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第十六話 激戦
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今日もいつも通りの朝が来た。いつも通りの身支度を済ませ、いつも通りの景色を見る。
しかし今日は緊張感がいつも通りではない。前回カイルが仲間になるかどうかの時も緊張はしていた。しかし今回の緊張は、今後への期待、そして強大な敵への恐怖だ。
今回は国が大ごとにするほどのモンスターを倒すための前哨戦だ。華々しく始めてやろうじゃないか。
階下に行くとカイルの声が聞こえた。
俺たちより早く起きていたようだ。テーブルに置いてあるのは軽めのスープだけ。この後の戦いに支障が出ないようにサンリも気を配ってくれているらしい。
熱々のスープを飲んで、準備万端と言ったところだ。全員士気が高い状態で、今直ぐにでも戦いに行けそうだ。
しかし先ず依頼を受けるために、全員で役所に向かう。3人を率いて役所に入る。少し場の雰囲気がピリッとする。
ついに来たか。そんな言葉が聞こえてくるようだ。
受付の人に紙をもらい、登記を済ませる。
「こちらが規定のクエストの場所です。」
そう言って渡された紙はここから少し遠い場所にある森の地図だった。どうやらクエストのモンスターはその森にいるらしい。
「・・・随分と辺鄙な場所だな。こんな場所だととても戦いにくいだろうし、簡単な戦いにはならなそうだぜ。」
リュータが口を開く。俺も同感だ。リュータのビックアックスほどの大きさの武器は気をつけないと自分の首を絞める結果になりかねない。
「私の魔法も使いにくそうだね~。今回は補助魔法だけを使うことにするよ!」
「俺のダガーが今回のメインになるのか?やってやろうじゃねえか。」
カイルも気合十分のようだ。
「早速向かうとしよう。歩けば1時間も掛からないはずだ。」
そうして城門をでて、森へと向かう。今日は一段と寒い日だ。モンスターの活動が盛んじゃないようで、雑魚モンスターには全く会わなかった。
歩いていくと森の入り口が見えてきた。まだ明るい時間帯のはずなのに森の中は夜中のように暗い。
地図通りに森を進むと少しひらけた広場のような場所があった。そしてそこには、俺らの身長の2倍ほどの体格を持つ熊のモンスターがいた。
「間違いなく奴だ。リュータ、サンリ、カイル、覚悟はいいな?」
「ああ。今の俺は今までの俺と違う。やってやるよ!」
「私もできるだけみんなの足を引っ張らないように頑張るよ~!」
「俺がやつを仕留めてやるよ。任せとけ!」
「よし、じゃあ行くぞッ!」
まずはダッシュであいつとの距離を詰める。やつも俺たちのことに気づいたらしい。耳が割れるほどの大きさの雄叫びをあげて、俺に爪を振るおうとする。
ガキンッ!
そもそも俺はやつを切ろうと思って今回近づいたわけじゃない。俺は囮だ。
「サンリ、カイル、行けッ!!」
「行くよ~!おりゃ!」
モンスターの動きが鈍り始める。サンリが麻痺の魔法をかけたのだ。そして、
「食らえッ!!!!」
カイルが毒のダガーでモンスターを切り付ける。傷口をふと見ると、浅い傷なのにも関わらず大きく膿んでいる。即効性の毒だ。それはだんだんとやつの体を蝕んで行く。
それが答えたのか俺への攻撃をやめて、カイルへ爪を振るおうとする。しかし、背後を見せたその瞬間、リュータがビックアックスを振るう。
この場所が幸い開けた場所だったからこれができた。もし木々が邪魔になるのだったら、リュータのビックアックスで伐るのも考えていたが、、良かった。
基本はこの動きを繰り返して、やつを仕留めるつもりだ。だから俺はもういちど斬りかかろうとした。
しかし、そこがプランと違った。モンスターは爪で攻撃すると、手痛い反撃を受けることを学んでいたのだ。
俺は斬りかかろうとしたが、モンスターは一向に爪を振るおうとしない。おかしいな、とも思ったが、このまま切ってダメージを与えられれば御の字だ、そう思ってしまったのが運の尽きだ。
モンスターは右手を振り上げ、拳を突き出してきた。
「ッッ!!?!?」
俺は予想外の攻撃に対応出来ずに、重い一撃をもらってしまった。そしてその衝撃で吹っ飛ばされてしまう。
「まずい!?このままだと陣形が崩れて、、、!」
完璧だった均衡はいとも容易く崩れ、モンスターはさっきからずっと自分を痺れさせてきたサンリに攻撃の矛先を向けた。
俺が吹っ飛ばされて指示系統がいなくなったことで、カイルとリュータは戸惑っている。
カイルがサンリの方に向かうが、モンスターに追いつけるわけもなく、モンスターはサンリの前で立ち止まった。
強大なモンスターを目の前にして、サンリは何も出来なくなっていた。恐怖により、足が震えている。
俺が、俺がサンリを助けなきゃ、、、!
