバーの後に続いてホテルに入り、受付を素通りしてエレベーターに乗る。

「受付はいいのか?」

「いいのよ」

シルバーはそう言うと3階のボタンを押した。エレベーターを降りて少し歩くと307号室に着いた。

「どうぞ、入って」

「失礼します」
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