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最終話:海に咲く花*
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――果たして、今の僕は本当の僕だろうか?
そんな思いに囚われる時がある。日常に戻るとウイルスにはワクチンができて騒動は収まっていた。あんなに人生を思い詰めていたのが、遠い昔の過去のよう。
今では普通に外出もできるし、街には人があふれかえっている。
人混みの中で、柑橘系のような爽やかな匂いがした。カモミールティーにレモンを混ぜたような匂い。香水を振りまいたような強烈な匂いなのに、他の人たちは気にせずに歩いている。誰も匂いについて触れようとしなかった。
「ワダツミ?」
聞き覚えのある声と、言葉だった。
「……京井?」
振り返ると、そこには京井がいた。腰には日本刀を持って、ボロボロになった服を着ている。
「ワダツミだ……!」
僕と京井は道ばたで抱きついた。他の人たちの目線なんかどうでもいい。孤独だった世界に京井が来てくれた。それだけで僕は涙が止まらない。生きようとして屍になっていた僕に京井は生気を与えてくれた。
「なんで、なんでここにいんだよ……! 自分の世界に帰ったんじゃないのか?」
「わかんねぇ、起きたら浜辺に寝転がっていたんだ。そしたら、ワダツミが話していたものがいっぱいあっているかもしれないってずっと探していた」
「なんだよ、それ……」
はたから見れば、僕と京井はおかしなやつに見えるだろう。もしかしたら、京井は顔がいいからドラマの撮影かと思うかもしれない。
それでも、僕は京井と会えて嬉しかった。
ぐぎゅりゅーと、キョウイのお腹が鳴る。
「あ、悪ぃ……何にも食ってねぇんだ」
「僕の家においでよ、この世界の美味しいもの食べさせてやる」
「それは楽しみだ」
僕と京井は手を繋いだ。もう、この手を離したくなかった。
***
そして、困ったことが一つだけある。
「ん、あ……」
「かわいい、かわいいよ。ワダツミ……」
月に一度の発情期の能力を現世まで引き継いでしまった。しかも、その時だけ犬耳としっぽが生えた獣人になってしまう。
「あ、あのさ……気の迷いっていうか、あれなんだけど、本名で呼んでほしい」
「ナオキ」
京井は僕の本名を覚えてくれていた。一度は捨てた名前を呼ばれただけでイきそうになる。しっぽが無造作に揺れて僕の気持ちを表していた。
「んっ、ばか締めんな……」
京井は気持ち良さそうに唇を噛み締めている。京井が腰を振るスピードが速くなってきた。
「あっ、んっ……」
びゅるるっと僕は吐精した。京井も同じタイミングで吐精する。お腹も心も何もかも満たされた。
僕と京井は月に一度だけ、異世界の住人になる。でも、京井にとってこの世界は異世界だろう。見る物全てに感動していた。
今度、僕と京井は世界一周旅行を豪華客船で行く。あいつと夢見たことを京井と叶えようとしていた。僕の止まっていた時間が動きだしていた。
(おわり)
そんな思いに囚われる時がある。日常に戻るとウイルスにはワクチンができて騒動は収まっていた。あんなに人生を思い詰めていたのが、遠い昔の過去のよう。
今では普通に外出もできるし、街には人があふれかえっている。
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「ワダツミ?」
聞き覚えのある声と、言葉だった。
「……京井?」
振り返ると、そこには京井がいた。腰には日本刀を持って、ボロボロになった服を着ている。
「ワダツミだ……!」
僕と京井は道ばたで抱きついた。他の人たちの目線なんかどうでもいい。孤独だった世界に京井が来てくれた。それだけで僕は涙が止まらない。生きようとして屍になっていた僕に京井は生気を与えてくれた。
「なんで、なんでここにいんだよ……! 自分の世界に帰ったんじゃないのか?」
「わかんねぇ、起きたら浜辺に寝転がっていたんだ。そしたら、ワダツミが話していたものがいっぱいあっているかもしれないってずっと探していた」
「なんだよ、それ……」
はたから見れば、僕と京井はおかしなやつに見えるだろう。もしかしたら、京井は顔がいいからドラマの撮影かと思うかもしれない。
それでも、僕は京井と会えて嬉しかった。
ぐぎゅりゅーと、キョウイのお腹が鳴る。
「あ、悪ぃ……何にも食ってねぇんだ」
「僕の家においでよ、この世界の美味しいもの食べさせてやる」
「それは楽しみだ」
僕と京井は手を繋いだ。もう、この手を離したくなかった。
***
そして、困ったことが一つだけある。
「ん、あ……」
「かわいい、かわいいよ。ワダツミ……」
月に一度の発情期の能力を現世まで引き継いでしまった。しかも、その時だけ犬耳としっぽが生えた獣人になってしまう。
「あ、あのさ……気の迷いっていうか、あれなんだけど、本名で呼んでほしい」
「ナオキ」
京井は僕の本名を覚えてくれていた。一度は捨てた名前を呼ばれただけでイきそうになる。しっぽが無造作に揺れて僕の気持ちを表していた。
「んっ、ばか締めんな……」
京井は気持ち良さそうに唇を噛み締めている。京井が腰を振るスピードが速くなってきた。
「あっ、んっ……」
びゅるるっと僕は吐精した。京井も同じタイミングで吐精する。お腹も心も何もかも満たされた。
僕と京井は月に一度だけ、異世界の住人になる。でも、京井にとってこの世界は異世界だろう。見る物全てに感動していた。
今度、僕と京井は世界一周旅行を豪華客船で行く。あいつと夢見たことを京井と叶えようとしていた。僕の止まっていた時間が動きだしていた。
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