クソッ!!先程吹っ飛ばされた衝撃で体がいうことを聞かない・・・!!
早く、早く・・・!!!
「グオオォォオオォオ!!」
雄叫びをあげてモンスターはサンリに爪を振り下ろす。その爪はサンリの体を深く斬った。
「キャアアアァァァァアアァ!!!??!?」
サンリが悲痛な叫びをあげる。そこでサンリはぐったりと横たわってしまった。
「ッッ!!!!???!?!?」
クソ!クソ!クソクソクソ!!!!
なんで俺は何もしていない!?サンリが致命傷を受けたのは俺のせいだ!
「ぶっ殺してやる・・・!
卑劣なモンスターがあああぁぁぁ!!!」
怒りに体が包み込まれる。その感触とともに手元のソウルスレイヴに違和感を感じる。力が湧いてくる。
なんだこの感触は?いや、もうどうでも良い。
奴を殺すのだったら手段を選んでられない。
殺意が体から抑えられない中で、一つ、声が聞こえた。
「ドウキ!サンリはまだ死んでねえ!」
追いついたドウキが近くにモンスターがいるのにも関わらず、安否を確かめてくれたようだ。
!?
本当か・・・?本当ならば・・・!
「リュータ!カイル!お前らはサンリを守ってくれ!俺一人で奴を仕留める!!」
「お前・・・。分かった!サンリは任せろ!」
どうやらこの剣は怒りが増幅すると力が出てくるらしい。今までとは違う、確実な力を感じる。
この力を完璧に操ることができれば奴を倒せるかもしれない。
「グオオオオオオ!」
奴が迫ってくる。しかし恐怖の感情は全くない。
「来いッ!!」
モンスターは腕を思い切り振ろうとする。さっきと同じだったら俺はソウルスレイヴで受け止めていただろう。しかし、今なら!
俺は左腕に力を集中させる。そうすると、、、!腕が硬質化した!
ガキィィン!
高い音が響き渡る。
「!?」
モンスターは驚いている様子だ。
逆の手からの攻撃が来る。
いいぞ!もっとだ!もっと怒りを増幅させろ!!
「お前はサンリに致命傷を負わせた。だから。
お前が同じ状態になっても文句ねえよな!!」
より力が流れてくる感覚がある。
「はあああぁぁぁあ!」
キィィン!
右からの攻撃をソウルスレイヴで受け止める。
そして
「これでおわりだあぁぁぁあ!!!!」
そのまま受け流してモンスターを斜めに斬る。
「グア・・グ・・・。」
モンスターは呻き声をあげて、倒れた。すかさず首を掻っ切る。これで、仕留めた。
「勝った・・?勝ったのか・・・!?」
「うおおおおおお!!やったじゃねえか!ドウキ!!」
リュータが駆け寄ってくる。・・そうだ!サンリはどうなった!?
すぐ走ってサンリの元に向かう。そこには微笑むサンリの姿があった。
「ドウキ、やったな!サンリも無事だ!全部お前のお陰だよ!!」
カイルが祝福してくれる。しかし、あんな重症からどうやって・・・?
「ああ、それは。サンリが懐に回復薬を持っていたんだよ!全く。用意周到だよな。」
良かった・・・!流石のサンリだ。いくらサンリ製の回復薬だとしても完治はしなかったようだが、生きているだけで良かった!
