転生転移を司る女神は転生する

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新世代

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この週はこの国にとって、世界にとっての重大ニュースいくつも発表された。

"副属性に区分される二属性の適性は、魔王と勇者それぞれどちらに近いかを表す"

"魔王滅亡後、新魔王正帝式完"

"国立魔術学校生徒内、勇者代替見つかる"

"王宮関係者語る。勇者の実情"

市政に出回る情報はこの程度であったが、コレが波乱を巻き起こした。

「勇者を一目見ようって学校の外が騒がしいってことね」

「うん、まったくめいわくなえいゆーもいたものだ」

少し誇らしげなメェルアーにアーフェリアはお前が言うなと言う顔をする。

色々あった数日前が嘘のように明るい教室。
担任はここ数十年の記憶を失っていた為、故郷へ送還。
モーヤン家は直接的関係が見つかった為、除名及び処刑。

新しい先生として寮長が担任になったクラスは一段と騒がしい。

「お前達、今日は待ちに待った実技の時間だ。各自着替えて中庭に集合」

「メェルアーどうされますの?」

「どうって、ゆうしゃ?」

「えぇ、最初は型ですが練習内容が進めば実践に入りますわ」

「うちのクラスにそんなつっかかるやからはそんざいしない」

「幸いなのは血気盛んな男子と別ということですわね」

運動着に着替えて外へ出た二人。

「君たちを担当するムリアスだ。気軽にムリアス先生と呼んでくれ」

男子と女子で教官が違う。
どちらかを担任が受け持ち、もう片方も専門の先生が携わるはず。

黄色い声をあげる女子達とは裏腹に嫌そうな顔をするメェルアー。

「僕は確かにオロー大国の人間だが、教えるのはオルスト式だ」

オルスト式とオロー式では初手の構えから違う。

盾を使う前提のオロー式では片手剣メインに、小回りの効いた立ち回りとガード前提の捨て身な技。

オルスト式は両手持ちの構えや片手持ちの構えが混雑し、ガードではなくパリングメインとなっている。

「まずは基礎の型から。四日間で百通り叩き込んだ後、軽い弾き合い。私への打ち込み、最後は生徒同士だ」

列に並び声掛けをしながら型を練習していく。
型は基本系守りから始まる。

初日守り。二日目に流し、三日目攻撃、四日目に複合とのこと。

「メェルアー軸がズレてますわ」

「けんにがて」

ムリアス同様に注目を集めるメェルアー。

前回の一件は一部を除き全ての情報を開示している。

学内や関係者の皆に名前が広まっているが、外に出ても問題はない。

一週間後に国王より正式発表が決まっているからだ。

「あれが勇者ですって、笑えますわ」

「剣を振るうというより剣に振られてますね」

ヒソヒソと話し声が聞こえる。

「だいじょうぶアーフェ。型は丸暗記してきたから」

「そう、ならいいのですが。寮に帰ってからもお勉強ですわね」

「うぐっ」

「君達。喋るためにここに居るのかい?多少の私語は許すが、出来ない人間に教えるでもなく笑うことは騎士道に反するぞ」

ムリアスの言葉には従順なようだ。

「10、11、12!もうだめ、たいりょくつきた」

「だいぶ様になりましたわね。休憩時間に少し食い込んでしまいましたが」

「たいじゅつまでならうとわたしのからだは持たない」

「メェルアーちゃんなら大丈夫だよ。はいお水」

アラミシアが水入りのコップをメェルアーに渡してきた。

「かんしゃ」

「あなたは確かカナール家の」

アーフェリアがアラミシアに気付き声を掛けた。

「アラミシアとお呼びください、アーフェリアさん」

少し距離を感じる応答に気不味い顔を浮かべるアーフェリア。

「えっと、ふたりともなかわるい?」

「初対面ですよ、わたしなんか公爵様はおろか伯爵様すらおめにかかれません」

「えぇアラミシアさんよろしくお願いしますわ」

「あらためてしょうかいする。私の友達1号のアーフェと3号のアラミシア」

「今したばかりですわ?!」

「あらためてよろしくね」

「そうだアラミシア、ついに原本をしいれた」

「えっ!私自由行動の日に都内全域を捜したけど見つからなかったよ」

「ふふふ、くろいるーとさ」

「ワークメリー商会にあやまりなさい。正規ルートですわ」

「ワークメリー商会の露店ですか、さすがに一人で入るのは恥ずかしかったのでいってなかったです」

「こんどいく?」

「えぇ行きましょう!アーフェリアさんはどうされますか?」

「私はいいですわ」

若干のモヤモヤを抱えたまま休憩時間は終わってしまった。

「君達もだいぶ見違えたね。もちろんお世辞なんて言わない、本心だとも」

ムリアスは歩きながらそれぞれに指摘を入れていく。

「オレンズ君はもし時間があるなら基礎体力からやるといい。剣の動きを見れば理解しているのは一目瞭然、しかし身体がそれについていっていない」

「こんなの解放したらよゆー」

「その解放をする為にもしっかりと鍛えておけ。一の器に千の物は入らない」

その言葉にメェルアーは言い覚えがあった。
一瞬、ほんの一瞬だがムリアスに仕掛けていてた。

「っと、まだ慣れてないのに先生を一本取るのは無理だぞ」

切先が喉元に止まる。
ムリアスの指がメェルアーの喉を押さえていなければズブリと入っていただろう。

「うむ、残念」

「あなた!なにしているのですか」

「気にすることはないミネーリ君。先生を出し抜こうと攻撃する生徒は年間山ほどいる」

「これはかるいすきんしっぷ。(なんでいまのことばにはんのうしたのかわからない…)」

表情を変えずにアーフェリアへ指導を行い、次の生徒のところへ行った。





ムリアスは国王に自らがメェルアーに指導したいと申し出た。

それは棄却されたが、一部変更され叶った。

それが剣術と体術それから魔術である。

「なにが一本取るのは無理だぞだ」

用が出来たと一時抜け出した廊下の壁に手を付き冷や汗を流す。

「あれは喉が破けても私を刺していた。向こうが自制しただけのこと、はっはは!面白いぞ、やはり王位争いなんて捨ててメェルアー・オレンズを手に入れるのが最高に楽しいのではないか?」

狂気とも言えるその笑いを見るものは居なかった。
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