異世界転生したらΩでした!

弓葉

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狛犬

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 死は近くにあるが、簡単に人間は死んだりしない。死にたいと思ったり、病気になったり、殺されたりしない限りは。

***
 
 僕は現実世界に戻るであろう道を歩いていた。独特な顔をした狛犬が僕を迎える。現実世界で見たことがない変な顔。僕がお辞儀をすれば、お堂が現れた。

――コーン……。

 お堂の中から音がする。僕はお堂に呼ばれていた。

「怖いけど、今さら引き返されないしな」

 キョウイとした約束を思い出して、僕はお堂に足を踏み入れた。中はいろんな絵画が埋め尽くされていた。ドラゴンに、オオカミに騎士や馬……異世界を描いているようだ。

 これが異世界転生小説なら、自分は事故死してファンタジーの世界に来たことになる。

 そこでは全く違う環境で最初から人生をやり直すことができるはずだった。それなのに、僕は現代に帰ろうとしている。

 お堂の下から、風が吹き込む音がした。僕は下を見ると、そこには地下室に繋がる扉がある。僕は扉を開けた。ハシゴが下に続いている。僕はおそるおそる中に入った。

 地下室は煙草の煙で充満していた。僕は敏感な鼻を手で摘まむ。床には煙草の吸い殻が散乱していた。
 
「なんでここに呼ばれたんだろう?」

 さっき聞こえた音は聞こえない。無音だった。

「ん?」

 何かを踏んだ。クシャリ、と音がして下を見る。『おかえり』と書いてある紙が地面にあった。

「ただいま」

 何も考えないで、僕が口にした瞬間、光に包まれる。僕が飛び降りた橋が見えてくる。獣人ともおさらばだ。
 
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