俺たちは勝利の喜びを噛みしめながら、モンスターの頭を持ち帰った。証明は必要だからな。
それを役所に提出して、無事本命の敵の討伐許可が降りた。
サンリは最初こそ辛そうだったが、森を出るとスッキリした顔をして、元気に歩いて行った。
しかし今日は緊張感がいつも通りではない。前回カイルが仲間になるかどうかの時も緊張はしていた。しかし今回の緊張は、今後への期待、そして強大な敵への恐怖だ。
今回は国が大ごとにするほどのモンスターを倒すための前哨戦だ。華々しく始めてやろうじゃないか。
階下に行くとカイルの声が聞こえた。
俺たちより早く起きていたようだ。テーブルに置いてあるのは軽めのスープだけ。この後の戦いに支障が出ないようにサンリも気を配ってくれているらしい。
熱々のスープを飲んで、準備万端と言ったところだ。全員士気が高い状態で、今直ぐにでも戦いに行けそうだ。
しかし先ず依頼を受けるために、全員で役所に向かう。3人を率いて役所に入る。少し場の雰囲気がピリッとする。
ついに来たか。そんな言葉が聞こえてくるようだ。
受付の人に紙をもらい、登記を済ませる。
「こちらが規定のクエストの場所です。」
そう言って渡された紙はここから少し遠い場所にある森の地図だった。どうやらクエストのモンスターはその森にいるらしい。
「・・・随分と辺鄙な場所だな。こんな場所だととても戦いにくいだろうし、簡単な戦いにはならなそうだぜ。」
リュータが口を開く。俺も同感だ。リュータのビックアックスほどの大きさの武器は気をつけないと自分の首を絞める結果になりかねない。
「私の魔法も使いにくそうだね~。今回は補助魔法だけを使うことにするよ!」
「俺のダガーが今回のメインになるのか?やってやろうじゃねえか。」
カイルも気合十分のようだ。
「早速向かうとしよう。歩けば1時間も掛からないはずだ。」
そうして城門をでて、森へと向かう。今日は一段と寒い日だ。モンスターの活動が盛んじゃないようで、雑魚モンスターには全く会わなかった。
歩いていくと森の入り口が見えてきた。まだ明るい時間帯のはずなのに森の中は夜中のように暗い。
地図通りに森を進むと少しひらけた広場のような場所があった。そしてそこには、俺らの身長の2倍ほどの体格を持つ熊のモンスターがいた。
「間違いなく奴だ。リュータ、サンリ、カイル、覚悟はいいな?」
「ああ。今の俺は今までの俺と違う。やってやるよ!」
「私もできるだけみんなの足を引っ張らないように頑張るよ~!」
「俺がやつを仕留めてやるよ。任せとけ!」
「よし、じゃあ行くぞッ!」
まずはダッシュであいつとの距離を詰める。やつも俺たちのことに気づいたらしい。耳が割れるほどの大きさの雄叫びをあげて、俺に爪を振るおうとする。
ガキンッ!
そもそも俺はやつを切ろうと思って今回近づいたわけじゃない。俺は囮だ。
「サンリ、カイル、行けッ!!」
「行くよ~!おりゃ!」
モンスターの動きが鈍り始める。サンリが麻痺の魔法をかけたのだ。そして、
「食らえッ!!!!」
カイルが毒のダガーでモンスターを切り付ける。傷口をふと見ると、浅い傷なのにも関わらず大きく膿んでいる。即効性の毒だ。それはだんだんとやつの体を蝕んで行く。
それが答えたのか俺への攻撃をやめて、カイルへ爪を振るおうとする。しかし、背後を見せたその瞬間、リュータがビックアックスを振るう。
この場所が幸い開けた場所だったからこれができた。もし木々が邪魔になるのだったら、リュータのビックアックスで伐るのも考えていたが、、良かった。
基本はこの動きを繰り返して、やつを仕留めるつもりだ。だから俺はもういちど斬りかかろうとした。
しかし、そこがプランと違った。モンスターは爪で攻撃すると、手痛い反撃を受けることを学んでいたのだ。
俺は斬りかかろうとしたが、モンスターは一向に爪を振るおうとしない。おかしいな、とも思ったが、このまま切ってダメージを与えられれば御の字だ、そう思ってしまったのが運の尽きだ。
モンスターは右手を振り上げ、拳を突き出してきた。
「ッッ!!?!?」
俺は予想外の攻撃に対応出来ずに、重い一撃をもらってしまった。そしてその衝撃で吹っ飛ばされてしまう。
「まずい!?このままだと陣形が崩れて、、、!」
完璧だった均衡はいとも容易く崩れ、モンスターはさっきからずっと自分を痺れさせてきたサンリに攻撃の矛先を向けた。
俺が吹っ飛ばされて指示系統がいなくなったことで、カイルとリュータは戸惑っている。
カイルがサンリの方に向かうが、モンスターに追いつけるわけもなく、モンスターはサンリの前で立ち止まった。
強大なモンスターを目の前にして、サンリは何も出来なくなっていた。恐怖により、足が震えている。
俺が、俺がサンリを助けなきゃ、、、!
