転生転移を司る女神は転生する

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正負の因果

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転生・転移、主にこの二つを担う女神は腐敗した天界で業務をしていた。

「老衰94歳、ミナミヤマサカロウさん。貴方は転生します。欲しい力を下記の書類から選んでください」

「て、転生?」

戸惑うミナミヤマサカロウと呼ばれた老人。
手に持った紙を必死に探る。

「貴方は転生先の世界で勇者として人生をやり直すことになります。記憶は持ち込みですが、一の器に千の知識を入れても意味がないので段々と思い出すことになるでしょう」

「よくわからんが孫がハマってたアニメ?とかのやつか」

「そうですね。宗教や科学の観点から見ても異質であると思います。ですが、その視点以外で見れば当然の摂理なのですよ」

数分読んだあとにコレが良いと指を刺すミナミヤマサカロウ。

「いいですね、貴方の生い立ちらしくて」

「不安ばかりなんじゃが」

「大丈夫ですよ。貴方は普通の人よりもスペックが高いので困ることはないと思います」

女神は箱から金色に輝く短剣を取り出した。

「あとはコレを貴方に突き立てれば転生が可能です」

「不思議なんじゃが、短剣を刺されると言うのに暖かささえ感じてしまう自分がおる」

「えぇ、痛みはありません。では勇者様、世界を救ってください」

女神がミナミヤマサカロウの胸に短剣を突き立てる。
瞬く間に粒子へと変換され転生者の門へと吸い込まれていった。

「これであと千年は私の仕事は無しですか。寂しくなりますね」

アンドロメダを思わせる美しき星空のドームから出た女神は真っ先に純白の部屋へと入る。

「天界はもうダメですね、昨日だけで6人も殺されました」

天界では争いが発生し、多くの転生・転移業務を担う女神や、スキルを創る神、武器を作る神が亡くなった。

その皺寄せは女神に伸し掛かった。
幸いなのは、争いが始まる少し前から業務必要数が減った事だ。

「調和するための排斥ですね、私たちが要らなくなったと」

転生元ととなる人材の多くはA-96という世界から引っ張っている。
この世界では創作活動も多く、転生や転移に否定的な人類が少ない。

だが、A-96は戦争を開始したせいで転生や転移の対象から外れることになった。
ここ100年内に60万人を排出した世界からの供給が止まれば、細々としか入らなくなる。

コンコンと部屋のノック音が鳴る。

「リーヴェですね、入りなさい」

「あのお姉様」

リーヴェと呼ばれた少女はあどけなさを残す天使。
彼女らは世界に出張して転生・転移の適合者を天界に連れてくる業務だ。

「わたしもついに輪廻の双剣を貰いました!」

先ほど使っていた剣と同じ物、それからもう片方は銀色の装飾がなされている。

「これで貴女も女神ですか。早いものですね」

「うん!!」

ウキウキと双剣を掲げるリーヴェ。

「ふふ私も最初はそうでしたよ」

何気ない会話を交わしている二人だったが、突然女神は立ちあがった。

「ふぅ、これですべてやることは伝えましたね」

「そんなぁまだ話したりません!」

「実はこの二百年間で決めていたことがありました、次の女神が決まった時」

女神は自身の持つ銀色に輝く剣を胸に突き立てた。

「な、なにを」

「私は腐敗した天界にあるすべての責を負いこの場を去り、後継者には苦労をさせないと」

「だからなんで、意味わかんないですよ」

絶望の顔を向けるリーヴェに笑顔を見せる女神。
頭をなでてこう告げた。

「銀の短剣の効果は知っていますよね?」

「知っていますよ!ここ2000年一度も使われたことのない、罪負の剣です!」

「この先、数百年は天界に安寧が訪れます。私が残り全てを背負い腐敗した天界をゼロに戻すので」

「お姉様のいない私にはむりですよ!!」

「あなたならできます、他の天使からの待望も厚いですし」

もう既に足が粒子化し始めた女神

「でも!今まで真剣に取り組んできたお姉さまがすべてを背負うなんて私許せません!!」

銀の短剣を胸に突き立てようとするリーヴェに金の短剣を投げ飛ばした。

「はぅ!」

リーヴェの手から銀の短剣が飛ぶ。

「この腐った天界の現状を見過ごしてきた、仕事に勤しむことで隠していただけです」

「でもぉ!!!誰か!誰かお姉さまを救ってください!!!」

叫び声がこだまする。
その声に反応した女神の投げた剣が浮かび上がる。

叫びすぎて疲れたのかリーヴェは意識を失った。

「だめです!まさか短剣に意志があるなんて!」

金の短剣が女神の胸に突き刺さる。

『正負の因果』

転生の門に吸い込まれていく女神。
誰かがボソッとつぶやいた正負の因果という言葉だけが延々とこだましていた






-??年後-

「メェルアー!最後の礼拝時間だよ」

庭先で花を眺めていた少女は、元気そうな少年に呼ばれた。

メェルアー・オレンズ(12)
礼拝所の前に捨てられていた孤児。
水色髪に紅色の瞳、平均的な身長に整った容姿。
礼拝所の食事のせいかやや痩せ気味ではあるが健康的である。
それから女神の生まれ変わりである。


「まったくオゥレは、いっつもぽーっとして」

「それはメェルアーのほうだろ!!!」

オゥレ・オレンズ(12)
戦争孤児
オレンジ髪に青色の瞳、身長は若干低いが年相応な見た目。


「まぁ二人とも時間遅れているわよ」

出迎えてくれたのはシスター・マナリス。
名家の出でありながら身寄りのない子供のために一生を捧げると誓った心優しき人間。

椅子に腰かけ、周りの子供たちと同じように手を合わせる二人。

『天界に住まわれる女神様、我ら善なる民に祝福を、天界に住まわれる女神様、我ら善なる子に祝福を。辛さも喜びもすべてを女神のもとに分かちあいます』

声を合わせて何度も祈る。

「はーい皆さん、今日は七歳になる子供たちが学校に入学する日となりました!」

祈りを終わるとシスター・マナリスが手を合わせ微笑みながらお知らせを告げる。

「オゥレ君は庁立騎士学校へ、メェルアーちゃんは国立魔術学校へ入学します!この礼拝所を建ててから5人目の卒業生となりました」

「オゥレにぃちゃんおわかれなのー?」「メェルアーほんかえしてからいってね」

前々から支度していた荷物を荷馬車に詰めるメェルアー。
荷物といっても服しかない。

「わたしは遠いからもういくわね」

みんなに見送られながらメェルアーは出立した。
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