上 下
160 / 217
24. ハリネズミ

24-1

しおりを挟む
エミルは真っ直ぐに僕の顔を見つめている。そして、僕はその視線から目を逸らすことができなかった。……見惚れてしまったのだ。僕は彼女の瞳の中に吸い込まれそうになった。まるで深い森の中に迷い込んだかのような不思議な気持ちにさせる神秘的な魅力があった。僕はそれに抗うことができない。彼女の目を見たまま何も言うことができずにいると、彼女は僕の手を握ってきた。それから手を引いて歩き出した。彼女の体温を感じる。柔らかくて温かくて優しい。彼女の手に引かれるままについていく。
しおりを挟む

処理中です...