クソッ!!先程吹っ飛ばされた衝撃で体がいうことを聞かない・・・!!
早く、早く・・・!!!
「グオオォォオオォオ!!」
雄叫びをあげてモンスターはサンリに爪を振り下ろす。その爪はサンリの体を深く斬った。
「キャアアアァァァァアアァ!!!??!?」
サンリが悲痛な叫びをあげる。そこでサンリはぐったりと横たわってしまった。
「ッッ!!!!???!?!?」
クソ!クソ!クソクソクソ!!!!
なんで俺は何もしていない!?サンリが致命傷を受けたのは俺のせいだ!
「ぶっ殺してやる・・・!
卑劣なモンスターがあああぁぁぁ!!!」
怒りに体が包み込まれる。その感触とともに手元のソウルスレイヴに違和感を感じる。力が湧いてくる。
なんだこの感触は?いや、もうどうでも良い。
奴を殺すのだったら手段を選んでられない。
殺意が体から抑えられない中で、一つ、声が聞こえた。
「ドウキ!サンリはまだ死んでねえ!」
追いついたドウキが近くにモンスターがいるのにも関わらず、安否を確かめてくれたようだ。
!?
本当か・・・?本当ならば・・・!
「リュータ!カイル!お前らはサンリを守ってくれ!俺一人で奴を仕留める!!」
「お前・・・。分かった!サンリは任せろ!」
どうやらこの剣は怒りが増幅すると力が出てくるらしい。今までとは違う、確実な力を感じる。
この力を完璧に操ることができれば奴を倒せるかもしれない。
「グオオオオオオ!」
奴が迫ってくる。しかし恐怖の感情は全くない。
「来いッ!!」
モンスターは腕を思い切り振ろうとする。さっきと同じだったら俺はソウルスレイヴで受け止めていただろう。しかし、今なら!
俺は左腕に力を集中させる。そうすると、、、!腕が硬質化した!
ガキィィン!
高い音が響き渡る。
「!?」
モンスターは驚いている様子だ。
逆の手からの攻撃が来る。
いいぞ!もっとだ!もっと怒りを増幅させろ!!
「お前はサンリに致命傷を負わせた。だから。
お前が同じ状態になっても文句ねえよな!!」
より力が流れてくる感覚がある。
「はあああぁぁぁあ!」
キィィン!
右からの攻撃をソウルスレイヴで受け止める。
そして
「これでおわりだあぁぁぁあ!!!!」
そのまま受け流してモンスターを斜めに斬る。
「グア・・グ・・・。」
モンスターは呻き声をあげて、倒れた。すかさず首を掻っ切る。これで、仕留めた。
「勝った・・?勝ったのか・・・!?」
「うおおおおおお!!やったじゃねえか!ドウキ!!」
リュータが駆け寄ってくる。・・そうだ!サンリはどうなった!?
すぐ走ってサンリの元に向かう。そこには微笑むサンリの姿があった。
「ドウキ、やったな!サンリも無事だ!全部お前のお陰だよ!!」
カイルが祝福してくれる。しかし、あんな重症からどうやって・・・?
「ああ、それは。サンリが懐に回復薬を持っていたんだよ!全く。用意周到だよな。」
良かった・・・!流石のサンリだ。いくらサンリ製の回復薬だとしても完治はしなかったようだが、生きているだけで良かった!
俺たちは勝利の喜びを噛みしめながら、モンスターの頭を持ち帰った。証明は必要だからな。
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