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25. Product Liability

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仕事が終わると、僕は自宅に帰らずに、七海と一緒に彼女の家に向かった。そして、玄関で靴を脱いで、そのままリビングに入る。

すると、そこではレナがカーペットの上で仰向けになってVRゲームで遊んでいた。彼女はパーカーとショートパンツというラフな格好で、頭にはVRゲーム用のフルフェイスヘルメットをかぶっている。小柄な割に豊満な彼女の胸が重力によって横に流されている様子が服の上からでも分かった。彼女の意識は完全にゲームの世界に接続されている。僕と七海はソファーに座ってお茶を飲みながらその様子を眺めていた。

「あのさぁ、七海……」

「ん? 何?」

「レナってずっとゲームの世界に入ってるのか?」

僕はレナの方を見ながら訊いた。彼女のことが少し心配になったからだ。すると、隣にいる七海は苦笑いしながら答える。

「あはは……、うーん、どうだろうね……。一日中というわけじゃないと思うけど……、食事とトイレの時間以外はほとんどログインしてるかも……」

「マジか……」

僕はレナを見つめた。彼女は寝転がったまま動かない。まるで死体のようだと思った。……大丈夫なのか? このままだと彼女、廃人になるぞ? いくらなんでも限度があるだろう……。そう思った僕は、彼女に近づく。彼女の意識は完全にゲームの世界に接続しているため、声を大きくして叫んだ。

「おい!レナー!!」

だが、返事はない。やはり駄目か……。僕は大きくため息をついた。七海はそんな僕を見てクスッと笑う。まあ、仕方ない。とりあえず、今日のところは諦めるとしよう。僕は七海に顔を向ける。

「ダメだな……、全く反応がない……」

「そうだね……、あ、でも、どうしても起こしたいときは、スマホでメッセージを送ったり電話したりすればいいから……」

なるほど……、まあ夕食の時間になったら起きるだろう。それまで待てばいい。僕はそう思いながら、七海の隣に座った。七海は僕に向かってニコッと微笑む。彼女はいつもの黒いドレスを着ている。露出度は低いが、体のラインがはっきりとわかるデザインだ。そのせいで胸や腰回りの曲線が強調されていて、目のやり場に困ってしまう……。僕は思わず視線を逸らす……。そして、彼女の顔の方に目を向けると、綺麗な瞳と目が合った。彼女の金色の瞳には妖しい光が宿っていた。吸い込まれそうな感覚を覚える。しばらく見つめ合っていると、彼女はクスッと笑い、急に立ち上がった。

「……京ちゃん……、今はダメだよ……、二人だけになったらしよっか……」

彼女は頬を赤らめ、どこか恥ずかしげな様子だった。その姿は可愛らしく、とても色っぽく見えた。

「京ちゃん、私、ちょっとスーパーに行ってくるね……、最近レナちゃんがご飯作ってくれないから……」

「お、おう」

七海は財布を持って出掛けていった。
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