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逃げた猛獣
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「で、光の柱はどこにあるんだ?」
そうと決まればさっさと行って冒険を終わらせたい。
「川を越えた山の先」
キョウイが指差した先は葉が生い茂る山だった。
「遠いな……車とかなんか乗り物ないんですか?」
向こうじゃ移動は車だった。山登りなんて学生時代以来だ。登り切れる自信がない。
「乗り物……? ねぇな。ドラドも逃げっちまったし」
キョウイはアゴに手を当てて考える。この世界に乗り物はないのか?
「ドラドって逃げた猛獣ですか?」
猛獣使いと聞いて僕の頭の中でライオンを想像していた。
「あぁ、かわいいかわいいドラゴンでな。移動するのに楽だったんだけどな。自分の足で移動するのは久しぶりだ」
キョウイは赤いドラゴンでなー、と話を続ける。僕はキョウイの話が入って来なかった。
「ドラゴンですか?!」
「ああ、なんだよ。そんなに驚いて。普通だろ、ドラゴンの一匹や二匹」
「ドラゴンの一匹や二匹って……」
いまさらだけど、こんな世界に丸腰で来て大丈夫なのか? 一気に不安が押し寄せてくる。
「逃げたってことは襲ってくるとかないですよね……」
確認するかのようにキョウイに尋ねれば、キョウイは黙りこんでしまった。
「わかんねぇ、光の柱に行ったドラゴンは数十匹どころか数百匹とも言われている。他のやつらは怖くて近寄らないらしい」
「それを早く言えよ!!」
そんな危険なところに行こうとしていた。殺されてもおかしくない。いや、とっくに死んでるんだけど。火に焼かれたり、鋭い爪で引き裂かれて即死できない死はまっぴらごめんだ。
「だから俺一人だと心細かったんだ」
ぽつり、とキョウイは言った。
「ごめん、さっきの前言撤回で」
巻き込まれる前に僕はキョウイから逃げようとした。だが、キョウイの方が素早い。僕の腰を軽々と腕で掴んで身体を持ち上げてしまった。
「男に二言はないよな」
念押しするキョウイ。締め付けてくる力はどんどん強くなってくる。僕はキョウイに小さくうなずくしかなかった。
そうと決まればさっさと行って冒険を終わらせたい。
「川を越えた山の先」
キョウイが指差した先は葉が生い茂る山だった。
「遠いな……車とかなんか乗り物ないんですか?」
向こうじゃ移動は車だった。山登りなんて学生時代以来だ。登り切れる自信がない。
「乗り物……? ねぇな。ドラドも逃げっちまったし」
キョウイはアゴに手を当てて考える。この世界に乗り物はないのか?
「ドラドって逃げた猛獣ですか?」
猛獣使いと聞いて僕の頭の中でライオンを想像していた。
「あぁ、かわいいかわいいドラゴンでな。移動するのに楽だったんだけどな。自分の足で移動するのは久しぶりだ」
キョウイは赤いドラゴンでなー、と話を続ける。僕はキョウイの話が入って来なかった。
「ドラゴンですか?!」
「ああ、なんだよ。そんなに驚いて。普通だろ、ドラゴンの一匹や二匹」
「ドラゴンの一匹や二匹って……」
いまさらだけど、こんな世界に丸腰で来て大丈夫なのか? 一気に不安が押し寄せてくる。
「逃げたってことは襲ってくるとかないですよね……」
確認するかのようにキョウイに尋ねれば、キョウイは黙りこんでしまった。
「わかんねぇ、光の柱に行ったドラゴンは数十匹どころか数百匹とも言われている。他のやつらは怖くて近寄らないらしい」
「それを早く言えよ!!」
そんな危険なところに行こうとしていた。殺されてもおかしくない。いや、とっくに死んでるんだけど。火に焼かれたり、鋭い爪で引き裂かれて即死できない死はまっぴらごめんだ。
「だから俺一人だと心細かったんだ」
ぽつり、とキョウイは言った。
「ごめん、さっきの前言撤回で」
巻き込まれる前に僕はキョウイから逃げようとした。だが、キョウイの方が素早い。僕の腰を軽々と腕で掴んで身体を持ち上げてしまった。
「男に二言はないよな」
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